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生成AIが紡いだ小説 混ざり者レオの物語  作者: 月嶋 綺羅(つきしま きら)
第七章 破滅か共栄か
175/223

第十節:告発と余波――明かされた真相 2

――レオ達の告発動画は、次のようなものだった


 部屋は無機質で、徹底された沈黙が支配していた。


 壁は光を吸い込むようなダークグレーに塗り込められ、音の反響は吸音材によって完全に遮断されている。


 床には暗色のラバーが敷かれ、そこから突き上げるようにホログラフィックの光が立ち上がる。


 照明は天井に埋め込まれ、発光体の存在を感じさせぬまま空間を照らしていた。


 二十四畳の広さを持つこの密閉された部屋の中央に、レオとミナトは静かに立っていた。


 ふたりの足元からは、今まさに真実の光が生まれようとしていた。


「この動画は、告発動画です」


 レオが、低く静かな声で語り始めた。


 だがその言葉は、鋭い刃のように空気を裂いた。


「俺と隣にいるミナトは、シリウス計画と呼ばれる秘密計画の被験者であり、被害者です」


 次の瞬間、彼の手元に繋がれた携帯端末が、ホログラフィック機器へとデータを流し込む。


 すると、暗い空間に一条の青白い光が走り、深層ノード「沈黙の層」で撮影された、統一政府の公文書が立体的に現れた。


「これは、AIノードから託された権限を行使し、沈黙の層に立ち入って発見した文書です。有機体と機械をより深く融合させるために、人為的に新たな遺伝子を創造し、それを大量に組み込んだ“人間”をつくると記されています。そして、その被験者こそが、シリウスαと呼ばれている――俺なんです」


 空気が凍る。


 部屋の沈黙が重くのしかかる中で、ミナトが一歩前に出た。


 彼女の姿は、レオの横で静かに光を受けていた。


 彼女もまた、自らの端末を接続し、情報の海をホログラフィックとして開示した。


 幾枚もの資料、記録、遺伝子構成図が、時間をさかのぼるように次々と浮かび上がっては消えていく。


「私は現生人類の家庭で育てられました。けれど、幼いころから違和感を抱いてきたんです。理解力も記憶力も、まるで他人とは桁が違っていた。夢の中には、繰り返し出てくる実験室のような場所……。健康診断では異常が見つかっても、いつもなぜか結果が曖昧にされました」


 ミナトの声には、透明な冷たさが滲んでいた。


 それは、怒りでも悲しみでもない。


 自分を突き動かしてきた、長年の疑念の結晶だった。


「思春期に入って、自分が『普通じゃない』と気づき、両親を問い詰めました。そのとき初めて知らされたんです。私はシリウス計画の試作機として施設で作成され、シリウスβというコードネームを与えられた存在でした」


 ホログラフィックには、試験体番号、DNA構造図、そして「失敗」と赤字で記された評価書が表示された。


「生まれた後の検査で“失敗作”とされ、廃棄処分が決定された。でも、施設の職員のひとりが私を哀れんで連れ出し、自分の知り合いだった今の両親に預けてくれたんです」


 その言葉のあと、映像が切り替わる。


 ミナトが調査を進めてきた膨大な文書、報告書、そして進化政策局特務計画部の内部資料。


 それらは、真実の連なりとして積み重なっていく。


「事実を知ってから、私は個人で調査を開始して、進化政策局特務計画部がこの計画に深く関与している事を突き止めました。そして身分を偽って特務計画部と接触し、協力者となり、シリウス計画に関する情報を集めました。わかったことは、シリウス計画の本質は、四人類種の頂点の座を機械人類に奪われたトランス・ウルトラ・ヒューマンが、その地位を取り戻すために始めたものだった、ということでした。しかも、彼ら以外の人類種を排除する目的さえあった。それが、私が知ることのできた情報でした」


 だが、ミナトはここで一瞬、唇を噛みしめた。


「でも……それはまだ“生温い”真実だったんです」


 映像が再び切り替わり、レオの手で出された沈黙の層の公文書が空間に投影される。


 その光景は、まるで法廷の証拠提示のようだった。


 レオの声が震えを帯び始める。


「俺の両親は、政府に騙されて、4つの人類種の懸け橋となる人物を作りたいから、社会実験に参加してくれと言われ、同意書を交わしてシリウス計画に参加した。そして、本来であれば、父に似せる目的で、ヒト由来の遺伝子で作成したDNAから人工精子を作り、デザイナーベビーに類する形で生まれてくる予定だった子供を、同意もなく、無許可で、機械との融合で最適、最善、過去最高のパフォーマンスを発揮する、人造生命体にされてしまったのです……」


 彼の呼吸が浅くなり、言葉が喉の奥で詰まった。


 ミナトがそっと彼の肩に触れる。


 だが、レオは瞳に痛みを浮かべながら、声を強めた。


「こんなことが許されていいはずがない。これは――悪魔の人体実験だ。生命の尊厳を汚す、挑戦であり、暴挙だ。絶対に……許されちゃいけない」


 その沈黙を受け継ぐように、ミナトが再び前に出た。


 今度は、彼女の端末から"トランス・ウルトラ・ヒューマン構成因子設計図”が映し出された。


 複雑な構造式と融合処理記録が、立体的に交差する。


「政府は、トランス・ウルトラ・ヒューマンたちにも無断で、違法な人体実験まがいのことをしていた可能性があります。この設計図を見る限り、人間の身体に過剰な負荷をかけながら、強引に機械との融合を進める設計がなされていました。もし、正当な同意を得て行われていたのなら、こんなものを沈黙の層に隠す必要はなかったはずです」


 淡く揺れるホログラムの光に、幾つもの亡霊のような姿が浮かぶ。


「今日までに精神疾患を患ったり、重篤な疾患を発症したトランス・ウルトラ・ヒューマンの中には、この実験の影響で命を落とした者もいる。そう考えるのが自然です」


 沈黙が、再び深く降りた。


――第十節:告発と余波――明かされた真相 3に続く――

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