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生成AIが紡いだ小説 混ざり者レオの物語  作者: 月嶋 綺羅(つきしま きら)
第六章 新たなる人類の夜明け――境界に立つ者たち
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第九節 見捨てられた存在 1

 数日後、レオの予言は現実のものとなった。


 境界人全面攻撃計画は突如として中止され、〈スチール・イデア〉、〈ノア・アーク〉、〈オーバーコード〉の三団体は、それぞれが州内に持っていた支配地域外の拠点を次々と閉鎖。構成員たちは本拠地に撤退していった。


 結果、飛霞自治州は大きく二つに割れた。〈ノー・エッジ〉の影響下に置かれ、武装暴動が鎮静化した地域と、超人類・トランス・ウルトラ・ヒューマン・機械人類が支配する地域——そこでは各勢力の利権が交錯し、主張がぶつかり合い、武装衝突が断続的に発生し続けていた。


 しかも、それらの支配地域はモザイク画のように複雑に入り組み、地理的にも政治的にも境界が曖昧な混沌の様相を呈していた。


 さらに数日が経ったある日。第一アジトの会議室にて、エイジは深刻な面持ちで新たな情報をレオとミナトに伝えた。


「レオ、ミナト。深刻な懸念がある。〈スチール・イデア〉、〈ノア・アーク〉、〈オーバーコード〉の三団体の間で、支配領域を巡る抗争が激化している。特に民間人の被害が深刻で、多くの死傷者が出ているとの報告が入っている」


 レオは眉を寄せ、低く問いかけた。


「具体的には、どういう状態なんだ?」


 エイジは資料を差し出しながら、説明を続けた。


「彼らは互いの支配地を奪い合うように、武装衝突を繰り返している。地域全体が戦場と化して、市民が巻き込まれている。しかも、補給線の破壊や封鎖によって、食料と医薬品の流通が断たれ、各地で人道的危機が深まっている」


 ミナトは資料を読みながら、唇を噛みしめ、怒りをにじませた。


「彼らのイデオロギーの対立に、どうして一般市民が巻き込まれなきゃいけないの……こんなの、ただの虐殺と変わらない」


 レオはしばらく黙考したのち、静かながらも力のこもった声で言った。


「俺たちは、非武装による融和を掲げてきた。直接介入は極力避けたいが……このままでは、犠牲になるのは罪なき民ばかりだ。まずは、被害の大きい地域に医療支援と食料供給を急ぐべきだ」


 「了解した。すぐに支援物資の確保とボランティアの動員手配に入るよ」


 そう頷いたエイジの目には、強い決意が宿っていた。


 レオは続けた。


「同時に、三団体のリーダーたちに停戦を呼びかけ、和平交渉の場を設けるよう打診したほうがいい。可能性は低いだろうが、それでも試してみる価値はあると思う」


 ミナトが心配そうに問いかけた。


「でも……もし彼らが交渉に応じなかったら?」


 レオは静かに、しかし揺るぎなく答えた。


「市民の命を守るために、避難計画と緊急シェルターの設置を進める。俺たちの理念は変えない。武力ではなく、人道支援と対話によって、この破局を乗り越える」


 ミナトとエイジは目を合わせ、深く頷いた。三人の間に、迷いはなかった。


 〈ノー・エッジ〉は即座の支援活動を開始した。


 結成から日も浅く、人員も決して多くはなかったが、それでも医療スタッフとボランティアたちは危険地帯へと赴き、負傷者の救護や食料の配布に奔走した。


 無論、その多くは専門訓練を受けていない素人であり、高度な危険が予測される地域や、危険地帯を通過しなければ辿り着けない孤立地域には、どうしても手を伸ばすことができなかった。


 それでも、支援を受けた住民たちは、彼らのひたむきな姿に心を打たれ、静かに涙を流した。


 やがて、〈ノー・エッジ〉への信頼と支持は波紋のように広がっていった。すると、その信頼に応えるかのように、新たなメンバーや医療従事者、ボランティアが次々と加わり、支援活動の規模は拡大を続けた。


 信頼が人を呼び、人が支援を強化し、支援がさらに信頼を生む――そうした穏やかで力強い好循環が生まれていった。


 だが同時に、レオが送った和平交渉の提案は、三団体の耳には届いても、心には届かなかった。非武装・反戦を掲げる〈ノー・エッジ〉の言葉は、火薬と憎悪に染まった戦場では、あまりにも無力だった。


 それどころか、三団体の争いは一層激化し、〈ノー・エッジ〉の影響が及ばない地域では、もはや“武装暴動”の域を超え、組織化された“内戦”へと変貌していった。

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