表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕達、出来損ないです。  作者: 椿の葉
7/8

魔導砲 マギー=ルカ

……自分・・()車椅子を押して、自分で(・・・)机の前に止める。

うん。これがこんなに特別な事だったなんて思わなかったなあ。

今日の朝ご飯は黒いパンとキノコのスープだ。

昨日も、一昨日も、その前も、その前の前も黒いパンとキノコのスープだった。

朝は柔らかい白いパンに牛乳って言う王道があるのに。


『……固い』


黒いパンも、スープのキノコも固い。

婦長さん曰く、栄養価と内在魔素値が高いから食べた方が良いらしいけど……

固いからね。柔らかく焼いたらどうなんだろう。

固すぎて、ヴィルに切って貰わないと食べられない。

これじゃあ赤ん坊だよ……


「そう思われても仕方ないかと思います。ですが、スチを10個食べれば、潜在値レベルが1上がるのです。固いですし、材料費が嵩みますし、作るのも難しいですし……味は悪く無いのですが。皆さまの為にも、食べて下さいね。残されては、こちらが処理に困りますから」


このパン、名前をスチって言うらしい。

いや、名前は良いんだけど。

一つ食べると潜在値レベルが十分の1上がるって言うのも別に良いんだけど。

うん。わざわざ高くて作りにくい物を出してくれてるのも良いんだけど。

でも……


『……でも、噛めない固さって固すぎじゃない?』

「それを言われては、まあ。否めません。ですが……スチはこうやってパンに浸して食べるのですよ」

『スープに?』


……確かに、なんだかキノコがパスタみたいになって美味しい。

しょっぱい感じの、野菜ゴロゴロのキノコスープ。

ミネストローネって言うらしい。


「ええ。美味しいですよ」


……確かに美味しい。

パサパサが無くなったから、大分嬉しい。


『ありがとう、婦長さん』

「いえ。ああ、スチの話をする為に来た訳では無いのです。イーヴィルさんに言われて来たのでした」


ヴィルに……?

あ、そうか。

新しくコピーしたスキルを試さないと。


『僕のスキルの中に『能力転写』って言うのがあったの。それで、ヴィルのスキルをコピーしたんだけど……成功したか分からないから、婦長さんのスキルを見せてくれないかなって』

「……私のスキルを、ですか。イーヴィルさんのスキルをコピーしたと言う事は、『能力鑑定』を使う訳ですね?」


うお、バレた。

でも、ついでに婦長さんのスキルをコピーしたいから……半分しか合ってないね!

……言い訳がましいか。


『そんなところ! やっても良い?』

「勿論良いですよ。スキルの活用は義務ですから」


義務……?

いや、それより。

『能力鑑定』さん、婦長さんの能力スキルを教えて!



-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------


収束光線ラスターカノン


法則収束___物理法則、物理魔法法則を収束し、攻撃へと転用する。

       熟練度によっては精霊魔法法則なども収束可能。


武具付与___物理法則、物理魔法法則を収束し、剣などの武具に付与エンチャントする。

       熟練度によっては精霊魔法法則なども付与可能。


魔道具化___起こしたい事象を想像、それを直接 魔法陣へと収束する。

       収束したものを刻んだ物質を魔道具マジックエンチャントに変質させる。


空間収束___指定された空間内にある物質及び魔法を収束し吸収する。

       生物を収束する場合には、睡眠、石化、卵などの状態である事が必要。


次元結界___周囲の空間を収束し、強固な結界を生成する。

       破るにはライトダーク以上の神話魔法Lv.10が必要。



-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------



……倒せるの?

ルーク船長が倒せない倒せない言ってた理由が分かった。

魔法を収束して吸収しちゃうからだね。

流石に同族相手に神話魔法を唱える訳にも行かないし。


『ありがとう、婦長さん!』

「っ、い、良いのですよ。それで……『能力転写』でしたか?」

『コピーしても良い?』


ヒトによっては切り札を渡す事になるからね。

“絶対に駄目!”って言うのが人間だから。

うん。ヒトはどうか分からないけど、居ない訳じゃ無いとも思うんだよね。


「良いですよ。ええ。むしろして下さい」

『やっぱり駄目だよね……って、え? 本当に良いの!?』


いや、なんか……うん。

秘密が鎧を着て歩いてるような雰囲気のヒトだから。

秘密主義と言うか、簡単に手の内を曝け出す事はしなさそうだったんだよね。

何を考えてるのかも分かんないし。

まあ……良いヒトなんだけどね?


『ありがとう!』

「いえいえ。こちらがお礼を言いたいくらいです」

『……え?』


いや、何で?

自分のスキルをコピーされて嬉しがるヒトってそんなに居ないよね?

いや、居るけど。自分を知ってくれ、とか。みんな便利になってくれ、とか。

そう言う……何、ボランティア精神みたいなのを持ってるヒトが思う事だよね。

あ、違うよ?

何も、婦長さんを貶してる訳じゃ無いからね?

ただ、婦長さんを動かすには利益が必要だろうなあ、って思って……


「あ、ああ……そう。『能力転写』と言うスキルは珍しいですから、体感出来る事は私にとって良い機会です。よってお礼をしなければ、と」

『ああ、そう言う事か! じゃあ、やるよ?』


なら、しょうがないね。

スキルコレクションとかしてる人間がいてもおかしく無いもん。

ヒトの趣味に突っ込んじゃいけない。

ヴィルが言ってたからね!


盟友契約トモノチギリ』さん、僕に『収束光線ラスターカノン』を下さい!



「っ!? こ、これが……ええ、ええ! 流石はアルルさんですね!」

『うーん……獲得出来た感じが相変わらずしないんだよね。まあ、慣れるしか無いか』


オーバーリアクションしてくれるレベルで向こうは分かってくれるのに、僕は何も分かんない。

うーん……戦闘中とかにコピー出来るぐらい、相手に気づかれないようにしたいな。


『ありがとう、婦長さん!』

「ええ。他に出来る事があるなら何でも申し付けて下さい。それと、私の名前はマギー=ルカです。マギーと呼んでください」


あ、そうだよね。

婦長さんにも名前はあるもん。

僕も人形ドールって呼ばれ続けたらキレるから。

そりゃそうか。うん。自然の摂理って奴だね。


『……うん! ありがとう、まぎーさん!』


今までのごめんねを込めて、出来るだけ笑顔で。

うん。これなら許して……


マギーさんが倒れた。

え、ちょっと待って。


『なんで!?』




ーーー




丁度周りに居た失物ウセモノ達は思った。


「「「「「キュン死した!!」」」」」


と。

マギーさん(婦長さん)は、アルルファンクラブ第1号になる予定です。

ええ。黒m((殴

何でもないです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