途切れた糸の追憶
プロローグです。短いです。
ギャグが好きな人は読まなくても大丈夫。
2022.7.25 題名を変更しました。
声が出なかった。
喉が痛い。
目が熱い。
でも何も出ては来なかった。
膝が笑う。
力が入らず今にも座り込んでしまいそうだ。
手を伸ばそうと持ち上げようとして、しかし震えるだけで終わった。
出来る事は全てやってきたつもりだ。
それなのに、その時が来たら何も出来ない己が憎い。
行かないでくれ。
その一言が言えない。言えるはずがなかった。
ーーその人は出会う前からその運命を受け入れてしまっていたから。
その人の言いたい事は判る。でも理解したくなかった。
己の存在理由をねじ曲げてまで成すべき事とは思えなかったから。
その人は背を向けた。
もう手は届かない。
力の入らないはずの拳に力を入れる。
プツリと皮が破れた感覚が『言え』と己に訴える。
ぐっと歯を噛み締めた後、去り行くあの人の姿を記憶に焼き付けるように見続ける。
酷く掠れた声がようやくこぼれ落ちた。
「ずっと……、 」
最後に見たものは、波打つ金色の髪と漆黒を纏う背、そして…… 剣の翼。
注:この話は基本ギャグ寄りです。そしてハッピーエンドの予定です。
こいつが殊勝なのは、あの人が関わる事くらいだろうなと思っています。
次から本編です。