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生成AIが紡いだ小説 混ざり者レオの物語  作者: 月嶋 綺羅(つきしま きら)
第四章:交錯する運命
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第八節 影の渦動 2

「では——」


 部長は気持ちを切り替えて、さらに問いを重ねる。


「情報爆発を引き起こしたシステム不安定の原因は解明されたか?」


「いえ……まだでございます。こちらも犯人の正体、意図、関与している個人・団体等は全く掴めておりません。対象がAIである可能性も、そうでない可能性も否定できず、未だ判断の域に達しておりません」


「……ならば、当部が受けた被害の状況は?」


「当部関連の機密ファイルのうち、ごく一部に漏洩の形跡がありました。“特務計画部”の名称が記された内部戦略資料が外部ネットワークに接続された痕跡が認められておりますが、現時点で戦略遂行や作戦継続に影響を与えるレベルの損失は確認されておりません。全作戦、進行可能と判断されます」


 報告を終え、担当官は再び着席した。部長の視線が、今度は別の方向へ向けられる。


「ノイズブレイクの進捗状況は?」


 立ち上がったのは、戦略心理操作を担う担当官。声は冷静で、淡々としていた。


 「計画は概ね予定通りに推移しております。マスメディア、SNS、及び地下ネットワークを通じて、“統一政府への不信”と“人類種間の対立意識”は全体的に拡大しています。特定の種間に偏ることなく、現生人類、超人類、トランス・ウルトラ・ヒューマン、機械人類それぞれに対する不信と警戒が同時多発的に発生しており、社会全体が緊張の臨界点へと向かいつつあります。また、我が部がこの一連のノイズブレイクを意図的に誘発した件については、現段階でいかなる監察機関、情報局、あるいは個人にも察知された形跡はございません」


 部長は軽く頷いた。そして、次の言葉を口にする。


「——シリウスαの方はどうなっている」


 沈黙が落ちた。報告担当の幹部が、わずかに躊躇しながらも言った。


「……芳しくありません。期待された通りの行動を示しておりません。未だ完全な制御、あるいは誘導が困難な状態です」


 その言葉に、部長は深く低く唸った。


 重圧のような沈黙のあと、決断の声が空間を切り裂いた。


「——ならば、第二の計画に変更するしかあるまい」


 その一言が波紋のように幹部たちの脳内を駆け巡る。


 部長の眼が次に射抜いたのは、議会対策を担う者だった。


「議会対策はどうなっている? 省庁対策は?」


 議会担当官が立ち上がり、複数の議員名をスクリーンに映し出した。


「第二計画の推進に対して、これら数名の議員が強硬な反対姿勢を取っております。特にアラタ議員とユラ議員は、特務計画部の存在そのものに疑念を抱いているようです」


 続いて、省庁対策担当官が報告に移る。


「行政側でも、一部の上級官僚が特務計画部の動きを問題視しており、情報統制の強化を求める声が上がっています。アカツキ局長補佐、及びハンザワ管理監は特に我々の方針に反対的です」


 その報告を聞き、部長は再び口を開いた。


 声には鋼のような決意が滲んでいた。


「——賄賂でもハニートラップでも、あるいは弱みを握って脅していうことを聞かせるでもよい。手段は問わん。とにかく、第二の計画を実行できる状況を整えろ」


 その命令を最後に、会議空間の照明が一段階暗転し、議事の終了を告げた。


 幹部たちは、無言のまま席を立ち、それぞれの持ち場へと散っていく。


 闇の中、未来を決定する“第二の計画”が、静かに動き出していた——。

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