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僕達、出来損ないです。  作者: 椿の葉
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能力の使い方

確か、今日はヴィルに能力スキルの使い方を教えて貰うはず。

ルーク船長はそっちよりも魔法の方が極まってるからなあ。多分、能力スキルも使えるだろうけど。

まあ、午後はいつも通り魔法を教えて貰うから急がないとね。

でも……


ヴィルは『部屋に来い』って言ってたのに、場所が分からないよ!



いや、なんとなくは分かるんだよ?

体が上手く使えないヒトは一階で、魔力量が多過ぎるヒトは爆発しても良いように強化増設された五階。

二〜四階は普通のヒトが使うらしい。

僕は勿論一階だけど、ヴィルは二〜五階のどれかだろうなあ。


……いや、しらみつぶしに見ても良いんだけどね?

ドアに掛かったネームプレートが見えないんだよ。座ってるから。車椅子に。

あ、ちなみに自分で動かせるようになったよ。階段は無理だけど。

でも、昇降用転移魔法陣があるから心配は要らないよ!


…そういう話をしてるんじゃ無いや。

ヴィルー! どこー! ムキムキー!


「……あの、どうかされたんですか? 難しい目をなさってますけど」

『うわあっ』


いきなり目の前に出て来たのは、『転移旅行トラベラー』の特殊能力ユニークスキル持ちのヒト。

桜白銀色プラチナピンクの髪に燃えるように真っ赤な瞳で、怖そうだけど優しい顔立ちのヒト。

名前は確か……


『テラ、さん?』

「ああ、覚えていてくれたのですか。てっきり忘れられていたかと……」


うん。少し忘れてたよ。ごめんね。

でも、どうしてここにいるんだろう?

いつもは会長さん達とお茶会してるって聞いてたんだけどな。


『テラさん、なんでここにいるの?』

「……私の事はテラと呼んで下さい。今はもう、“元”テラシリーズですから」


……テラシリーズは確か、一つ買うのに金貨が少なくとも千枚は飛ぶとか言う超高級ティーセットの事だ。

体の小さい妖精だから作れる、細かい装飾が貴族や王族に大人気だ。もっと高いシリーズもあるけど。

一回だけ見たけど、あれは妖精じゃ無いと作れないね。

ちなみに、テラはこの国、光王国の光王に献上されたモノだったらしい。

でも、どっかの貴族が間違えて蓋を割ったせいでここに居るんだって聞いたよ。

……その貴族、殺されててもおかしく無いよね。なんで割るような状況になったんだろ。


『……ただのティーポットじゃあ金貨千枚はしないよ』

「そう、ですか? ……いや、そう言う話をしに来た訳ではありませんでしたね。何かお探しで?」


あ、そうだった。

早くイーヴィルの所に行かないと怒られちゃう。


『こんな事テラに頼んで良いのか分からないけど……ヴィルの部屋が分からないの』

「いえ、良いのですよ。お気になさらず。さて、イーヴィルさんの部屋、でしたね……」


ああ、凄いなあ。

僕だったらこんなに優しくできるか分からないからね。

でも、テラは本当に凄いからなあ。

いいな。僕もこれくらい良いヒトになりたいな。


「イーヴィルさんの部屋は、私では案内出来ませんので。フレッシェートさんを呼びましょうか」

『フレッシェート……さん? 誰、そのヒト』


自己紹介の時に、そんな名前の長いヒトは居なかったはず。

少なくとも、ヴィルが一番長かったね。

全員覚えられる程度で済んでるのが嬉しい、って思った記憶があるもん。


「ああ、貴方が知っている邪樹の加護を受けた方はまだイーヴィルさんだけでしたか。フレッシェートさんは貴方と同じ人形ドールですよ……気が合うかは別ですが」

『へえ。でも、フレッシェートさんだから連れてける……ってどう言う事?』


記憶力がえげつないとか、僕を持ち上げて部屋の前まで行けるとか……

いや、記憶力はあってもつれてけるには繋がらないね。


「彼女は一度行った場所の事を誰よりも知る事の出来る、『森羅万象アンダーザ・サン』と言う特殊能力ユニークスキルを持っていますから、全員の部屋の位置も分かるのです」


え、何それ欲しい!

僕、能力転写スキルコピーを持ってるからなあ。『盟友契約トモノチギリ』ってやつで。

使い方はまだ分かんないけど、便利だろうなあ。

テラの『転移旅行トラベラー』も便利だろうし。みんなのを片端からコピーしたいなあ。

いや、そうじゃなくて。

フレッシェートさんの能力スキルは特に凄いよね。

一度でも敵の陣地に入れれば、作戦とか筒抜けなんでしょ?

