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生成AIが紡いだ小説 混ざり者レオの物語  作者: 月嶋 綺羅(つきしま きら)
第九章 協定
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―円卓会議と人道に対する罪の糾弾― 1

 天井一面を覆い尽くす光ファイバーの群れは、まるで宇宙の星辰をそのまま写し取ったかのように煌めいていた。幾千もの微細な光は、それぞれ異なる軌道を描きながら静かに瞬き、ホール全体に柔らかな輝きを降り注いでいる。


 その模様は、かつて人類が観測した惑星軌道を再現した人工天体図であり、地下数百メートルに広がるこの空間に、“未来の天”という名の象徴を与えていた。


 ここは、ニュージュネーヴ──かつて中立記念都市として建造され、数度の政変と機構改革を経て、今では統一政府直属の議会棟として機能する、第一構造体の中心ホールである。


 天井の光の海に照らされながら、広大な円形ホールには、四種の人類の代表者たちが次々と現れ、静かに、そして慎重に着席していく。


 各陣営ごとに異なる様式で造られた椅子が、完璧な円を描くように配置されており、それぞれが均等な距離で中央の壇上を囲んでいた。


 現生人類──生身の肉体を保ち、最も古い形式で人間という概念を保ち続ける者たち。


 超人類──現生人類の各分野で天才と評される人々の能力を遺伝子操作によって獲得した知性体。


 トランス・ウルトラ・ヒューマン──超人類の肉体に機械を埋め込み、更に外部の機械と無線接続する事で身体の能力を拡張し、最大限まで引き出した存在。


 そして、機械人類──生身の人間の自我を人型アンドロイドに移殖した、有機体の枠組みから離れた半人工的な知性体。


 それぞれの代表者たちは、互いに目を合わせようとはせず、無言のまま静かに腰を下ろした。


 その様子は、まるで過去の対立と不信を未だに背負ったままであることを無言で物語っていた。


 円の中心には一段高く設けられた壇上があり、そこに現れたのは──レオとミナト、カミーユ、そして共にある“境界人”たちだった。


 レオ以外は招待されたわけではなかった。


 彼らの名は、公式の議事録にも記されていない。


 だが、誰よりもこの場所に立つ資格がある者たちだった。


 分類されることもなく、保護される制度も与えられず、認識すらされないまま、それでもなお、種を超えて生きてきた人間たち──現生人類と超人類、トランス・ウルトラ・ヒューマン、機械人類のどれにも完全には属さない、時に実験の副産物として、時に社会の裂け目から生まれた存在。


 レオがその代表であると同時に、彼らの声を代弁する唯一の者だった。


 壇上に立ったレオの隣には、様々な外見と背景を持つ境界人たちが控えていた。


 人間に見える者もいれば、半機械的な外装を持つ者もいた。


 その姿に向けられる各陣営からの視線は、明確に異なっていた。


 ある者は眉をひそめ、侮蔑と警戒の眼差しを隠さず、ある者はその存在に戸惑いを浮かべていた。


 ごく一部の者のみが、そこに何かを見出そうとするように、じっと見つめていた。


 それでも、レオは臆することなく、円卓の中央に進み出た。


 その足取りには揺るぎがなく、壇上の中央に立つと、円を描いて自分を取り囲む四種の代表者たちの視線を、一つひとつ正面から受け止めた。


 言葉を発する前の静寂が、異様なほど長く感じられた。


 空調の音すら聞こえない静けさの中で、彼の声が低く、しかし確かに響いた。


「俺たちは……ただ、生まれ、名を与えられただけだ」


 簡素で、どこまでも平易な言葉だった。


 装飾も理論もない、ただの事実。


 しかし、それは、各陣営の胸中に、痛烈な何かを突き刺す言葉だった。


 誰もが知っていた。


 だが誰も、口にすることを避けていた。


 人類を分類し、管理し、制度化することで秩序を保ってきたはずの世界。


 その裏で混ざり者と呼ばれ疎外されて生きてきた者たちの存在を、彼らは無視し続けてきた。


 レオの言葉は、その沈黙に穴を開けた。


 ホールの空気が、確かに変わった。


 張り詰めた緊張がわずかに軋み、代表者たちの表情にも、それぞれ異なる反応が現れ始めていた。


 始まりの鐘は、すでに鳴らされていた。


 ここから先は、誰もが予測できない道を歩むことになる。


 だが、その最初の一歩を踏み出したのは、名もなき者たちの代表──レオだった。

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