第5話:理解者
「・・・・気持ちが悪いわよね?」
「いいえ、全く」
「え?」
イスハークさんの顔へ視線を向けると、その言葉が冗談ではなく真剣に言っているのだと、すぐに感じ取れた
「商人というものは、いろんな場所に行きます。長年、商人をしていると多種多様な方に出会うのです。私はローズ様のような方を何人も見てきました」
「私のような・・・」
「ええ。ローズ様のように体は男性だけれども、心が女性の方。逆に、体は女性だけれども、心が男性の方。心体どちらも男性だけれども男性が好きだという方、心体どちらも女性だけれども女性が好きだという方、多くの方に出会いました」
「私以外にも居たのね・・・」
「貴女が育った村でどのように扱われてきたのか、予想はつきますが、安心してください。貴女は一人ではないのです」
「・・・お父さんからは化け物と言われたわ」
「貴女は化け物ではありません」
「・・・お母さんからは悪魔と言われたわ」
「貴女は悪魔ではありません」
私の頬に涙が流れるのが感じ取れた。
私は一人ではない、その言葉で私は救われた
「しかしながら、世界中の人々が同じ考えをしているとは限りません。ローズ様はこれから多くの国や都市を見て回ることになると思います。残念なことに、その冒険の最中に出会う人全てに理解されることは難しいと思います」
「ええ、お父さんにも、お母さんにも理解されなかったのだから、それは覚悟の上よ」
「そうですか。どうやら、野暮なことを言ってしまったようだ。申し訳ございません」
「大丈夫よ。心配してくれたのでしょう?ありがとう」
「いえいえ。それはそうとローズ様、丸二日歩き通しだったのですよね?さぞお疲れでしょう。夕食の時間になりましたら、起こしますので、どうぞお休みください」
「そうね、本当に疲れたわ。お言葉に甘えて、少し休ませてもらうわ」
私は荷馬車の壁に背を預け、目を閉じた
「ローズ様、ローズ様起きてください」
「う、ん?」
「ローズ様、夕食の時間ですよ?」
「えっ!もう夜?ごめんなさい!爆睡しちゃったわ!!」
寝ぼけ眼を指で擦りながら、爆睡してしまったことを反省する
「大丈夫ですよ。ですが、だいぶお疲れが溜まっていた様子、起こすのを忍びなかったですよ」
「どのくらい眠ってしまったのかしら?外がもうこんなに暗く・・・」
「約5時間程度ですね」
「5時間も?だから、こんなに疲れが取れたのね!」
「さあ、"金剛の拳"の皆様が夕食の準備をしております。私たちも行きましょう」
良い香りが辺りにしており、それを嗅いだ瞬間、ぐぅとお腹が鳴ってしまった
「ええ。もうお腹ぺこぺこだわ」




