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2 妖怪の街

「ウカは狐なんだよな」


 ウカはこくりと頷く。


 これを聞いたのも狐と不気味な目をしたお稲荷様が関わりがないとは思えなかったからだ。


「お稲荷様とは関係あるのか?」


 ウカは悪戯っぽく笑うとお稲荷様を指さした。


「私がお稲荷様だよ」


「じゃあ、ウカって神様なの!?」


「そもそもお稲荷は神ではないよ」


 初めて知った。お稲荷様というのは神様ではなく、神様に仕える狐らしい。ウカという名前もその神様が由来らしい。


「じゃあさ、お稲荷様はもう一匹いるからウカみたいな子がもう1人いるってこと?」


「そうだ。私の弟のミケっていう奴だ」


 ミケか。猫みたいな名前をしているな。この名前も神様が由来なのだろう。


「それが何だ?」


「単純な興味だよ。そうだ。あと街を案内してほしいんだ」


 やはり異世界ならば街だろう。普通は西洋チックだが、この異世界は日本。ウカも城とか言っていたし、本場の長屋とか城を見れるはずだ。妖怪たちも沢山見れるはず。


「すまない。今は無理だ」


「どうしてだ?」


「私は日が暮れる前にここに戻ってこなくてはならない」


 呪いか何かだろうか。ウカは下を俯いている。あまり深掘りすべきではないのだろう。


「わかったよ。じゃあ明日に行こ......ぶげっ!?」


 後ろから思い切り何かからタックルをかまされた。


「ミケ。帰ってきたのね」


 後ろを振り向くと同じように金髪で袴を着た男の子がちょこんと立っている。この子がミケのようだ。


「お前人間だなっ!珍しいなっ!」


「いたたた。君がミケか」


 ミケは俺が名前を知っていたことに驚いている。


「なんでお前オレの名前を知っているんだっ!」


「お前のねーちゃんから聞いたんだよ」


 ミケはウカの方に勢いよく視線を向ける。ウカは目を逸らした。ウカとしては絡まれたくないらしい。


「なぁウカ。こいつのお姉ちゃんなんだからさ。面倒くさがるなよ」


 ウカからため息が聞こえた。


「こいつの名前は春画太郎。覚えてあげて」


「えぇ!?いや、違う!違う!」


 なんで奴だ。顔と名前が一致してしまえばそれがその人にとって相手の名前になるんだ。それにミケは子供だから本当にその名前で認識してしまう。


「違う!俺の名前は宮野健太郎だ。間違っても春画太郎ではない!」


「よろしく!春画太郎!」


 あっ。寝よ。


「健太郎。何処に行くの?」


「今更普通に呼ばれても......。寝るんだよ。もう。辛い」


「それならこの蔵がいい。お主はまだ外を知らないだろう?」


 ウカが賽銭箱の奥の蔵を指差す。扉は相当埃を被っている。開けると神の像やよくわからない木造の物が無造作に置かれている。蜘蛛の巣も少し張られていて、お世辞にも綺麗とは言えない状態だった。


「これは酷いな」


「まぁ、ほったらかしだからな。普通は掃除とかするんだけど、面倒くさくて」


 いや、駄目だろ。これじゃあ家主がゴミ屋敷に住んでいるのに家政婦は何もしないみたいな状態だ。


「俺が掃除してやるよ。自分が寝るところだし。手伝ってくれ」


 ウカは凄く嫌そうな顔をしている。ミケは「任せろっ!」と張り切っているのに。


「頼むよ。2人でできる大きさじゃない」


「なんで私が......」


 元々お前の仕事だろとツッコミたくなる。


「頼む」「頼むっ!」


 ウカが呆れたようにため息をつく。


「仕方がないなぁ」

 

 まぁ、お前の仕事なんだけどな。


          ❇︎


 街はかなり賑わっていた。雰囲気はそのまま昔の街を体験できる施設だが、違う部分がちょくちょく出てくる。


 例えば飲食店が特殊だったり、歩く民が妖怪だったり。


「本当に妖怪の国なんだな」


「私たちにしてみれば人間が沢山歩いているのは気持ち悪い」


 慣れていないものは気持ちが悪いものだ。


 それにしても凄く視線を感じる。俺が人間だからだろう。いいものとは言えなかった。


「あれは人間?」「恐ろしいな」「近づいてはなりませんよ」


 こんなに畏怖され、異端視されるとは。なるほど。城下街に人間がいないのも納得できる。


「人間はどうしてこんなに嫌われているんだ?何がしたのか?」


「狐憑きをするからだっ!」


 ミケが自信満々にそう言った。


「狐憑きって憑依のことだよね」


「そうっ!狐が人間に憑依することっ!憑依されると人狼になっちゃうんだっ!」


 人狼か。RPGとかでは中ボスとかになりやすいキャラだな。


「そいつらは妖怪を喰うんだ。人間にしか憑依しないしね。だから恐れられている。」


 人間を妖怪が食べるとかはよく聞くが、人間が妖怪を食べるとは。この世界では人間が退治される側ということか。


 俺が視線に晒されている中、何やら妖怪たちが集まっていた。


「あれは何だ?」


 奉行所のような格好をした妖怪が紙を民衆に見せつけている。


「最近起きた狐憑き事件ね。私も詳しくは知らない」


 聞いてみると侍を既に10人以上殺した凶悪な人狼のようで奉行所も手を焼いているという。


「この人狼の名はシュンザ!侍殺しのシュンザであーる」


 このシュンザとかいう人狼を倒せれば嫌な視線を向けられなくて済むのではないか?


「なぁウカ。ミケ。シュンザを俺たちで倒そう」

 

2話目です。

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