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生成AIが紡いだ小説 混ざり者レオの物語  作者: 月嶋 綺羅(つきしま きら)
第二章 呼び声
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第四節 沈黙の言語 7

 しばらくの沈黙のあと、レオはふと思い出したように口を開いた。


「……未明の、《エリュシオン・ノード》から届いた例の動画のことなんだが」


 ミナトはナイフとフォークの手を止め、レオに目を向けた。


「何か気づいたこととかあるの?」


 レオは一度だけ頷くと、低く静かな声で続けた。


「あれ、誰かが“送った”って感じがしなかった。むしろ、あらかじめそこに“潜んでいたもの”が、ある瞬間を境に突然、姿を現した……そんな印象を受けたんだ」


 ミナトの瞳がわずかに細められた。


「どういう意味?」


「言葉にしづらいんだけど……形式としては確かにデータだった。でも、内容には意味がなかった。“解析不能”って言ってもいい。文脈も、意図も、論理性も、どれも成立してない。ただ、あの微生物の光のパターン……あれだけが、不気味なくらいに規則的だった」


「それが言語のように見えた、と」


「そう。“生物反応”とは思えなかった。まるで、何かがそこに“宿ってる”みたいで」


 言葉にするたび、レオの中で漠然としていた直感が、ゆっくりと形を帯びていった。


「……そして、ひとつ気づいたことがあるんだ」


「何?」とミナトは自然に促した。


「今日の事情聴取でね。例の不正アクセスの件についてはかなりしつこく尋ねられた。でも、この《エリュシオン・ノード》の件については、一言も触れてこなかった。……不自然じゃない?」


 ミナトは黙ったまま、手元のフォークをテーブルに置いた。


「確かに、あの動画は、私たちの記録にも公式な連絡にも残っていない。政府の端末に記録されていない通信が、“偶然”届くはずがないもの」


「だろ?」


 レオは声を潜めたまま続けた。


「あれは偶発的な“ノイズ”じゃない。意図がある……いや、意志と呼ぶべきかもしれない。誰か――いや、“何か”が、あれを通して、僕にだけ何かを伝えようとしていた。言語じゃない。でも、“伝達”の意志は、確かに感じたんだ」


 その声には、はっきりとした実感が宿っていた。


「それってつまり……ミューズが?」


 ミナトの声には、わずかに困惑が混じっていたが、完全に否定する色はなかった。


 レオは頷いた。


「僕にはそう思えた。あれは、ミューズ自身が送ってきた“何か”なんじゃないかって」


 沈黙のなか、ミナトは一瞬だけ視線を落とし、冷えたカップの縁に触れた。


「ミューズには自我があるし、自律的に動けるから、可能性はないとは言えないけど……」


 彼女の声は静かだったが、その声音には、理論を語るとき特有の慎重さと、言葉の奥に潜む淡い懸念が滲んでいた。


 レオはその言葉を噛みしめるように黙っていたが、やがて、ぽつりと呟いた。


「一体、何が起きてるんだろう……」

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