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生成AIが紡いだ小説 混ざり者レオの物語  作者: 月嶋 綺羅(つきしま きら)
第九章 協定
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再会と再構成 2

 カミーユは口を開いた。


「……身体のほうはね、琲紅自治州でレジスタンス《天秤の焔》が、隔離された施設の中から見つけてくれたみたいなの」


 彼女の声は、穏やかで、しかしどこか遠くを見つめるような調子だった。


「自我のほうは……統一政府の総本部庁舎の、地下十階の閉鎖エリア。あそこに、機械の中に閉じ込められていたらしいの。サイバー空間の一部に取り込まれて、外からはアクセスできないように封鎖されていた……」


 ミナトが眉をひそめた。


「そんな深部まで……統一政府は、そこまであなたのことを警戒していたのね……」


 ハクが席を立ち、三人のところにやってきた。


「俺が説明するよ。カミーユの行方を捜して日本を出て、統一政府系の機関について調べていたら、そこにいるらしいって情報を掴んだ。それで迫害政策に疑問を抱いている職員に接触して、停戦後、自我を機械から持ち出して貰ったんだ」


 その瞬間、レオの瞳に、ほんの少し涙が光った。


 人間の良心が、まだ生きていた――その事実に。


「ハク……。きみは、カミーユのこと、救い出すことに成功していたんだな」


 ハクは何も言わず、充実感に満ち溢れた、満足げな笑みを湛えた。


 カミーユが再び話し始めた。


「それで、ハクが身体の所在も突き止めてくれて、《天秤の焔》に接触してくれた。琲紅の専門病院で、ようやく……自我を身体に戻す手術を受けた。でも……」


 少し目を伏せる。


「……結構長いあいだ分離してたせいで、身体の感覚が戻らなかった。それで、その施設でしばらくリハビリを受けてた。精神も、身体も、時間をかけてようやく、取り戻せた」


「しかし、琲紅だったら、飛霞からそんなに遠くない。何故捜しても見つからなかったんだろう……」


 レオが首をひねった。


 カミーユは小さく頷いた。


「統一政府の幹部から命を狙われていた可能性もあるってことで、私の件に関与している政府幹部の身柄が拘束されるまで、匿って貰ってた。だから、ずっと、居場所を伝えられなかった。本当に……ごめんなさい」


「俺もずっとカミーユに付き添っていたんだけど、《天秤の焔》の連中から口止めされてたんだ。本当にすまない」


 二人の言葉に、レオは首を横に振った。


 怒る気持ちなど、微塵もなかった。ただ、会えたこと――今ここにいるということが、何よりも大切だった。


「謝ることなんて、何もない」


 レオはそう言ってハクとカミーユの目を見た後、視線をカミーユに移した。


「……カミーユ……君が、生きていてくれて、戻ってきてくれて……それだけで、すべてが報われたんだ」


 カミーユの瞳に、涙が浮かんだ。だがそれは、哀しみの涙ではない。


 ようやく辿り着いた場所で流す、救いの涙だった。


 四人の間に流れる静けさは、言葉のいらない信頼と再会の証だった。


 だが、その余韻は長くは続かなかった。


 カミーユの姿を目にした他の施設収容者たちが、次々と彼女のもとに集まってきた。


 誰もが彼女の消息を案じ、そして再会を信じられずにいた者ばかりだった。


「……カミーユ? ほんとに君なのか?」


「おいおい、どういうことだよ……まさか生きてたなんて……」


「ずっと心配してたんだ。あのとき、君だけが戻ってこなくて」


「良かった、本当に、良かった……!」


 言葉が堰を切ったように彼女の周囲に溢れる。


 ある者は手を伸ばし、指先で彼女の存在を確かめようとし、またある者はその場に立ち尽くして涙を堪えていた。


 彼らの表情は安堵と驚愕と喜びが入り混じり、何年もの時間を一気に巻き戻すようだった。


 カミーユはそんな仲間たち一人ひとりの顔を見つめ、優しく微笑んだ。


「ありがとう……みんな、本当にありがとう」


 その一言に、胸を突かれたように言葉を詰まらせる者もいた。


 騒然としながらも、再会の温もりに包まれた空間が、部屋いっぱいに広がっていく。


 だが、そこにひとつの声が響いた。


「……積もる話はあると思うけど、とりあえず、みんな、席についてくれ」


 レオの声だった。


 感情の昂ぶりを押し殺しながらも、静かな調子で、しかし確かな指揮の力を帯びていた。


 彼の視線は、カミーユの周囲に集まる仲間たちに向けられている。


 今は彼女との再会を喜んでいるだけで終わる場面ではない。


 ここにいる全員が、これからの未来と、かつての傷を整理し、向き合うために集っているのだ。


 その言葉に、人々は少しずつうなずき、各々の席へと戻っていった。


 カミーユもまた、穏やかに頷き、ゆっくりと歩を進める。


 彼女が席につくと、部屋の空気は自然と引き締まった。


 誰もが、何かが始まることを察していた。

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