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生成AIが紡いだ小説 混ざり者レオの物語  作者: 月嶋 綺羅(つきしま きら)
第六章 新たなる人類の夜明け――境界に立つ者たち
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第一節 浸食 2

 公式報道機関は、初動からある時期までは、あくまでこれを「誤情報」「悪意ある捏造」と断じ、専門家の証言やデータで否定しようと試みた。


 しかし、カミーユが流出させた内部情報以外にも、SNS上にアップロードされた動画のなかから、明らかに施設内部と思しき映像が出てきた。


 そこには、怯えた目をした少年少女たちとともに、識別タグを埋め込まれたその身体が映し出されていた。


 恐らく政府の政策に反発する施設関係者が、何らかの方法で撮影した、事実上の公益通報と思われた。


『ここに入ってから、ずっと番号で呼ばれていた。まるで家畜だよね……』


 少年の言葉が、映像で再生されるたびに、静かに人々の心に亀裂を走らせた。


 その情報の波は、次第に整然とした“操作された混乱”へと変わっていく。


 情報統制の裏で動いていたのは、統一政府監視センターの一部幹部たちだった。


 彼らは既に、この統治構造の維持が限界にあると悟っていた。


 民衆の信頼を失った政府は、もはやその統制力の正統性を保つことができない。


 だからこそ、彼らは選んだ。「制御された崩壊」――秩序だった混乱と再構築。すなわち、内部から制度を“壊す”ことにより、新たな統治モデルを創出しようという戦略だ。


 旧い秩序を焼き払い、あらたな「支配構造の芽」を植え込む。


 選別と抹消の実態すら、そのための火種とされた。


 カミーユ、そしてレオ、ミナトたちが行った決死の訴えは、統一政府の一部の政治家や官僚たちの手によって、意図的に開いた“裂け目”に変えられてしまったのだ。


 市民ネットワークによる告発と、各種国際組織からの非難声明が重なり、もはや隠すことも、否定することもできなくなった統一政府は判断を迫られ、混ざり者達の人類種登録義務付けを一時停止し、名目上凍結した。


 レオを含む、この登録義務付けが原因で隔離施設に囚われていた人々は、その動きの裏側で、極めて慎重に、速やかに解放されていた。


 だがそれは慈悲ではなかったし、正義の名に値する決断でもなかった。


 統一政府にとっては、国際世論の爆発に先んじて、存在を知られたことで問題の火種となる収容者らを解放し、施設でやっていたことを有耶無耶してしまおうという目論見と、失われ続ける信用毀損を一刻も早く食い止めるという二点が狙いだった。


 更に、統一政府の一部の政治家や官僚たちは、社会の裂け目を拡大させる情報の核として、或いは象徴として、利用価値を見出し、彼らをその道具として利用するために外へ放った。


 しかし、世界中に存在する、まだ名の知られていない隔離施設への収容者らは解放されなかったし、統一政府の一部派閥が昔から行っている、自身が掌握する政府機関を通じた選別と処分は秘密裡に継続され続けた。


 つまり、解放された人々は、被害者のごく一部に過ぎなかった上、今なお、被害者と犠牲者を出し続けていたのだ。


 隔離施設を出たレオは、自分の内側で静かに膨れ上がる“何か”と対峙していた。


 それは、怒りだったのか。悲しみだったのか。それとも、まだ言葉にはならない、もっと深い何か。


 その正体を掴めぬまま、彼はただ、その胸の奥に湧き上がる熱を、逃げずに見つめ返していた。

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