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生成AIが紡いだ小説 混ざり者レオの物語  作者: 月嶋 綺羅(つきしま きら)
第六章 新たなる人類の夜明け――境界に立つ者たち
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第十一節 失踪 ――後編:カミーユが託したもの 3

 第一アジトに戻ったレオとミナトを出迎えたのは、いつものように無駄のない動きと鋭い視線を持つリーダー・エイジだった。アジトの天井には仄暗い蛍光灯が沈黙を抱えたように揺れ、緊迫感を帯びた空気が立ち込めていた。


「エイジ、主要メンバーを集めてくれ」


 レオの一言に、エイジは即座に頷いた。


「了解。緊急会議だな」


 彼は手元の端末に操作を施し、内部通信を走らせる。間もなくして、薄暗い会議室にメンバーたちが次々と姿を現した。


 机を囲むようにして座ったのは、〈ノー・エッジ〉の中核を担う者たちだった。戦術担当、技術者、情報解析係、医療サポート、政治戦略部門──いずれも信頼と実力を兼ね備えた面々である。


「みんなに見て欲しいものがある」


 レオは、静かに口を開いた。声に熱はこもっていたが、冷静だった。


「これはカミーユという俺の友人が命懸けで集めてきた情報だ」


 彼はそう言いながら、円卓に並んだ者たちに一つずつ専用ヘッドギアを手渡していった。


 装着が完了した瞬間、それぞれの意識に再生され始めたのは、ある少女の記憶そのもの──感情、思考、神経反応を含んだ「主観体験ログ」だった。


 映像はまるで、カミーユ自身の目を通して見る世界。彼女が見たもの、聞いたこと、そして感じたもの──そのすべてが、観る者の脳を通じて、生々しいリアリティをもって流れ込んでくる。


 飛霞自治州全域に密かに張り巡らされた違法な監視網。


 通行人の無意識下で記録された脳波パターンが、何者かの手によって“操作可能な条件”へと組み換えられていた。


 市民に気づかれない形で施行される神経刺激──人々は、まるで知らぬうちに感情の選択肢を奪われていた。


 さらに、法の下の平等が嘘であると明示された文書。


 そこには、現生人類、超人類、トランス・ウルトラ・ヒューマン、機械人類によって“適用範囲が異なる”新法案の改定案が記されていた。表向きの立法文書では省かれていた部分が、裏の通達として明記されていたのだ。


 そして、最も衝撃的だったのは、その先の映像だった。


 遺伝子構造、思想傾向、過去の行動履歴、家族背景などに基づいて分類された、「消去対象リスト」。


 それは、かつての粛清と呼ばれるものの再来を思わせる。


 そこには複数の名前、ID、顔写真とともに、「優先削除」「無条件拘束」「社会的死を促す心理工作プログラム」といったタグが並んでいた。


 しかも、その文書には、統一政府直属の機関名と責任者の署名が確かに刻まれていた。


「……こんなことが行われていただなんて、信じられない……」


 最初に声を漏らしたのは、リーダーのエイジだった。普段はどんな脅威にも動じぬ男の顔が、青ざめていた。


 他のメンバーたちも言葉を失い、それぞれ異なる反応を見せた。


 怒りに顔を紅潮させ、拳を握りしめる者。


 目を伏せ、唇を噛みしめながら涙を堪える者。


 疑念を捨てきれずにただ呆然とする者。


 だが、共通していたのは──「こんなことは許されてはならない」という、全員の胸の奥に灯った一つの炎だった。


「これを世間に公開しようと思うが、意見を聞きたい」


 エイジが低く言った。


「こんなもの、世の中に出さなきゃ意味がない。どんなリスクがあろうと、全人類に真実を知らせるべきだ」


「同意する」


 異論は出なかった為、レオは頷き、すぐに行動に移った。

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