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悲しみの歌 2

 どうしよう…。


 ファーリーは、カナの顔を見て、慌てて駆け寄った。


 もしかして…やっぱり…加奈もいなくなる?


 不安のあまり彼女の手をぎゅっと握りしめてしまった。


 振り払われなかった。

 まず、そのことに安堵する。


 そして、握り返されたその手の暖かさにに思わず笑みがこぼれた。


 大丈夫なのかな。


 不安を押し殺しながら次の行動を決めた。


「カナ、明日、買い物行こう」


 勇気を出してそう言うと、カナの驚いたような顔が返ってきた。


**********


 ベッドの下に押し込んだ小さな箱を引っ張り出して、ファーリーは中の小袋を久しぶりに取り出した。


 カチャリ。チャラリン。


 あの頃と比べたらだいぶ軽くなってしまった袋の中身。だけど、まだ、大丈夫。このままやっていける。


 一枚一枚、迷いながら取り出し、最終的には銀貨5枚と銅貨15枚をポシェットの中に入れて、ギュッと拳を握った。

 小袋の中を見ると袋の底が隙間から見えて不安になったが、ぎゅっと取り出し口を閉めて箱に入れ、元の場所に押し込んだ。


 これで、これから来る寒さに備えて、いくつか加奈のための布団と服を買おう。


 それで、きっと大丈夫…大丈夫…なハズ。


 この日々はまだ続いていく…ハズ。


*********


 加奈は、フードを目深に被ったファーリーからこれまたしっかりしたフード付きの服を受け取った。

 ファーリーが黙って差し出したそれを不思議に思いながら手にして思わず首を傾げた。


「顔、見えない…が…いい…」


 緊張の面持ちでいつもと違う硬い声でそう言われると、加奈の心臓がドクドクとなった。


 不安な気持ちでファーリーを見ると、ファーリーは慌てたようにブンブンと首を横に振った。

「加奈は、問題ない。…問題…あるのは私…」


 優しげなファーリーの垂れ目が、今は不安いっぱいに揺れている。


「…私といると…加奈、嫌な目にあう…かも。それでも一緒にいてくれる?」


 なんで、なんでそんなこと言うの?

 涙が今にもこぼれ落ちそうな瞳で。

 多分、私のために、勇気を出して買い物に行こうとしてくれているのに。


「…私、ファーリーのこと、好きだよ。だから一緒にいたいよ」

 どう伝えたらいいか迷いながらも加奈がそう言うと、ぎこちないながらも笑みを浮かべたファーリーの瞳からポロリて涙がこぼれ落ちた。


 加奈はファーリーから受け取ったフード付きの服を上から羽織った。

 フードをファーリーと同じように目深に被るとかなり視界が悪いが、なんとかなりそうだ。


「これで大丈夫かな?行こうか」


 ちょっと気が重いけれどそう加奈が声をかけるとファーリーは頷いた。


 加奈はファーリーと手を繋いで道を歩いた。ファーリーの緊張が手からも伝わり、不安が高まる。

 それでも、今後のことを考えると、買い物は必要。


 二人で一歩ずつ前に進んだ。


 普段人が通らない道は、だいぶ草に覆われてはいたものの、そこには細いながらも確かに道があって、二人はゆっくり歩を進めた。


 やがていくつか建物が見えてきて草むらがきちんと整備された道のようになってきた。


 ファーリーがフードをしっかり被り直すのを見て、加奈もフードに手を伸ばした。そして、ファーリーの手をそれまでよりもやや強く握った。

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