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具体性の中華街

 数学に取り組んでいた。問題への没頭から晴れて首の筋を伸ばすさいに、そばにある窓の景色が視界に、茶色とオレンジ色を内に照らす旧製電気看板の明かりが、無数に灯って、仕事終わりの腹をすかせた人込みに、活気の影を当て嵌めていた。明るすぎないあの光の色が、一日の体の疲れを肯定してくれる。多少不潔の混じった店員の態度や飯のてかりが、かえって見て回る人の食欲を刺激する。日中の疲労を軸にして活気の影が行き交う。群衆の影と空腹の人々が立場を入れ替えながら闊歩する。それらの幻を引き起こす旧製電気看板。僕は数学のノートに目を戻す。計算式、方程式、端に残したメモ程度の発想。ときどき数学を信じられなくなるときがある。白背景のページにシャーペンの黒文字が光るくらいで、たぶん僕にはまだ数学は抽象的すぎた。具体性の中華街に抱きしめられたかった。

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