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生成AIが紡いだ小説 混ざり者レオの物語  作者: 月嶋 綺羅(つきしま きら)
第八章 デウス・エクス・マキナ
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第七節 超越者の干渉――ノウス・コアの介入と停戦勧告 1

 制御室の中央――。


 強化ガラスに封じられた起動キーと、その隣に備えられた量子崩壊爆弾とネガティブマター爆弾の起動端末が、重苦しい沈黙の中で佇んでいた。


 ヴォルテックス元帥が、無機質な制御卓の前に立つ。


 悪事を働く人間に特有の、表情を持たない鉄面皮のような顔になっていた。


 だったが、その指先には、わずかな躊躇いが宿っていた。


「……起動スイッチを入れる」


 その宣言とともに、起動キーが挿入され、金属の軋みを伴って時計のように回された。


 次の瞬間、制御卓の上空に浮かび上がったホログラムに、冷たい数字が点滅を始めた。


 59:59:57


――カウントダウン、開始。


 室内に低い女性の声で作成されたアナウンス声が響き渡る。


――カウントダウン終了後、起爆確認操作が必要です。もう一度、起動スイッチを入れてください。


 通常の爆弾と異なり、誤作動の防止と、熟慮した上に起爆を撤回できるよう、1時間の猶予が設けられていた。


 00:39:15


 伝令役のセカンダライン大佐が戻ってきた。


「全世界に指示は行き渡りました。全軍は基地および駐屯地への撤退を開始。攻撃目標から百五十キロ圏内の機械人類にも避難命令が発令されましたが――避難に要する時間があまりに短く、民間人にも相当な犠牲が出る見込みです」


 セカンダライン大佐の表情には深い諦観が差していた。


 理不尽に命を奪われる機械人類たちに対し、彼は言い知れぬ後味の悪さと、重い罪責感を抱かずにはいられなかった。


「我々の種が生き延びる為には、仕方のない犠牲だ……」


 ヴォルテックス元帥が、自らに言い聞かせるように、低くつぶやいた。


 彼もまた、確かに罪悪感を抱いていた。


 いかなる理由があろうとも、同胞の命を奪うという行為に、何の痛みも覚えない者はいない。


 ましてや、種の存続を掲げ、クーデター計画の先頭に立ってまで他の人類種を排除しようとした彼であればなおさらだった。


「本当に押すのですか? 最終スイッチを……」


 ランフォード大佐が、生気を失った目でそう問うた。


 今まさに、おぞましい大量破壊兵器が起動されようとしている。


 止める術を持たぬ自分に対し、彼は激しい無力感と絶望に打ちのめされていた。


「これは、我々にとっての最終手段なのだ。これ以外に、生き延びる道がない。押さなければ、我々の未来は潰える」


 ヴォルテックス元帥の言葉に、クロフォード航空宇宙軍参謀総長とランフォード大佐が互いに目を交わす。だが、二人とも返す言葉を持てなかった。


 無慈悲なカウントダウンは、淡々と数字を刻み続けていた。


 00:18:07


 00:05:29


 時間が減るにつれ、室内の空気は濃密になり、そして更に張りつめていく。


 クロフォード航空宇宙軍参謀総長が青ざめた顔でつぶやいた。


「……最終確認まであと五分だ。まだ、停止命令は出せる。キャンセルも可能だ」


 それを遮るように、ヴォルテックス元帥が静かに、だが強い語調で応じた。


「クロフォード参謀総長。貴殿はそれを、逃げだとは思わないのかね。貴殿は結果に対する責任を負わされることに恐れを抱いているだけなんだ。しかし、我々は軍人だ。決断の重みに怯えていては、元帥や参謀総長は務まらない。我々は、種に対しても、種の未来に対しても、軍に対しても、責任を持たねばならん」


 言葉には強い決意が滲み、背後では無機質なカウントの電子音が規則正しく鳴り響いていた。


 元帥は、刻々と迫るその音に耳を澄ましながら、自らの決断に確信を深めていた。


 そして――


 00:00:00


 カウントがゼロを刻み、警告音が低く鳴り響く。


 ホログラム上に、最終決定入力の表示が浮かび上がる。


「最終起爆スイッチを押下してください」


 施設内に流れた音声アナウンスの言葉を受け、ヴォルテックス元帥が歩み出た。


 そして、無機質な装置の前に立ち、わずかに躊躇したのち、震える指で――


 スイッチに触れた。

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