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生成AIが紡いだ小説 混ざり者レオの物語  作者: 月嶋 綺羅(つきしま きら)
第六章 新たなる人類の夜明け――境界に立つ者たち
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第十一節 失踪 ――後編:カミーユが託したもの 2

「ミナト……!」


 レオは研究室を飛び出し、迷わずミナトの元へと向かった。


 モニターに向かって作業していたミナトが、不意の足音に顔を上げ、目を細める。


「慌ててどうしたの?」


「今……カミーユと話した」


 ミナトが口角を緩めた。


 一瞬、冗談かと思ったのだ。


「カミーユと話すって? どうやって?」


「居場所は不明だ。でも、自我を切り離されて、サイバー空間に閉じ込められていた。さっき、俺に接触してきた」


 冗談に返そうとした言葉が、ミナトの喉奥で止まった。


 レオの顔に浮かんだのは、冗談を言う時のそれではなかった。


 静かで、けれど深く何かを背負ったまなざし――。


「……パソコンを使ってる時に?」


「よくわからない。気づいたら、彼女が囚われている空間に俺の意識が繋がってた。そこで話した」


 ミナトはしばらく黙ってレオの顔を見つめた。


 まるで、そこに別の何者かが宿っているかのように。


「いつの間に、そんな力を……」


 呟くようにそう言った。


「トランス・ウルトラ・ヒューマンの中には、サイバー空間に無線接続できるタイプがいるって聞いたことはあるけど……」


「ノードだよ」


 レオの声は、落ち着いていたが、どこか遠い響きを持っていた。


「接続した瞬間、能力が解放されるって言われた。その時に、何かが目覚めたんだ」


 ミナトは、ゆっくりと頷いた。


 そして思った。


 やはり、レオは自分とは違う。


 この時代を超えて、四つの人類種の境界を越える存在――。


「……それで、カミーユとは何を話したの?」


「隔離施設に入る前、彼女が集めた情報を公開して欲しいって。記録の座標を教えてもらった。端末からアクセスできるはずだ」


 レオが即座に端末へと座標を打ち込む。


 その数値を見て、ミナトの目がわずかに見開かれた。


「この暗号構造……完全に軍用レベルね。だけど、私の専門分野だから、解けると思う」


 ミナトは冷静に解析を進め、数分後――複数の動画ファイル群が、端末上に姿を現した。


 通常の動画ファイルではなかった。視覚野・聴覚野・前頭前皮質から直接抽出された生体インターフェースデータで構成されており、感情の振幅、思考の軌跡、筋反応やホルモン分泌の変化までをも含む多層的な「主観インプレッション・ログ」だった。


 専用ヘッドギアを装着して映像を再生すれば、視聴者は彼女の視点で世界を見、彼女の感じた恐怖や疑念すら、身体の奥で追体験することになる。


 本来、特殊機材を使用して撮影しなければ撮影できないこの種類の動画を、カミーユは機材なしで、自分の記憶から作成できる特殊技能を有していた。


 カミーユが個人的に単独で潜入調査して見聞きして来たものは、想像を遥かに超える闇だった。


 自治州全域に仕掛けられた違法な監視網。


 人々の脳波を操作し特定の行動を誘導する神経刺激実験データ。


 人類種によって適用が差別化された法令運用・省庁通達の非公開改定記録。


 さらに――遺伝子や思想傾向に基づき、ある者たちを「消去対象」として分類する極秘指令書。


 どの文書にも、統一政府直属の部署名が明記されていた。


 それはすなわち、この闇が“本物”である証だった。


「とんでもないものがでてきちゃった……」


 ミナトが絶句した。レオも同じだった。


「どうする?」


 しばらくして、気を取り直したミナトが問う。


 レオは、静かに口を開いた。


「これらの情報は、世間の人々が知るべき情報だ。統一政府が綺麗事を言う裏で、一体、何をしてきたのか……。それにカミーユは言っていた……“使ってほしい”と。なら、俺たちは、この真実を――」


 レオの瞳が、強く燃えた。拳が自然と握られる。彼はミナトに向き直り、はっきりと言った。


「世界に、突きつけなければならない」

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