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生成AIが紡いだ小説 混ざり者レオの物語  作者: 月嶋 綺羅(つきしま きら)
第五章 選択と変化
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第八節 突然の失踪 2

 夜が明けた。


 だが、統合隔離観察施設〈第七調整区画〉に自由の光が届くことはない。


 EMPの余波によって監視網は沈黙したが、管理棟監視部による制御と統制は取れていて、外部との行き来に使う扉は、固く閉ざされたままだ。


 起床時刻になると、施設内に、有線アナウンスがあった。


『昨晩、機械トラブルが発生し、誤作動によってEMPが照射されました。その関係で施設内の電子機器が使用できなくなっております』


 レオは自分の予測が完全に当たっていたことを理解した。


 電子機器がダウンしていることを除けば、まるで何事もなかったかのように、その日も普段通りに朝食の時間を迎えた。


 意識を失ったのはまだ数時間前のことなので、レオは気になったのと、介助が必要ではないかと考えて、ミナトの部屋に寄ったが、不在だった。


 先に食堂に行ったのか向かうと、いつも使っている席に、ミナト、カミーユ、ハクの姿がなかった。


 行き違いになったかと思い、彼は再びミナトの部屋に向かった。すると途中の廊下でミナトとすれ違った。体調が優れないらしく、顔色が悪く、表情が浮かない。


「大丈夫か? 調子が悪いなら、俺が頼んで食事を部屋でとれるように談判してくるよ」


 レオが声をかけると、ミナトは「平気だから。心配かけてごめんなさい」と答えた。


「それより大変なの。カミーユがいない」


 ミナトが思い詰めた顔で言った。


「カミーユが?」


 レオはミナトに肩を貸し、カミーユの部屋に向かった。


 部屋の中は、誰かが慌てて出て行ったような痕跡が、薄く床に残っていた。


 ベッドの上には乱れた掛け布団があり、ベッドの下を調べると、壊れた自作の簡易端末があった。


 そこにちょうどハクがやってきた。


「レオさんとミナトさん。見ての通りでカミーユがいないんです。思い当たるところを全て調べてきましたが、どこにも見当たらなくて」


 レオはミナトを食堂に連れて行って、先に食べていてくれと言った。ミナトは自分も手伝うと言ったが、レオは無理をさせたくないから思いとどまらせた。


 レオとハクは施設内で移動が許される場所全てに足を運んだ。カミーユはどこにもいなかった。


 食事中の収容者達に手当たり次第にカミーユのことを尋ねたが、今朝見かけたという人は誰一人としていなかった。


 レオとハクは仕方なくミナトが座る席に行き、そこで他の収容者からかなり遅れて朝食をとった。


「カミーユ……一体、どこに行っちまったんだ……」


 ハクは食事も喉を通らないようで、暗く顔で呟いた。


 レオもミナトも、最悪の事態も考えられた為、かける言葉が見つからなかった。


 食事を終えた後、レオとミナトはハクを部屋に送り届けてから、二人でカミーユの部屋に行った


 レオがカミーユ自家製の簡易端末を手に取った。


 EMP放射の影響で完全に壊れていて、電源自体が入らなかった。


 昨晩、カミーユと別れてから、今朝、失踪に気づくまでの間、監視カメラが壊れていた為、何が起きたのか確かめる術がなかった。


 施設を管理している統合監視センターや行政機関の仕業なら、堂々と連行するだろうかせ、目撃者がいてもおかしくないが、それすらいない。


 一体、誰が、何の目的で……。


「まさか、カミーユが、自分から……」


 ミナトの呟きに、レオは首を横に振った。


「その可能性は低いと思う。昨日、君が意識を失っていた時、カミーユも逃げ出さない方が得策だと言っていたから。それにカミーユは、こんな形でいきなり姿を消す奴じゃない」


 その言葉には、確信に近い感情が滲んでいた。


 レオは正面玄関に向かった。


 ミナトも後ろからついてきた。


 普段は決められた時間以外は部屋にいないといけなかったが、監視カメラと各種センサーが壊れて監視の目も緩くなっているせいで、かなり自由に動き回れた。


 レオは固く閉ざされた正面玄関を見つめた。正面玄関自体はガラスの自動扉だが、もう一枚、一枚板の鋼鉄製の鉄板が下りていて、蓋をする形になっている。


「レオ」


 ミナトが肩を並べた。


 彼女は分厚いジャケットの上に銀灰色のブランケットを纏い、唇にわずかな血の気を取り戻していた。


「何を考えてる?」


 レオは答えなかった。


 扉は固く閉ざされた扉を見ていると、心が塞ぎ込むような感覚にとらわれる。


「作戦は上手く行った。だから近いうち確実にここを出られる……それなのに、カミーユが……」


 レオが苦しげに言った。


「あなたの責任じゃない。あなたにも、私にも、どうすることもできなかった」


 ミナトが慰めるように言った。事実だった。囚われの身である以上、同じく囚われる身である仲間を守る術などない。


「カミーユが、俺達に与えてくれたんだ。この絶望の中で、ここから生きて出られるかもしれないという、たったひとつの希望を」


 ミナトは目を伏せた。少し間の後、決意したように、真正面を見据えた。


「私たちで、必ず、見つけ出そう。いいえ、絶対に、見つけ出そう。彼女は必ずどこかで生きている」

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