青い空に白い入道雲、立ち昇る夏の日の恋。
なろうラジオ大賞2応募作品です。
通勤路脇の空き地、不法投棄されているブラウン管テレビ。それに腰掛けぼんやりとしている彼女に気付いたのは入道雲が立ち昇る盛夏。蝉時雨が騒ぎ降る。
声を掛けたくなったのは自転車で通過する時、目と目があったから。僕とは違う瞳の色に絡め取られた。
キィ、停めた。降りて進む。頭がジンジンとする。首を傾げている彼女。そのまま言葉が出た。
「どうしてここにいるの?」
「帰れないかなと思って」
瞳の色を煌めかし答える。
「私はここから出てきた」
座る古ぼけたソレに踵をコツンと当てる。嘘、ホント。言葉のやり取り。何故、知りたい?掛け合い。
「ココとは違う世界から来た。父様と母様が逃してくれた、出て来たら姿が変わった」
両手を広げ見る彼女。父様は?質問。
「父様は黒イ森の大魔王、白イ森の敵」
嘘、ホント。掛け合い。
「母様は白イ森の聖女、黒イ森の敵」
嘘、ホント。繰り返す。
「ずっと戦っていた仲悪い人達、沢山血が流れる、父様も母様もそれ嫌い。二人心が重なった」
聞きたい?話して。問う願う。
「恋に落ちたって聞いた。私が産まれた。人達、父様と母様に私を殺せと言った、産まれてきてはイケナイ存在」
空を見上げる彼女。金茶の髪が揺れる。
「父様は母様に、母様は父様に騙されたと人は言う。私の姿形が違ってたから」
知りたい?出来れば。聞く頼む。
「伝説のドラゴンという存在、それは神の姿と同じ。私は二親の血を引きソレになった、大きな力は破滅を産むから殺せ」
悲しい。うん、そうだね。同意。
「母様、父様は私を逃がす事にした。呪いの子を寄越せと押し寄せる中、法衣と王笏に込められた力を注ぎ込み空間に穴を開けた、多分アノ世界は壊れた」
私のせい。違うと思う。否定。
「黒い穴に私は落ちた。怖くて羽を動かした。明るい方に行けと父様、生きなさいと母様の声、戦う事が好きな人達が怒ってる声、ゴチャゴチャした音と悲鳴」
聴こえた。怖かった?質問。
「怖かった。進んで目の前に四角い窓があったから出て来た。ココは違う世界」
朱金の瞳が僕を見つめる。
僕は彼女に手を差し伸べる。
「生きてもいい?」
彼女が問いかけた。
「うん」
僕は答えた。
青い空白い入道雲、退屈な日々の色変わる。
僕達の物語がここから始まる。