もう、敵に回したら終わりだよね。

コピーしたい。


『へ、へえ……僕なんかより100倍ぐらい凄いや。じゃあ、フレッシェートさんに聞けば部屋の場所も分かるの?』

「ええ、もちろんにございます。では、呼んでまいりますね」


あ、消えた。

やっぱり、テラは強そうだなあ……ヴィルにも勝てそう。

神出鬼没、密室殺害の犯人は何処に!

……いや、やらなそうだな。テラさんに限って有り得ないもん。

まあ、自分を壊した貴族の事なら殺しそうだけどね。

正当な権利だあ!


「……」

「連れてまいりましたよ、アルルさん」


色黒で、真っ白な髪の毛の可愛い子。

大人しそうで良いなあ。

テラと仲良さげだね。うん。良き良き。


『あ、うん。早かったね……って、アルル?」


僕の名前は誰も知らないはずだし、僕も知らない。

なんで分かるの……?

でも、誰もアルルが僕の名前だなんて言ってないし……

何で僕の名前って思ったんだろう。


「ふふ、ご冗談がお上手で。白銀の魔法板(ステータスプレート)に表記してあったのを見ておりますからね」

『……あ! 確かに、アルルなんとかって書いてあったね。僕の名前、アルルかあ……ありがとう』


馴染むなあ。

僕、違和感が全くない。

名前が二つあったり、転生者とかじゃなくてよかった。

めんどくさいもん。記憶が、とか魂が、とか。宗教系のヒトが鬱陶しいらしいから。

……でも、なんかそう言うのも良いよね。面白そうだし。


「フレッシェートさんのおかげですから、礼ならば彼女に」

「ああ、私がフレッシェートよ。ごきげんよう」

『ご、ごきげん……よう?』


あ、分かった。

ここの保護組合本部まで運ばれるのは金持ちの失物ウセモノだって分かってるからね。

どこかのお嬢様が人形相手にカーテシーの練習とか

ティーパーティのままごととかやってたんでしょ、多分。予想。


「ふふ。無理されずとも。じゃあ、行きましょうか。テラ、黒塔の5階まで送ってくださる?」

「ええ、良いですよ。フレッシェートさん」


あー……分かった。

テラは魔力が無いから昇降用転移魔法陣を動かせないし、階段は登れない。

まあ、歩けるんだけどね。普通に。

でも、5階までとなるとちょっと変わってくるのか。

それに、転移は自分だけ、他人だけは出来るけど自分と他、って言うのは出来なかったんだ。

よーく分かった。

しかも、黒塔なんて邪樹の加護を受けてるヒトの部屋がある方だもんね。

テラが登れるはずないんだ。


『ありがとう!』




ーーー



『……ここかあ、ヴィルの部屋』

「黒塔なんて用は無いでしょう? あなたは白塔なのですから、知らなくても当然です」


……嫌われてる気がする。

さっきのテラとの会話もなんか、ライバルとライバルみたいな会話だったもんなあ。

目がね、うん。怖かったよ。

どんだけ白塔(聖樹側)を毛嫌いしてるんだろう。


『ありがとう、また今度会うかも知れないから……よろしくね』

「……ええ。そのときは」


達観してるなあ。

この世の全てを知るとそういう目になるのかな。

僕もいつかなれるかな、そういうヒトに。


「……気を付けて」



コンコンッ


「……あ、なんだ。律儀にノッカーなんて使って来るから誰何したくなったぜ。よし、始めるぞ?」

『うん。よろしくね!』


何が始まるんだろう。

なんか、怖いなあ。何されるんだろう。

……いや、イーヴィルが悪いムキムキじゃ無い事は分かってるんだよ。

分かってるんだけど……ムキムキだからさ。


「車イスはそこにでも止めてくれ。お前が座れるようなソファは無いもんでな。あ、クッションならあるぞ。使うか?」

『うーん、大丈夫。そこまでしなくても良いよ』


この部屋、広いなあ。

流石に魔力量が多いヒトの部屋は違うや。

その上に邪樹の加護なんかがあったら、魔力なんて爆発してんじゃ無いのかな?


「そうか。じゃあ、まずは俺のステータスプレートを見ろ」

『え? どこにも……あ、ごめん。上過ぎて届かない』


棚の上にあったら届かないの分かるよね?

嫌がらせなの……かな?

