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生成AIが紡いだ小説 混ざり者レオの物語  作者: 月嶋 綺羅(つきしま きら)
第六章 新たなる人類の夜明け――境界に立つ者たち
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第八節 境界人全面攻撃計画 3

 数日後──。


 〈ノー・エッジ〉の技術者たちが総力を挙げ、電磁パルス兵器(EMP)を製造した。10km四方を一時的に無力化できる試作型爆弾がいくつも完成した。


 さらにレオの設計による手榴弾型EMP装置を多数内蔵した特殊スーツが用意された。


 それはジャケットとパンツの形をしていながら、実質的には“歩く起爆装置”であり、敵にとっては接近されることそのものが脅威となる仕様だった。


 その朝、まだ陽が高く昇らぬうちに、レオ、ミナト、エイジ、そして選び抜かれた数名の精鋭がそのスーツを身にまとい、飛霞の空気を切り裂くように〈オーバーコード〉の本拠地へと向かった。


 そこにそびえ立っていたのは、未来建築の極致とも言える異形の構造物だった。


 金属と強化ガラスが幾何学的に組み合わされ、外壁には無数の光反射粒子が埋め込まれていた。


 その表面は見る角度によって表情を変え、氷のような無機質な美と、どこか人間性を拒むような冷たさを放っていた。


 まるで未来から剥ぎ取られた巨大なデータ断片のように、そこには“恐るべき整然”が存在していた。


 正面玄関──。


 入口の前に立ちはだかったのは、完全武装のトランス・ウルトラ・ヒューマンだった。


 人間離れした容姿と整った輪郭を持つ彼は、金属のように冷たい眼差しをレオたちへと向け、命令口調で告げた。


「停止せよ。身分を明らかにし──」


 レオが一歩前に出て、静かに、しかしはっきりと言った。


「撃ちたければ撃てばいい。だが、お前が俺を撃つなら、俺もろとも、お前もその場で死ぬぞ」


 警備兵が目を凝らした。


 彼の視線がレオの胸元に並ぶ複数の小型EMP装置に届いた瞬間、顔色がみるみるうちに青ざめた。


「E……EMP……? こんな距離で……!」


 身体が硬直する。引き金にかけた指すら動かせなくなった。


 彼らにとってEMPは、単なる抑止力ではない。“死”を意味するものだった。


 レオたちは静かに、そして堂々と、境界線を越え、本拠地の内部へと足を踏み入れた。


 本拠地の内部は、想像を遥かに超える沈黙に包まれていた。天井へと鋭く伸びる白銀の壁は、まるで知性を帯びた鉱物のように滑らかで、微細な音すら吸収してしまうほどの無機質さを湛えていた。


 響くはずの足音でさえ、鈍く、濁り、遠くで消えるような残響しか残さない。


 照明は壁際に埋め込まれた細いラインライトのみ。青白い光が霧のように空間を浸食し、陰影すら描けぬ無時間の静寂が、構成員たちの動きをまるで許さぬように張り詰めていた。


 床は強化ガラスと金属が幾重にも組み合わされ、内部に編み込まれた回路や感知センサーが、生物の脈動のように微細な律動を繰り返している。


 その上を歩くたびに、床下からかすかな光が灯り、彼らの動きを追尾するように追従していた。


 壁面には流動的なホログラフ映像が常に投影され、各種データが絶え間なく変化しながら表示されていた。


 都市の心臓部の拍動を示すように、情報は漏れることなく集約され、観測され、管理されている。まるでこの空間そのものが巨大なひとつの知性であり、生きた生体のような意思を宿しているようだった。


 踏み込んだ瞬間から、レオたちは既に〈監視〉されている――その確信が、肌を刺すような冷たい気配となって、背筋を這い上がる。


 進行するごとに警戒音が低く鳴り響き、構内に潜んでいたトランス・ウルトラ・ヒューマンたちが、まるで影から溢れるように姿を現した。


 だが、誰一人として動こうとはしなかった。自滅覚悟でEMPを持った相手に攻撃する命知らずはいない。


 そしてついに、最奥の間に辿り着く。

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