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生成AIが紡いだ小説 混ざり者レオの物語  作者: 月嶋 綺羅(つきしま きら)
第九章 協定
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再会と再構成 3

 レオは一歩前に出て、机の中央に設置されたホログラム・プロジェクターを起動した。


 そこには、分断された人類社会の系統図が映し出される。


「俺たちは、“四種の人類”に分けられた社会の境界に、ずっと押し込められてきた。でも、本当にそれが未来に必要な構造か?」


 ざわめきが広がる。しかし、誰一人として否定の声はあげなかった。


「今度の円卓会議で、俺は提案する。――『人類種の分類制度そのものの廃止』を」


 その言葉に、空気がわずかに震えた。


 レオの声音は静かだったが、その眼差しには一点の曇りもなかった。


「四つに分けて、線を引き、区別し、分類し続けてきた結果が、今の世界だ。進化や変異じゃない。“分断”と“優劣”だ。もう、終わらせるべきなんだよ、こんなものは」


 彼の言葉には、過去に見た隔離施設の記憶、奪われた名前、蔑まれた存在、そしてそのなかでも生き抜いてきたすべての者たちの重みが宿っていた。


 カミーユが言葉を繋ぐ。


「……私たちは、“異物”なんかじゃない」


 その声は、硬さを帯びながらも凛としていた。


「この身体、この記憶、この感情……それらすべてが私。名前と共に、生きている私」


「その通りだ」


 レオは力強く頷いた。


「だからこそ、“分類”じゃなく、“名乗る”ことに意味がある。“名前”がその人を定義し、“存在”を肯定する。制度がどうあれ、一人ひとりの名が、世界に居場所を与える。俺は、そういう社会を提案する」


 静まり返る室内。


 だがその静寂は、恐れから生まれたものではなかった。


 それは、理解と希望が入り混じった、再構築の前触れだった。


                *  *  *


 話し合いを終えて、元収容者らが積もる話に花を咲かせる会議室を出たレオは、廊下からガラス越しに広がる黄昏の都市を見下ろしていた。


 ビルの隙間から洩れる光は、灰色とオレンジが交差し、まるで旧世界と新世界の狭間に揺れる境界線のようだった。


 その傍らに、ミナトが音もなく歩み寄る。腕を組んだまま、しばらくレオと同じ光景を見つめていた。


「レオ……もしこの提案が却下されたら?」


「それでも俺は言うよ。分類じゃなく、人を名前で呼ぼうって。どれだけ制度が変わらなくても、俺たち一人ひとりがそう生きれば、やがて制度の方が変わる」


 ミナトは問いかけというより、独り言のように呟いた。


「やはり、AIノードから見込まれて、ノウス・コアから調停役に選ばれるだけのことはあるわね。私には考えつかない」


「あの隔離施設に入れられて、名前を奪われたことで、俺は理解したんだ。人は“誰か”である限り、生きていける。逆に、個であることを否定されれば、人としての心が死ぬ」


 そこにカミーユとハクが現れた。


 カミーユがレオに話しかけた。


「レオ、円卓会議だけど、私に考えがある。私にも協力させて」


 ここに来るまでの間に、何か新しい情報を掴んできたな――そう思ったレオは、カミーユの提案を呑むことにした。


                *  *  *


 やがて、他の境界人たちもそれぞれの思いを胸に、静かに会議室を後にしていった。


 円卓会議の刻限は、もうすぐそこに迫っている。


 けれど、レオの心には、もう迷いはなかった。


 彼の提案は、制度の修正ではなく、秩序そのものの刷新だった。


 過去の断絶ではなく、未来の架け橋を――


 それは、かつて自由を奪われた者たちが、自らの名において取り戻す「再構成」の第一歩だった。

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