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生成AIが紡いだ小説 混ざり者レオの物語  作者: 月嶋 綺羅(つきしま きら)
第五章 選択と変化
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第五節 告発 3

 数日後。施設内での夜は、管理端末によって一斉に照明が落とされ、一定時間の活動が制限される〈活動停止時間帯〉を意味していた。


 廊下は昼と同じ明るさで照らされ、部屋の明度も完全には落とされず、天井に薄暗く青白い光が残されている。


 眠りを誘うものではなく、それは、常に誰かに“見られている”という無言の警告のように、じっとレオたちを照らしていた。静けさも相俟って、この上なく不気味だった。


 ベッドに横たわりながら、レオは目を閉じることができずにいた。


 壁の内側――そこには、ただの断熱材や配線ではない“何か”が潜んでいるような気がしてならなかった。


 空間そのものが意思を持って、彼の思考や感情を覗き込んでくるような――そんな異質な感覚が、夜ごと静かに忍び寄り、息苦しさとなって胸を満たしていた。


 そのとき、部屋の片隅で、微かな電子音が鳴った。


 警告音ではなく、誰かが送ってきた信号のようだった。


 レオは身を起こすと、ベッド下の床材に手をかけた。わずかに浮く感触。そっと外すと、床下には小さな装置が隠されていた。


 通信用の小型端末。施設内の監視網の死角を縫って設置されたそれは、明らかに“正式な装備”ではなかった。


 それを作ったのはレオ自身だった。


 そして装置に使われているパーツは、すべてカミーユの手によって密かに集められたものだった。


『この部屋、通風口が甘い(からそこに隠して)』


『必要なものは拾ってきた。タイミングを見て(組み立てて)』


 それだけの言葉と、数秒の視線の交差。レオにはそれで充分だった。


 パーツの受け渡しは、ほんの一瞬のすれ違いの中で。監視の死角を読み、限られた空間の構造を利用して、レオは自らの手でこの装置を組み上げた。


 器用な指先と簡素な電子知識のあるレオには楽な仕事だった。


 回線には、かつて使用されていたという施設内の非公式回線を、カミーユが掘り起こしたものを用いていた。だから施設側に気付かれる恐れはない。


 レオは端末に手を伸ばす。画面には、短いメッセージがあった。


『今晩、午前一時。管理棟地下、アーカイブ室。すべてを見せる』


――C.V.


 C.V.――カミーユ・ヴァレス。カミーユが、何かを掴んだらしい。


 レオは端末の画面を指でなぞった。メッセージには、短い追記があった。


『施設の監視体制は見せかけにすぎない。センサーとドローンは半分以上が停止中。動作ログも途切れている。――張りぼて』


 それだけだった。だが、そこに添えられていた施設内の図面データと、いくつかの“監視カメラとセンサーを掻い潜って通行可能な時間帯”のメモが、ただの憶測ではなく、綿密な観察と検証の末に得られた知見であることを示していた。


 レオは迷いなく、端末を閉じた。

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