第6話 エドウィン・エスティマ
「いわゆる自然術士は器用貧乏ってやつでね。回復も味方のサポートも一応はできるんだけど、どれも本職には及ばない」
エドが自嘲の笑みを浮かべる。
「しかも、タンク、アタッカー、アタッカー、ヒーラーの四人構成がダンジョンパーティーのトレンドの現状だと、瞬間的な回復力に乏しい持続系の回復魔法しか使えないぼくはまったくもってお呼びじゃないのさ」
「ふむ。それなら比較的に数の多い【司祭】や【聖職者】を誘ったほうが早いな」
「そうなんだよね。現状はヒーラー枠は一つ。本職の回復役でさえパーティーを組むのに苦労しているからね。ぼくなんてなおさらだよ……」
「俺の忍者と同じで致命的なデメリットがあるわけじゃないが、わざわざ誘うほど優れた性能でもないという評価か」
すると、猫耳お嬢様が「お気持ち分かります!」と金色の尻尾をぴんと垂直に伸ばして椅子から立ち上がる。
「【呪術師】もサポート寄りのジョブですから、現状だとパーティーに居場所がありません……かと言って忍者のジュノンさんのようにソロ性能も高くありませんし、正直、どうしたらいいのか途方に暮れてます……」
「だよね。後衛職は不遇の時代だよね」
「ええ。先が見えません……」
「だからぼくはさ……退学を受け入れ冒険者の夢を諦めて故郷のエルフの森に戻ろうかと考えていたんだよ……」
エドが髪と同じ色をしたエメラルドグリーンの目を寂しげに細める。
「え? 本当ですか?」
「うん。そんな時、ナナミ先生からこの集まりに誘われてね。せっかくだから最後に賭けてみようと思って参加したんだよ」
「ああ。あたしもだ。この最後のチャンスにすべてを賭けるつもりだ」
ラヴィは青い瞳に決意を光を宿している。
「みんなはどうかな? ぼくは今のところ参加して良かったと思ってる。だって落ちこぼれのぼくにもみんな優しいからね」
エドの言葉に皆が一斉に笑う。
それは傍から見れば落ちこぼれジョブ同士の傷の舐め合いに映るかもしれない。だが、これまでたくさん傷つき心がすっかり疲れ果てていた俺たちにとって、誰にも責められることのないこの時間はなにものにも代えがたかった。
「せっかく立っているのでそのまま自己紹介させてもらいます」
最後の一人である猫耳の彼女が慇懃無礼にお辞儀をする。
「わたくしはエルヴィアン出身の猫耳族、ルルーシャ・ルブランと申します。親しい者からはルルと呼ばれております。ジョブは【呪術師】です――」
ルルの身長は俺より少し低い。170cm前後と言ったところか。
手入れの行き届いた輝くような猫耳に金髪。きめの細かい雪肌。いかにも育ちが良さそうな言葉遣いと仕草。ルルはまさに絵にかいたようなお嬢様だった。