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生成AIが紡いだ小説 混ざり者レオの物語  作者: 月嶋 綺羅(つきしま きら)
第九章 協定
221/223

―円卓会議と人道に対する罪の糾弾― 7

10分後(2025年9月9日20時10分に『ep.222 種を超えた意志の契約』をアップロードします。

 会議の幕が下りたあと、空には深い赤が滲み始めていた。空を切り裂くように伸びた高層都市の輪郭を、夕陽が静かに焼いていく。


 レオ、カミーユ、そしてミナトの三人は、高層区画の最上層にある展望デッキに立っていた。そこは都市の全景を見渡せる数少ない開かれた空間だった。


 足元を吹き抜ける風が、レオのコートの裾をわずかに揺らす。彼の瞳は“混ざり者たち”が生きている旧市街の方角を捉えていた。


 夕陽はまるで遠い記憶のように静かに地平線へと沈みゆき、巨大な灰色の建造物たちは、縁だけを淡い金色に染め上げていた。


 窓という窓に反射する光が、どこか儚くも温かく、都市という無機的な存在に一瞬だけ血の通った輪郭を与えているかのようだった。


 ミナトは、そっとレオの隣に立ち、同じ景色を見つめていた。風に髪が舞い、それはまるで、未来へと解き放たれる祈りの糸のようだった。


「……レオ、私たち、本当に変えられるのかな。この世界を」


 その声には、微かな揺らぎがあった。期待と不安が入り混じった、人間らしい疑念。しかし、そこにこそ確かな意思があった。


 レオは答えず、少しだけ目を閉じてから視線を上げ、オレンジ色の空を見据えた。


「変わる……変えないと」


 そのときだった。


 背後から足音が響く。振り返ると、静かに境界人たちが集まり始めていた。


 一時期、隔離施設で名前を奪われ、“管理番号”で呼ばれていた彼らが、顔に光を宿してそこに立っていた。


 誰もがまだぎこちない。


 けれど、その瞳には確かに、“人間”としての意志が宿っていた。


 ミナトは彼らの姿を見て、口元に微かな笑みを浮かべた。そして、レオに向き直る。


「名前がその人を定義する未来……きっと来るよね」


 レオは、彼女の言葉に、静かに頷いた。そして、少し笑みを浮かべて言う。


「来るんじゃない。……俺たちの手で、迎えに行くんだ」


 その言葉を聞いて、ミナトは一瞬目を見開き、それからゆっくりとその場に頷いた。


 カミーユがそっと歩み寄り、二人の横に並ぶ。


 彼女の瞳は、かつてサイバー空間に幽閉されていたとは思えないほどに澄み渡っていた。


 彼女もまた、この時を待ち望んでいたのだ。


 再び、レオが一歩を踏み出す。誰よりも静かに、だが確かな意思と覚悟を持って。


 ミナトが続き、カミーユもその後に続く。そして、境界人たちが彼らの背に寄り添うように歩き出す。それはまるで、一人一人が断絶された過去から抜け出し、新たな物語へと歩を進める行進のようだった。


 この時、誰もが“混ざり者”ではなかった。一人の人間として、それぞれの物語を再び紡ぎ始めたのだ。種別で人類を分断する時代は終わったのだ。


 レオの瞳は、遠い未来を見据えていた。


 過去の断絶ではなく、未来の架け橋として――新たな時代の名のもとに、生きる者たちの再構成が、いま、確かに始まったのである。

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