自首
「というわけで、苫さん。お願いします」
「本当にトラブルに巻き込まれてくるとは思わなかったよ」
時刻は夜。汐たちは帰ってきた苫を捕まえて話を持ち込んだ。門限を過ぎてはいるが、ここは家の隣だからセーフだろう。
交番に行っても良かったが、逮捕された後どんな扱いを受けるかわからないので、法律に詳しそうな苫を頼ることにしたのだ。
「何がなんだかわからないけど、俺には逮捕権も弁護資格もないからね?」
「えー」
「えーって、俺、学生だよ?現行犯でもなければ逮捕権はない」
汐は言葉に詰まる。よく考えなくてもその通りなのだが、連れが誰一人止めないからいけると思ってしまった。
しかし、苫は一応話を聞いてくれるつもりらしく、ラウに向かって、
「ラウ=ユウさん、ですよね。その、被害者は今どこに?」
至極当然の質問をする。
そういえば、そんな基本的な質問も今思い出した。考えてみれば、さっきからなんだかおかしいような気がする。
しかしその質問に、
「わからない」
ラウはそう答える。
そうだ。そもそも―。
「ラウさんは、誰を殺したんですか?」
汐は、今日初めて聞く質問をした。
答えは、
「わからない」