魔法トーク withルーク
今日も船長とおはなしです。
魔法の原理を船長に教えて貰った。
なんでも、原理が分からないと無詠唱は無理らしいからだ。
この世界の魔法は大きく分けて2種類あるらしい。意外と少ない。
まず、魔力を使って駆使する物理魔法。
最後、神力を借りて駆使する神話魔法。
他にも精霊魔法とか呪術魔法、妖術とかもあるけど置いておく。
人間は個体によって使えるか使えないか分かれるっぽいけど、僕達は違う。
全部使えないと顔見せできないレベルで魔法が得意な種族である。
その上、初級・中級・上級に分かれている。
初級がLv.1〜5、中級がLv.6〜9、上級がLv.10になっている。
何も分けなくて良いんじゃ無いかと思って居るけれど、その間には大きな壁があるらしい。
初級を極めて、無詠唱で出来るようになってから中級って流れだ。
ごく稀に中級から使えるヒトも居るらしいし、変な感じ。
そして、属性がある。
火・水・風・土・木。
これらが初めに使う事が出来るものらしい。適正とかで、得意不得意はあるっぽいけど。
それぞれ上級まで無詠唱で使えるようになると、属性が進化するらしい。
その時はなんか、《天の声》さんが教えてくれるらしい。誰それ。僕知らない。
炎・氷・嵐・地・生。
なんか、そんなに変わらない気がすると言ったら怒られた。
曰く、分かる人には分かるんだそうだ。
その全属性を開放すると、光・闇の2属性が使えるようになるらしい。
それも上級まで無詠唱で使えるようになると、光は聖が。闇は邪が開放される。
人間の短い人生じゃ行き着けない高みだ。
生まれつき聖が使える者は聖教会かなんかで保護されるらしい。差別だ!
因みに、船長は全部使える。怖い。
曰く、聖樹の加護があるんだそうだ。
聖樹が何か聞いてみた。
「聖樹も知らねーの?」
『知らなーい。教えて、船長!』
「…良いぞ。教えてやるよ。その代わりデザートくれよ?」
『えっ……ま、まあ……良いよ』
「よっしゃ! ……ゴホンッ、じゃ、じゃあ話すぞ。
___昔。神々がこの世界を創世した時の話。
神々は、世界を作る時に真っ二つに対立した。
魔獣のうろつく死魔郷にするか、神獣の佇む理想郷にするか。
そこで、半分を邪族が支配して、半分を人族が支配する世界に仕立て上げたのだ。
邪族側の神々は邪なる神で邪神、人族側の神々は聖なる神で聖神と呼ばれている。
何万何億掛かっても良いから、対立する二つの種族で生き残った方が勝ちと言うものだった。
ただ、神々が世界に干渉するにはルールが色々ありすぎて面倒らしい。
だから、最初から干渉できるものを創ったのだ。
邪神は邪樹を植え、人間を遠ざけた。聖神は聖樹を植え、邪族を遠ざけた。
それらの樹から種を落とし、邪樹からは闇樹が。聖樹から光樹が生まれた。
闇樹と光樹の丁度中間で、5属性の樹々が生まれた。
それらの樹々からも種が落ち、低級5属性が生まれた。
その全ての樹には実が成り、食べるとその魔法が無条件で扱えるようになると言う。
ただ、滅茶苦茶固い。食べる事の出来る者は極少数である。
だから、普通は食べずに魔実として武具や魔道具として使う。
「___ま、そういうことだ。分かったか?」
『あ、は、はい。分かったよ、ルーク船長!』
「ルークは要らない!」
『ありがとう、船長!』
「……そう言えば」
何か思い出したのかな?
いつもはおちゃらけてる可愛い顔なのに。
「お前さ、この前……魔実見て、“美味そう”っつってたよな」
『え? うん。言ったね』
「じゃあ……お前、食えんのかも知れねえ」
『え、どう言う事?』
いや、美味しそうだから食べられるって暴論すぎない?
確かに、火は林檎みたいなのだったから美味しそうだなあとは思ったけど。
だって、無理じゃん。うん。固すぎて普通は食べられないとも言ってたよね?
「いや、選ばれし者って言う概念がこっちにはあんだよ。固すぎて食えないし、加工も出来ないけど、ある特定の個体は、硬さを感じずに食えるんだってさ」
『……え?』
て事は、さっき教えてくれた“無条件での魔法の駆使”が出来るようになるかも……って事?
じゃあ、食べてみたい……かも。
いや、でも美味しくなかったら嫌だなあ。
こう言うのって、効果があればあるほど苦いし。漢方薬とかが最たる例だよね。
「あ、食わせる訳じゃ無いぞ? あれ、銀貨百枚分なんだから」
『ぎ、銀貨百枚!?』
この前、ヴィルにお金の仕組みを教えて貰ったから……
銅貨、銀貨、金貨の3つがあるらしい。
銅貨が10円、銀貨が1,000円、金貨が1,000,000円くらいっぽい。
なんでも、人間の中には一生金貨を見ないのも居るらしい。
まあ、そうだよね。日常で百万なんて何に使うんだって話だよ。
これよりも上があって、天貨って言うらしいけど、僕には関係無い……はず。
で、て事は10万円する林檎を気軽に食べようとしていたって感じか……って僕は馬鹿なの!?
……あれ、円って何? どこで知ったの?
そんな通貨、僕知らない筈なのに……
「ああ、そうか。お前は価値知らなかったもんな……しょうがねぇか」
『……でも、船長は食べなくても強いよね。うん』
「あはは、よく言われるな、それは。いつかお前に越されそうで怖えよ」
『絶対越すから、それまではボトルシップに戻っちゃだめだからね!』
「はんっ、最後の最後までお前は俺の子分だ! 越される道理が無いね!」
ーーー
あの人形は、今までの人形と違う力を沢山持っていた。
大体の人形は、『傀儡師』だったり『物真似』をするのが大半だ。
でも、あの人形はそんな事全くしない。
もしかしたら、人形の型が不完全……?
いや、そんな訳無いか。
何しろ、白銀の魔法板の説明もまだなんだから。
伝説を一纏めにした、“あの”存在とは違う筈だ。
「……いや、え……」
「ん? なにしてんの」
「……あれ、そんな訳……」
「だから! ぶつかるよ!」
「……っ……」
「階段から落ちる! ねえ! 戻ってきて! 車椅子止めて!」