脳筋の考えは分かんないや。

……ごめん。悪口じゃ無いんだよ。


「あ、すまん。いつものとこに置いといたらな……じゃあ、見ろ」


その、赤黒いオーラを纏った白銀の魔法板(ステータスプレート)を見ると……



----------------------------------------------------------------------------------------------------


個体名 :イーヴィル

個体番号:5V2M-F30S-294D

種族  :失物族ウセモノ武器(ウェポン)種]

称号  :邪なる者、光を切り裂く者

加護  :邪樹の加護

潜在値 :32

使用魔法:〈邪導之書グリモワール

極限魔法:ファイアブレイズダークヴァイス

固有能力:『魔法適正マジカリスト』詠唱破棄・魔法耐性・詠唱補正・修得補正・物理耐性(詠唱時)

個体能力:『聖破願叶ヨコシマナルネガイ』単一成就・主人契約・心情鑑定・能力鑑定・技能鑑定

固有技能:『棒術』Lv.3『投擲術』Lv.4

個体技能:『聖斬』Lv.MAX

各種耐性:邪属性無効、聖属性耐性、下級五属性無効、上級五属性耐性、魔法無効

     物理耐性、精神攻撃無効、状態異常耐性


----------------------------------------------------------------------------------------------------



へ、へえ。

いや、見ても良く分かんない。

強いて言えば、使用魔法の〈邪導之書グリモワール〉が気になるくらいかな。

たまには良いよね、そう言うのも。


『耐性が多いんだね、ヴィルは』

「まあ……ありがとな。でも、こんぐらい無いと剣なんてやってられねえぞ?

毒を塗られるなんて日常茶飯事だからな」

『!?』


いや……よく考えて見たらまあ、そうだろうな。

剣に毒を塗って戦うとか、そういうのは少なくないからね。

邪道だーって言われるけど、邪樹の加護を受けてるから別に良いのかな?

使う人間も邪樹の加護を受けてるんだろうし。


「じゃあ、最初に。お前のステータスプレート見たけどよ……片端から『能力鑑定』してったけどな、分からないのが多すぎる。まともに分かったのは『盟友契約トモノチギリ』ぐらいだ。その中でも血絆契約と能力転写しか教えられねえな。あとは危険過ぎる。まあ、スキルってもんに慣れるまでは使うなってこった。分かったか?」


イーヴィル曰く、魔力共有と能力下腸は自分の力がなくなり過ぎて死ぬ可能性が高いらしい。

それと、他のスキルは鑑定の入り込む隙間が無かったっぽい。

何それ。守り硬すぎるって。

いや、自分で操れないから意味無いんだけどね?

うん。スキルさん、硬いってよ。スキルさんのせいだ!(責任転嫁)


『え、えっと……じゃあ、能力転写は使えるって事?』

「ああ、そうなるな。使いたいか?」

『うん! どうやるの?』


使えればだいぶ良いものだと思う。

森羅万象アンダーザ・サン』も使えそうだし、『旅行転移トラベラー』も便利だと思う。

他にも、ルークの『絶対零度アブソリュートゼロ』とかも。良いよね、あれ。

怖いけど。怒れば怒るほど周りが凍ってくんだもん。


「ええと……まずな、対象に触れる。どこでも良いが、素肌に触れるんだ」

『じゃあ、ヴィルで試してみる』

「おいおい……まあ、別に減るもんじゃ無いから良いけどよ。で、目を瞑って、欲しいスキルの名前を念じるんだ。俺のなら、『聖破願叶ヨコシマナルネガイ』をくれーってな」


うん、分かった。

ええと、肌に触れる。

手で良いよね。

……ゴツゴツしてるなあ。なんか、握りつぶされそう。うん、間違いなく出来るね。イーヴィルなら。

僕の手は木で出来てるからね。剣で出来ない道理が無いもん。

あ、違う。こういうやつじゃ無いね。今は。

えっと……下さい!

盟友契約トモノチギリ』さん、ヴィルの『聖破願叶ヨコシマナルネガイ』を下さいな!


「…うお。いや、今なんかスキルが分裂する感覚になったぞ。多分出来たんじゃないか?」

『え、出来たの? こっちは良く分かんないけど……』


うーん、どうやって証明しようかな。

自分じゃ分からないって事は、使えない可能性があるって事だから。

それだと困るからなあ。他のでも使えなかったら困るもん。


「ああ、そうだ。明日の朝試してみると良い。例えば、能力鑑定だと他の奴が持ってるスキルやらアビリティやらを見れるからな。婦長あたりでためしてみろ。楽しいぞ」

『楽しい……?』


あ、分かった。

あの目してる時のイーヴィルの言う事聞いたら痛い目に合うって僕知ってる。

うん。

人間よりも魔族よりも僕はイーヴィルが怖い。

でも、試すけどね!


あれ、それで?

どうなったんでしょうね。

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