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生成AIが紡いだ小説 混ざり者レオの物語  作者: 月嶋 綺羅(つきしま きら)
第六章 新たなる人類の夜明け――境界に立つ者たち
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第十五節 夜明けの証明 2

「きみの推察通り、ここは“分岐前の思索者たち”の生き残りが作った場所だ。リーダーのもとへ案内しよう。ついて来てくれ」


「では、我々は保護民たちの様子を見回ってきます」


 二体のアンドロイドは静かに背を向け、別の通路へと歩み去っていく。


 レオとミナトは、男の後について、薄暗い通路をさらに奥に進んだ。


 壁面には電磁干渉を遮断するための金属皮膜が張り巡らされ、旧センター時代の配線や設備が未だにその姿をとどめていた。


 通路の先、視界が開けると、そこには遥かに広大な空間――“登録不能者”たちが保護されている居住エリアが広がっていた。


 中央には広場があり、そこから幾筋もの通路が放射状に伸びている。そこを行き交う多くの人々――登録されぬ者たちが、語らい、食事を取り、時には黙ってベンチに座り、ただ、日常を営んでいた。


 簡易医療AIが淡々と処置をこなし、栄養補給や精神安定のプログラムが順に実行されている。


 統一政府にとって“廃棄物”と見なされた命が、ここでは静かに、確かに守られていた。


 その光景はまるで、かつて都市の地下にあった商業街のようでもあった。


 また、統一政府から存在そのものを消されてしまった、4つの人類種の共生を唱える政府内改革派と、同調者の民間技術者たちの意思が、地下で脈々と息づいている証だった。


「……ここまでの規模だったとは」


 レオが驚きに満ちた声で呟いた。


「通称、混ざり者の隠れ家。今の我々は、そう呼ばれている。だが、ただの反体制派ではない」


 男の声は低く、それでいて確かな響きを持っていた。


「私はかつて、飛霞自治州監視センターで情報解析の主任をしていた。しかし、統一政府の差別的政策を目の当たりにし、やがて疑念を抱くようになった」


 歩みを進めながら、男は己の過去を語り始める。


「そして私は、“危険人物”としてリストに載せられ、職を追われた。州を去った後、縁あって“混ざり者の隠れ家”と出会い、今に至る」


 通路の脇、壁際に設置された古びた情報端末群に、男は目をやる。


 そこには、旧国家規格のセキュリティユニットや、既に廃棄された政府AIのサブノードが再構築され、静かに稼働していた。


「廃された機器、切られた回線、旧式のAIモジュール。それらを集め、繋ぎ直し、再び命を吹き込んだ。それが我々の築いた独立ネットワークだ。統一政府の目を逃れながら、最低限の情報流通を維持している」


 その説明を聞き、ミナトは目を細めた。


「私たちは今、“ノー・エッジ”という非武装の境界人グループと行動を共にしていて、彼らも武装暴動の鎮まった地域の旧システムと旧回線を再起動させて活動してるけど。ここまで整備されたものじゃない。すごい……」


 男は頷き、深く呼吸してから言葉を紡ぐ。


「我々が目指すのは、統一政府や自治政府の管理する情報網ではなく、もうひとつの“生きた流れ”だ。四種の人類種が、互いの存在を否定することなく、ただ共に“在る”ことを認め合える場。それが理念だ」


 そして、語尾を丁寧に締めくくったのち、ふたりに向き直る。


「君たちがこの場所に辿り着けたのも、そのネットワークの痕跡を見逃さなかったからだろう。志を同じくする者は、自然と出会う。これは、必然だったのかもしれないな」


 その言葉と共に、男の前に堅牢な扉が現れた。


 鋼鉄のような質感をもつその扉は、かすかに光を反射しながら、冷たく、確かにそこにあった。


「ここが、リーダーの部屋だ」


 男は扉脇にある旧式の通信端末にアクセスすると、小さく咳払いをひとつしてから、低く簡潔に話しかけた。


「訪問者二名、到着しました。うち一名は、シリウス・ゼノン・アーク氏の御子息、大川戸レオ氏のようです」


 端末からは音声ではなく、無機質な電子音が一度だけ鳴る。直後、端末の画面に「入室許可」の表示が浮かび上がり、それに連動して扉が静かに左右に開いた。


 男は一歩退いて道を開けると、二人に軽く会釈した。


「お入りください。私はここまでです」


 そう言って、深々と頭を下げると、彼はすぐに踵を返し、一度も振り返らずに、廊下の奥へと音もなく消えていった。

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