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生成AIが紡いだ小説 混ざり者レオの物語  作者: 月嶋 綺羅(つきしま きら)
第六章 新たなる人類の夜明け――境界に立つ者たち
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第十二節 ハクの旅立ち 2

 レオが真剣で、それでいて、非常に深刻な雰囲気を身体に帯びて、切り出した。


「カミーユのことなんだが、実は今日、彼女と会った」


 ハクが固まった。あれだけ必死で捜し回っても、居場所の痕跡すら掴めなかった彼女と、レオが会ったとはとても思えなかったからだ。


 少し間を置いたが、ハクが何も言わないので、レオは言葉を続けた。


「ただし、会ったと言っても、サイバー空間の中だ。今、カミーユは肉体から自我を切り離され、どこかに閉じ込められているらしい。理由は、あの施設に隔離される前、政府の政策に不信感を持って調べ回っていて、都合の悪い情報を掴んだ為だろうと言っていた」


 レオは口を閉じた。


 ハクは目を伏せて、時折、瞬きをして、思案するような顔をしていた。彼の話に理解が追い付いていなかったのだ。


「確かハクには話していなかったと思うけど、レオは、AIノードに選ばれて、四人類種の懸け橋になったの。その時、能力を解放されたらしくて、普通じゃないことができるのよ」


 ミナトが事情を説明した。


 ようやくハクが口を開けた。


「特殊な能力って?」


 レオが答えた。


「俺にもよくわからない。しかし、気づいたらサイバー空間にいて、カミーユがいた。どうやら俺には、機械人類やトランス・ウルトラ・ヒューマンのように、通信装置や機械のそばにいる状態で、サイバー空間と接続できるみたいなんだ」


「なるほど」


 ハクが小刻みに頷く動作をした。そして聞いた。


「場所はどこだかわかってるんですか?」


「何も言ってなかった。全くわからないんだと思う。身体から自我を分離されただけで済んでいるのか、それとも、身体と自我は別々に保管されているのか、それすらわからない」


 レオの言葉を聞いて、ハクは様々な可能性を考えた。脳裏には様々な言葉が浮かんできて、思考のきっかけを与えてくれる。そしてあることに気付いた。


「身体と自我の分離は、確かに現代技術でも可能ですが、それは自我移植の際に使用される技術で、移植されるまでの短期間の話です。長期間、自我と身体を分離するなんて話、聞いたこともないですし、さらに自我をサイバー空間に閉じ込めて生かすなんて芸当、並の研究機関にできる事じゃないです。これは間違いなく、統一政府の最高クラスの研究機関が関与していますよ」


 レオが腕を組んで顎を引き、ミナトは暗い表情でテーブルに視線を落とした。


「確かにきみが言うとおりだ。ここまでの芸当は、現代の技術水準を考えた場合、統一政府の軍関係の研究機関あたりが、何らかの意図で開発した技術が使用されていると考えるのが妥当だろう」


 ミナトもレオの考えに同調した。


「専門分野は違うけど、私も研究者の端くれ。だからレオが言っていることは当たっているんじゃないかと思う」


 するとハクがあらたまった態度になって、二人を真剣な面持ちで見つめた。


「レオさん、ミナトさん、俺、カミーユを探す為に、飛霞を出ます。それだけ取っ掛かりがあれば、目星をつけて統一政府系の疑わしい機関をリストアップして、探って行けば、カミーユに辿り着けると思います」


 即座にレオが止めた。


「危険すぎる。相手は政府だ。しかも恐らくは秘密機関。隔離施設からカミーユを連れ去り、しかも、自我と身体を分離し、サイバー空間に閉じ込めてしまうような頭の逝かれた奴らだ。下手したらきみが命を落としてしまう」


 レオが言い終えぬ間にハクが口を開いた。


「覚悟の上です。レオさんだって命懸けで州内を演説して回ってたじゃないですか。共生思想を支持する人を、一人でも多く獲得する為に。ミナトさんも常に付き添い、活動を支えてきた。カミーユだって混ざり者たちの為に動ていた。俺も何かしたいんです。カミーユのことは、どうか俺に任せて下さい。必ず見つけて、助け出します」


 ハクの熱意がレオとミナトにも伝わる。二人は止めることはできないと察した。


「わかった。でも、無理だけはしないでくれ」


 レオの言葉に、ハクはゆっくりと、自分に言い聞かせるように頷いた。


「ちょっとでも危険だと思ったら、手を引いて。本当にヤバい奴らを相手にしているんだから」


 ミナトの言葉がハクの胸に刺さった。けれど、それ以上に、カミーユの瞳が今も脳裏から離れなかった。


 助け出す。それだけが、自分に残された意味だと思った。

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