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生成AIが紡いだ小説 混ざり者レオの物語  作者: 月嶋 綺羅(つきしま きら)
第六章 新たなる人類の夜明け――境界に立つ者たち
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第十四節 沈黙のアクセスハッチ 4

 レオとミナトはスリップランナーに再び乗り込み、山間を縫うように走る両州を繋ぐ道を西へと進む。


 救援機が空路で飛霞自治州内の安全地域まで飛行するには、途中で撃墜されるリスクが高すぎる。


 とすれば、あの機体はあらかじめ泰平自治州側に着陸地点を確保していた可能性が高い。


 二人はその仮説に基づき、事前に統一政府職員の偽造身分証を携帯していた。


 物々しく警備された州境ゲートで偽造IDを提示し、チェックを通過したあと、ミナトはリヴィアスの地図上に表示された救援機体の移動軌跡を再び確認し、それに沿ってルートを修正した。


 追跡の末に辿り着いた先は、かつて泰平自治州の情報処理中枢を担っていた大型データセンターの跡地だった。


 そこは、今や誰の手も入らぬ、廃墟のような場所となっていた。


 調べてみると、現在この施設には再稼働の計画は一切なく、地図上でも“無指定区域”と記されていた。


 レオとミナトはスリップランナーから降りた。


 だが、ミナトは足を踏み入れるや否や、ふと端末の通知に目を止めた。


 通信モジュールが、断続的ではあるが異常なパケットの揺らぎを検知していたのである。


 通常のネットワークが機能していないこのエリアで、電波の波形に揺らぎがあるのは明らかに不自然だった。


 興味を引かれたミナトは、受信ログを解析し始めた。


 そしてその結果、予想外の事実に突き当たる――パケットの痕跡があったのだ。


 しかもそれは、一度きりではなかった。


 幾度かにわたって傍受されており、さらに調査を進めると、地中深くからごく微弱なデジタル信号が発信されていることが判明した。


 その信号は、旧世代AIが運用していた分散型ネットワーク――すなわち、かつて“パルス”と呼ばれた微細な通信パターンに極めてよく似ていた。


「ここの地下に何かあるみたい」


 ミナトが端末を見たまま呟く。


「何かあるってことか。面倒だが、調べてみるか」


 ふたりで廃墟と化した大型データセンターの跡地の探索を進めた。


 外れに位置する朽ちた高層倉庫の地下階に通じる経路を発見した。


 瓦礫と塵に覆われた空間をくまなく調べていくと、床の一角――崩れかけた資材の下から、埃にまみれた金属面が姿を現した。


「これは……アクセスハッチね」


 ミナトが静かに呟く。


 かつて何らかの用途で使用されていた形跡のあるそれは、構造自体は旧式のものだったが、表面には新たに施された鍵構造が取りつけられており、誰かが後になって意図的に“再利用”した形跡があった。


 レオが、表面の埃をぬぐおうと無造作に金属面へ掌を触れた、その刹那だった。


 音もなく、沈黙の中にかすかな振動が広がり、ハッチ内部の小型端末がひときわ低く光を灯した。


〈掌紋コード確認――一致。アクセス許可〉


 思わずレオは手を引っ込め、ミナトと顔を見合わせる。


「……今の、俺の掌紋に反応したのか?」


 レオの声には明確な戸惑いがあった。


 ミナトも眉を寄せ、無言のままハッチの表面を改めて見つめる。


 この廃棄されたはずの施設に、なぜレオの掌紋情報が残っているのか。


 偶然とは言い難い一致に、ただならぬ意図の存在が浮かび上がる。


「これは……どういうこと?」


 ミナトが呟いたその声には、動揺が滲んでいた。


 やがて、かすかな機構音とともにハッチが静かに開き、内部からひんやりとした空気が吹き上がってきた。


 古びた階段が下方へと続いており、壁面にはかすかな誘導灯が点滅している。


「……行ってみよう」


 レオが小声で呟き、先に足を踏み入れる。ミナトもすぐに続いた。

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