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生成AIが紡いだ小説 混ざり者レオの物語  作者: 月嶋 綺羅(つきしま きら)
第六章 新たなる人類の夜明け――境界に立つ者たち
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第三節 機械人の叫び 1

 翌日。研究所の出勤停止はまだ続いていたため、午前中はカミーユの足取りを探る作業に充てた。


 第七調整区画の統合隔離観察施設で職員名簿を入手し、関係者に話を聞く。施設から連れ出された人々の移送先として考えられる施設を洗い出し、そこから出てきたと語る元収容者の証言を集める。


 さらに、EMP放射の夜からカミーユの失踪が明らかになるまでの空白の時間帯について、何らかの情報を持つ者がいないか、第七調整区画周辺の住民への聞き込みを行う。


 こうした複数の調査項目を、ミナトやハク、そして協力を申し出た元収容者たちと連携しながら、今後手分けして進めていく予定だった。


 この日はそのうちのいくつかに着手したが、目立った手がかりは得られなかった。


 午後は、自分自身のための時間に充てた。


 レオは真凛から、父シリウスの若かりし頃の重要な記憶が州立図書館の地下深くに保管されていることを知らされた。


 その図書館は州内で最も古く、州都の中心に位置している。


 旧式記録装置は地下10階の閉架式データ保管室に収められており、そこは一般人の立ち入りが厳しく制限され、博物館や美術館の貴重品保管庫と同等の厳重な警備が施されていた。


 真凛の助言を受け、レオは図書館の責任者に面会を求めた。


 自らの素性を明かし、父の記録を閲覧したいと事情を説明すると、責任者は慎重な表情を浮かべながらも、シリウスの息子であることを確認し、特別に閲覧を許可した。


 しばらくすると、閲覧手続きを終えたレオのもとに、館内職員の制服を身に纏った超人類の男性が現れた。


 身のこなしは静かで洗練されており、目元には理知的な光が宿っていた。


 彼は一礼し、穏やかな口調で言った。


「ご案内いたします。地下保管室へは通常、職員の立ち合いが必要となりますので——このままお進みください」


 レオは無言で頷き、彼の後に続いた。ふたりは専用のアクセス通路を通り、警備ゲートや生体認証を通過しながら、静かに地下階を降りていく。


 エレベーターの内部には無音の気圧調整機構が作動し、階数が下がるにつれて温度も徐々に低下していった。


 やがて到着した地下10階の保管室は、冷たい空気と深い静寂に包まれていた。


 室内には無数のデータカプセルが整然と並び、ひとつひとつが時代の記憶を封じた遺物のように思えた。


 案内役の司書は、レオを閲覧スペースの傍まで導くと、操作卓の使い方を簡潔に説明し、敬意を込めたまなざしで告げた。


「ご必要であれば、私どもがサポートいたします。どうぞ、ごゆっくり」


 彼が静かに立ち去った後、レオは室内を見渡しながら、父の名が記された旧式記録装置を探し出した。


 それは厚みのある銀色の筐体に包まれており、いかにも前時代的な機構を備えていたが、不思議とその質感には温かみがあった。


 記録装置を慎重に抱え、閲覧ブースへと戻る。そこには一体型の再生端末が据えられており、アーム状の読取機が、装置の外装にあるインタフェースと接続される設計になっていた。


 レオは装置を所定の場所に置き、読取機のアームをゆっくりと動かして端末へとリンクさせた。


 静かな起動音と共に、ディスプレイが淡い青白い光を放ち、旧時代の操作画面が立ち上がる。


 画面の中には、複数の記録ファイルが古典的な階層構造で表示され、日付やファイル名が淡々と並んでいた。


 レオは指先で操作パネルをなぞりながら、目当てのファイルをひとつずつ確かめていく。


 「Sirius Z. Arc——Personal Memory Archive 2124.11.23」


 そのラベルが目に留まった瞬間、レオの胸はわずかに高鳴った。


 彼は一瞬、息を呑み、それから決意を込めた動作でファイルを選択した。


 画面に小さなウィンドウが浮かび上がり、「再生準備完了」の表示が現れる。


 周囲は相変わらず静寂に包まれており、遠く機械の駆動音だけが微かに響いていた。


 レオは手を膝の上に置き、深く息を吸い込んだ。そして再生ボタンをゆっくりと押した。


 映し出されたのは、父シリウスがかつて行った講演の映像だった。

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