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別れ

その後、坂木家の姉妹たちは元通りの日常に戻った。

セリオンが助けてくれたことを、坂木家の姉妹たちは知っていた。

彼女たちはセリオンに感謝した。

セリオンは一人でいることが多くなった。

自分はいったい何をしているのか……

この世界に来たのはなぜか? 

エーリュシオンに戻りたい、妻のエスカローネに会いたいと思うようになった。

ある日の休日……

セリオンが出てきた本を冴子が触ると、本が光出した。

「きゃあああああ!?」

「冴子、どうした!?」

「冴子、なにしたの!?」

「冴子?」

「冴子、あんたまた何かやらかしたんじゃないでしょうね?」

「冴子、どうしたの?」

セリオンと坂木家の姉妹たちがみな書斎にやって来た。

「本が光っている? これはゲートか。エーリュシオンへのゲートだ」

「え? セリオンさん、どういうこと?」

冴子が呆然として聞き返した。

「みんな、今までありがとう。俺は元の世界に戻らなくてはならない。いろいろと世話になった。みんなのことは決して忘れない」

「そんな……やっと心がうちとけたのに……ねえ、セリオンさん、いかないで!」

冴子がセリオンの腕を握った。

「冴子! わがまま言うんじゃありません!」

「で、でも……」

セラが少し怒るような口調で言った。

「セリオンさん、私たちを助けてくれてありがとうございました。セリオンさんは思った通り、英雄でした。私たちはセリオンさんに助けられたことを一生忘れないでしょう。あちらの世界でもすこやかにお過ごしください」

「…………」

「? どうかされましたか・」

「セラはいつもそうだ。きれいな言葉を使って本心とは違うことを言う」

「それは……」

「別に俺は笑ったりはしない。セラの気持ちを教えてくれ」

「私は……セリオンさんと会えてよかったと思う。セリオンさんだけは苦手な男性ではなかったから。本当はずっと私たちのところにいてほしい。でも、それは私のわがままだから……う……う……」

セラは涙を流して泣き出した。

そんなセラを、セリオンは抱きしめた。

「ありがとう、セラ。そう言ってもらえてうれしいよ」

「あっ……」

セラは赤面した。

セラの体は固まった。

セリオンはセラから離れた。

「セリオン、これでもう会えなくなるのね。そう思うとさびしいわ。私はセリオンさんとの思い出を決して忘れないから」

「マリヤ……」

セリオンは今度はマリヤを抱きしめた。

「私のことも頭の片隅に入れておいてくれるならうれしいわ」

「安心しろ、マリヤのことも忘れない」

セリオンはマリヤから離れた。

「セリオンさん……私はあなたに謝らなければならないと思うの。少し、あなたにつらく当たったでしょう? 私は男性に不信感を持っていらい、ずっと男性にきつく当たってきたと思うわ。でもふしぎね。あなただけは不信を持てないの。きっとあなたには信仰があるからだと思うわ。日本人の男性には無信仰者が多いかしらね」

セリオンは綾女を抱きしめた。

綾女はセリオンに抱きついてきた。

まるで父にしがみつく少女のようだった。

「綾女はいい保母になる。パウル君とはいつか再会できるさ。綾女は繊細だから男性関係がうまくいかなかったんだと思う」

セリオンは綾女から離れた。

「セリオン君、私はまるであなたを生徒のように思っていたのよ。だって、セリオン君ったらチキュウのことをほとんど知らなかったんだもの。でもセリオン君は恐ろしいほどの早さで知識を吸収していたわね。もう会えないとなるとさびしくなるけど、向こうの世界でも頑張ってちょうだい」

セリオンは良子を抱きしめた。

「ありがとう、良子。きみといっしょに話したことはずっと忘れない。いい教師になってくれ」

そしてセリオンは良子から離れた。

「冴子……」

「嫌! 聞きたくない! 私はセリオンさんといっしょにいたい!」

「もう、冴子! わがままばかり言うんじゃありません!」

すぐにセラの説教が出た。

「だって、だって……まるで本当の兄弟姉妹みたいになれたんだよ? それなのに……私はセリオンさんにこの世界にいてほしい!」

セリオンは冴子を抱きしめた。

「冴子、気持ちは嬉しいが俺は元の世界でやるべきことがある。この世界に俺が召喚されたのは俺にザッハークを倒させるためだったんだろう。もう俺は帰らねばならない。坂木家の姉妹たちとの絆があるように、向こう側の世界にも絆があるんだ」

「……わかった。最後に名ちゃったけど私はセリオンお兄ちゃんと会えてよかった。お兄ちゃんと会えて私は声優として一歩上にあがったと思うんだ」

「冴子……冴子には頼りっぱなしだったな。冴子は声優の道……厳しい世界だろうがやりがいもあると思う。それを忘れないでくれ」

セリオンは冴子から離れた。

そして全員を見わたして。

「じゃあ、みんな。これでお別れだ。俺は自分のいるべき場所に帰る。今まで本当にありがとう。みんなと出会えて、みんなの信仰を知ることができた。その信仰を持ち続けてくれ」

坂木家の姉妹たちは一人の例外もなくみんな泣いていた。

これは今生の別れだったからだ。

「さようなら! 元気でな!」

セリオンはそう言うと、ゲートに跳びこんだ。

セリオンが本の中に消えると、本から光は消えた。


後日――

坂木家の人々はそれぞれの仕事に戻った。

セラは高校で教師をやり、マリヤはスーパーでレジなどをしていた。

綾女は保母としてピアノの演奏や、歌を歌ったり、良子は教師として生徒の指導に当たっていた。

冴子はオーディションに受かり主役やヒロイン、悪の親玉などを演じられるようになった。

けれどみんな心の中では、どんなに笑っても心に隙間ができていた。

それはすべてセリオンがいなくなったから。

彼女たちは考えた。

ひょっとしてセリオンは「神の使い」だったのではないかと……

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