□生物□
友人より頂いお題です。
ある日の午後のこと。
ソファに横たわってお昼寝をしているクロー様と、そのお腹の上で洟提灯を膨らませているアパを見ていたシーナお姉ちゃんが、ポツリと呟いた。
「……前々から思ってたんだけど。アパティオンって、一体何なのかしら?」
その呟きを聞いたノエルお姉ちゃんが、クロー様の寝顔を撮影していたビデオカメラを止めて、シーナお姉ちゃんの方を見る。
「何って、シーナ。アパちゃんは……何なのでしょう?」
シーナお姉ちゃんの疑問に答えようとしたノエルお姉ちゃんは、しかし一瞬考え込んだ後、首を傾げてそう言った。
ソファの近くに膝をつき、机にうつ伏せるようにして、クロー様の太股に顔を埋めていた私は、ゆっくりと顔を上げながらお姉ちゃん達に言う。
「……アパって、鳥じゃないの?」
「──いえ、違うわ、リオン。確かにアパちゃんには翼があるけど羽毛や嘴はないし、腕が付いているから」
「基本は陸上で生活しているから、魚類とか両生類とかじゃなさそうだし」
私の言葉をノエルお姉ちゃんが否定し、シーナお姉ちゃんもそれに追従するように呟いた。
ノエルお姉ちゃんが。寝ているクロー様とアパを起こさないように、アパの皮膚に触れながら言う。
「……本当に、アパちゃんって謎の生物ね」
「そうかな?」
「そうよ、リオン。何でも食べる雑食なのに、どこに口があるのか分からないし、物は持てるけど指はないし」
「皮膚も鋼みたいに硬いのに、同じサイズの動物と殆ど変わらないようだし、間接もないのにちゃんと動いているし……」
「「本当に謎(だわ)……」」
ノエルお姉ちゃんとシーナお姉ちゃんが、同時にそう呟く。
それを見た私は、寝ているアパの首の後ろを掴んで、ソファの近くにあったクッションの上に乗せると、お姉ちゃん達に言った。
「どうせなら、アパを起こして直接聞いてみたら?」
「……それもそうね」
私の言葉を聞いたノエルお姉ちゃんは、無駄の無い動きで卓上にあった箸立てから、キューブお兄ちゃんのお箸(近所の公園で拾った木の枝製)を一本取ると、躊躇せずにそれでアパの洟提灯を割った。
「──にゅぎゃっ!?」
突然そんな事をされたアパは、変な声を上げながら飛び起き、キョロキョロと辺りを見渡す。
お姉ちゃん達は、そんなアパの様子を見て、ニッコリと微笑みながら言った。
「おはよう、アパちゃん」
「突然だけど、アパティオン? アナタの種族が何なのか、教えてくれない?」
「は、はい!?」
唐突かつストレート過ぎるお姉ちゃん達の言葉に、アパは目を白黒させている。
しかし、数秒経ってようやく落ち着いてきたのか、未だに戸惑った様子を見せながらも、ワクワクとした表情のお姉ちゃん達に告げた。
「わ、私の種族は……」
「「私の種族は……?」
「ド、龍ですけど……」
「「………………………………は?」」
アパの言葉を聞いたお姉ちゃん達は、目を丸くして絶句する。
そしてそのまま、一秒……十秒……と時間が過ぎて行き、そして一分が経った頃、二人は何事も無かったかのように立ち上がり、シーナお姉ちゃんは夕食の準備をするためにキッチンに、ノエルお姉ちゃんはビデオカメラを再起動させ、クロー様の傍へ行った。
「え、あれ……放置?」
訳の分からない質問をされた挙句、何故か放り出されたアパが情けない声を出しているが、誰も気にしない。
私も再びクロー様の太股に顔を埋めて、ゴロゴロと喉を鳴らす。
今回の結論。
結局アパは、謎の生物だった。
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