オレの過去~一心~
今回も前回と同様「疲れたなぁ~」と思ったら、すぐに辞めてください!!(長いので!!)
では、お楽しみください
「…、そういうことね」
瞬の中で起きた出来事を聞き終わったオレは、そう呟いた。瞬は言い終わってホッとしたのか、すぐに寝てしまった。安らかな顔で眠っている瞬の髪の毛を撫でた。すると、頬を緩めてほほ笑んだ。
「どうして真顔、なのか…聞きたい?っいいよ、聞かせてあげる。」
誰も答えやしないのに、聞いてくれるようだった。そんな空気にオレも安心したのか、ゆっくり話し始めた。
オレの過去を…――――
~五年前~
オレの普通の家族だった。父さんと母さんと兄さんと妹の五人家族で。とても幸せだった。
でも、そんな生活が一変したのはある日の些細なことだった。その理由は…、
『このオレ 黒井沢一心だ』
事件が起こったある日、その日はオレの誕生日ですごく楽しみにしていた。だって、いつも忙しくて会えない父さんが早く帰ってくるから。でも、その日父さんは会議があるらしくて早く帰ってこれなくなった。そんな父さんにオレはわがままを言ってしまった。
「早く帰って来てよっ!!ぼくの誕生日くらいっ!いいから、早く帰って来てねっ!!絶対だよっ!!」
普段はしない我が儘を。
それからオレは心を躍らせていた。ニコニコしながら父さんの帰りを待った。
だが、何時になっても父さんは帰ってこなかった。
そんな時、オレがため息をついたと同時に電話が鳴った。母さんは、受話器を取り耳に当て、数秒後 持っていた受話器を落とした。崩れ落ちた母さんの頬には、涙が流れていた。
「母さん…?」
そう言って手を伸ばした。でも、ふり払われてしまった。行き場所を失った手は、冷たい床に落ちた。
「・・・のせいよ」
「えっ…?」
「あんたのせいよっ!!あんたがわがままを言わなければっ!あの人はっ――――」
『死ななかったのよっ!!』
オレの方に振り向いたその顔には、さっきまではなかった”悲しみ”と”憎しみ”が表わされていた。
そんな顔を見たオレの背中に、冷たい何かが伝った。
”死んだ”?そんな馬鹿な…。そんなはず…。でも母さんは――――。
「死んだって、ウソでしょ…?」
「ウソなわけないでしょっ!!あんたが、あんたが殺したのよ!あたしの大切な人を!!」
オレが、”殺した”…?っ、そうか。オレがっ、オレがっ!!父さんを…。母さんの大切な人を…。
「ごめんなさいっ、ごめんなさっ…!」
「ごめんなさいで済むわけないでしょっ!!…そうだ、あんたが死んであの人を返してよ!!あんたなんて、死んでしまえっ!!」
キッチンに入ったと思ったら、母さんの手には包丁があった。包丁の刃先は誰でもない、オレに向けられていた。
「ごめんなさっ!なんでも、何でもするからっ!!ころ、殺さないでっ!!…いや、いやだっ。いやだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!!!!!!」
ビチャッ、
数秒後に聞こえたのは包丁が何かに刺さった音だった。いや、”何か”なんかじゃない。
オレの体に…、オレの肩に刺さったんだ。
目の前が赤く染まっていく。痛みなんて感じない。
一番初めに目に入ったのは、肩に刺さった包丁でもない。赤く染まっていく肩でもない。満面の笑みを浮かべる母さんの顔だった。
なんで、なんでそんな顔をするの…?ぼく、怪我してるのに…。なんで…?…まぁ、母さんの笑顔が見れたから…、いっか。
そんなこと思いながら、オレは瞼を閉じた。