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短編小説どもの眠り場

他人

作者: 那須茄子

 怒声がした。

 何事かと思い玄関の扉を、そっと開ける。


 ちょうど真向かいの別棟で、二人の男が取っ組み合い――――とは言っても、一方的に殴りつける男と、それをなんとか両の腕で遮っている男とでは対称的だ。だからこれを、取っ組み合いと言っていいのか分からない。


 状況が理解できていない以上、私は彼等を見ていることしかできないだろう。野次馬のような真似事はしたくないが、気にはなる。


 もしもの時の為。

 する気もない仲裁を自分の言い訳にした。


 そして怒声がまた、発せられる。今度ははっきりと聞き取れる言葉で、この狭い団地に反響する。


「親を舐めとんのか! 大人を馬鹿にするのも大概にせい!」


 一発二発三発。

 殴る。

 殴られ顔を腫らす。 


 その言葉から、彼等は親子関係にあることが推測できた。多分、身長の高い男が父親で、それより少し背が低い方が息子なのだろう。


 喧嘩。 

 よくあるといえばある、親子喧嘩なのか。


 どうもそれにしては、暴力が過ぎる。

 虐待。

 真っ先に頭の中に浮かんだ単語は、なんとも面倒な厄介事。


 単なる父親と息子での諍いか、それとも親による虐待か。どうも判別がつきにくしい。

 もし虐待であるなら、見て見ぬふりはできない。これでも役所に勤めている身なのだ。


 さて、どうする。

 父親が殴り終わるまで待つか。息子に殴られた痕が無数にあればあるほど、虐待の証拠は強くなるだろう。後から親子同士の喧嘩と弁明されようと暴力を振るったことには変わりないのだから。


 それに、今私が興奮状態のあの男を止めに入れば間違いなく、私にも拳が飛んでくる。

 とにかく、事が終わるまでは何とも言えない。

 

 

 

 

 

 

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