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【完結】魔法使いと隣のパン屋さん  作者: 禾乃衣


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第23話 小さな町の大掃除

「この匂いたまんないわね〜」

「ほんとほんと。 はやく食べたいなぁ」

 リディアとリオネルがダイニングテーブルでパンが焼けるのを今か今かと待っている。


 ミレナがパンをオーブンから取り出すとふわりと湯気が立ちのぼった。

「わぁぁっ!」

「やっとだ!」

 リディアとリオネルが声をそろえて身を乗り出す。

 お皿に取り分けられると早速いただく。

「熱いので気をつけてくださいね」

「「はーい」」

「ふわっふわ! おいしい〜」

「焼き立て最高〜」

 リディアとリオネルの美味しそうに食べる姿を見ていたコルヴァンが「俺も食べたいな」とミレナの方を向く。

 ミレナはにこりとして「はいどうぞ」とお皿にデニッシュをのせてコルヴァンに渡した。

 三人が美味しそうに食べてる姿を見て微笑むミレナ。

 こうして笑顔で始まる一日がなんだか特別に思える朝だった。


 数日後。 エルマンの本屋に行く日。

「昨日風すごかったですね」

「ああ。 屋根が飛んだとか大きな被害がなくてよかった」

 アルーゼアに向かう列車で話すミレナとコルヴァン。


 エルマンの本屋に着くと町の人が二人ほど来ていた。

「甚大な被害はないものの、木の葉や枝やゴミが飛んできてすごくてね」

「子供たちがいつも遊び場にしてる広場なんて酷いもんだよ」

「それで、掃除するのに人手が足りなくてね」


 エルマンがミレナとコルヴァンに気づいた。

「気づかなくてすまない」

「あの、その掃除」ミレナがコルヴァンの方を向くと彼はこくりと頷いた。

「私たちにも手伝わせてください」

「いいのかい?」と町人。

「リディア、リオネル、君たちも手伝ってきなさい」とエルマン。

 少々嫌な顔をするリディアとリオネルだが「ねぇ、魔法ですぐ終わらせましょ」「だね」こそこそと耳打ちした。


 広場に着くと酷い光景に驚く。

 歩く場所がないほど木の葉やゴミが散乱していた。

「リオネルいくわよ」「オッケーリディア」

「ちょっと待て」

 魔法を使おうとするリディアとリオネルを引き止めるコルヴァン。

「これはみんなで協力してやることだ」

「えー、でも魔法使えばすぐじゃない」

「そうですよー。 時間だって無駄にならないし」

「無駄じゃない。 いいからほら、やるんだ」

 コルヴァンに袋を渡されて「「はーい」」と渋々ゴミ拾いをすることに。

 そんなリディアとリオネルを見てふぅと息を吐くミレナ。


「リオネル、ちゃんと袋に入れなさい!」「わかってるって!」

「もう、リディアまで転んじゃって!」

 ミレナは笑いながら二人を手伝い、コルヴァンも静かに優しくサポートする。


 やがて広場が見違えるほどきれいになり「んー! 終わったー!」と大きく伸びをするリディア。

 とそこへ町の人が来た。

「お嬢さんたち、すまないねぇ。 お腹空いてないかい?」おばあさんが差し入れを持ってきてくれた。

「もうお腹ペコペコよー」と受け取ろうとするリディアに「リディア、まずはお礼でしょ」とリオネル。

 おばあさんはクスッと笑い「ほんとにありがとね」と言いその場を去ると次は子供たちが来た。

「お兄ちゃんとお姉ちゃん、本屋さんにいる人たちだよね。 あの、僕たちの遊び場きれいにしてくれてありがとう!」

 子供たちの真っ直ぐな瞳に胸打たれるリディアとリオネル。

「どういたしまして」とリオネルが照れながら言う。

「外で遊ぶのもいいけどたまには本を読みなさい。 そうだ、今度私が特別に絵本を読み聞かせてあげるわ」

 リディアが言うと子供たちの瞳はさらにきらきらした。

 その後も一緒に掃除をした町の人たちが「ありがとな!」「助かったよ」とリディアとリオネルに労いの言葉をかけた。

 その様子をそばで見ていたミレナとコルヴァンは顔を見合わせ微笑む。


 エルマンのところへ戻り椅子に座り一息つくと「あーあ、私ずっとこの町に住みたいなぁ」と呟くリディア。

「なにかいいことでもあったのかい?」

「別に」

 エルマンの問に少々照れてそっぽを向く。

「僕も帰りたくないよー」とリオネル。

「二人ともよくやってくれたみたいだね」とエルマンがミレナとコルヴァンの方を向くと「はい。 町の人たちが感謝してました」とミレナが言う。


 椅子に座って一息吐くリオネルはまだ掃除の疲れでぼーっとしている。

 リディアは「もう、リオネルったら!」と笑いながら肩を叩く。

 ミレナはクスッと笑いコルヴァンも小さく微笑む。

 窓の外で遊ぶ子供たちの笑い声を聞きながら今日の達成感に包まれ和やかに笑い合った。

 こうして小さな町にまた一つ、心温まる一日が積み重なっていった。

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