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第8話 決闘開始!

 俺はミローネの話を聞いて、すぐ教室を飛び出し学院長室に向かった。

 ミローネの止める声が聞こえたが、俺は構わず向かった。


 学院を辞めるってどういう事だよ!


 賢者の夢を諦めるって事か? それとも別の学院に行くのか?

 後者ならまだいい、前者なら、あんなに必死に努力してたのに何でなんだ。


 とにかく俺は今すぐにでも、事情が聞きたいと思い。

 学院長室に向かって全力で走っていた。


 学院長室は編入試験を受けた時に、1度行ったので場所は知っていた。


 そして、学院長室の扉の前に着く。

 扉の前には、ちょうど部屋から出て来た所のアリスと、長身で金髪、年齢は40くらいの髭の生えた見知らぬ男がいた。


「アリス!」


 俺は大声でそう言う。

 アリスと男の2人が俺の方を向く。


 アリスは何だか諦めたような、虚ろな表情をしながら俺を見ていた。


「……ルド」

「誰だ、貴様」


 アリスはかすれるような小さい声で俺の名を呼び、男は、威圧的な態度でそう言ってきた。

 アリスの兄が来たという話だが、かなり年配に見える。この男がアリスの兄なのか?


「ふん、黒髪か」


 その男の目つきは、俺にとって見慣れている目つきだった。

 黒髪だと言う事を馬鹿にし、見下している者の目つきだ。


 少なくともこいつが、アリスやクルツ達とは違い、黒髪だと言うだけで、人を見下してくるような人種だと言う事は、判明した。


「アリス。何で退学するんだ。わけを話してくれないか」

「……それは……」

「待て。貴様は何なんだ?」


 アリスの兄と思われる男が、前に出てきてそう言った。


「俺は、ルド・アーネストです。あなたは?」

「私は、ハロルド・ル・ベリルフォーランだ。アリスの兄で公爵家ベリルフォーラン家の長男で、ベリルフォーラン家の当主である。それにしても、ルド・アーネスト? 聞かない名だな」


 やはりこの男がアリスの兄で間違いようだ。歳の離れた兄妹だが、貴族ならよくあることか。

 しかも当主なのか。この男ハロルドは、かなり権力を持つ人物であるみたいだ。


「平民なので、聞いたこと無いのは当然でしょう」

「ふん。平民ね。平民の黒髪なんて存在が魔法学院にいるとはな。所でその黒髪平民君は、私の妹とどういう関係で、何のようがあってここにきたのかね」

「俺はアリスの友達です。退学するという話を聞いて、理由を聞きにきました」

「友達? アリス、それは本当か?」


 ハロルドは後ろを見て、アリスに問いかけた。

 アリスは小さくコクリと頷いた。


「ふん、本当なのか。まあ、この学院で誰と友人になろうと、どうでもいい話だ。何故アリスが退学になるか聞きに来たと言ったな。簡単な話だ。アリスに縁談が来た。中々の良縁で、この出来損ないの相手には申し分ない相手だったので、二つ返事で了承した。婚姻するのならこの学院にはいられるなくなるから、すぐ退学させた。ちょうど学院の近くを通る予定があったから、私自ら伝えに来たと言うわけだ。分かったかね」

「こ、婚約って……じゃあアリスの賢者になるって夢はどうなるんですか」

「賢者? ははは、面白い冗談だ。この出来損ないになれるなんてありえんよ。この学院はレベルが低いから、その程度の事も分からん奴がいるみたいだな」


 ハロルドは笑いながらそう言った。

 アリスが悲しそうな顔をして目を伏せている。


 こいつ……アリスの事を出来損ないと何度も言いやがって……


「アリスは、出来損ないじゃありませんよ」

「魔力量が低いものは出来損ないだ」

「アリスは誰よりも魔法を上手く使えます。それに魔力量だって最近上がって来ています!」

「それはアリスからも聞いたさ。増えたと言ってもギリギリ中級魔法が、使えるくらいの量だがな。たいして変わらんよその程度増えただけでは。魔力量が上がる事は奇跡と言われている。これ以上、上がることもあるまい」

「それは違います。魔力量は上げるほ……」

「ルド!」


 俺が思わず魔力量を上げる方法があると言おうとしたら、アリスに遮られた。

 そうか、アリスは魔力量が上がったという事は言ったが、上げる方法があるという事は、俺との約束を守って言わなかったのか。


「……私の事はもういいのです。全て了承済みですわ。ルドが心配する必要はございません」


 そんな事、言われても心配するに決まってるじゃないか。


「じゃあ、そういうことだ。もう会う事はないだろう、黒髪平民君」


 そう言って、ハロルドはアリスと共に立ち去ろうとする、アリスがちょうど俺の前を通り過ぎようとした時、俺はアリスに向かって、


「アリス! 君は賢者になるって言っただろ! 本当にこれでいいのか!」


 と言った。

 アリスは小さな声で、


「いいんですの……ごめんなさい、色々教えてもらったのに無駄になってしまって、ルドが私に教えた事は一生秘密にしてますわ」


 そう言った。


「嘘だ! いいわけないじゃないか。そんな、そんな暗い顔して。本当は諦めたくはないんだろ!? 何を言われたか知らないけどなぁ……そんな簡単に諦めちゃっていいわけないだろ! 誰よりも努力したって言ってたじゃないか!」

「…………」


 アリスは今度は何も言い返してこなかった。その目には涙が溜まっていた。

 俺の言葉は受け取ったのだろうが、アリスの考えは変わらなかったみたいだ。

 アリスは、ハロルドの後に付いていった。


 駄目だ。

 このままだと、本当に行ってしまう。

 アリスの事情は分からない。どう説得すればいい?

 …………


 俺は考えた末、1つ方法を思いつく。


「ハロルドさん!」

「……?」


 俺に呼び止められ、怪訝な表情を浮かべながら、ハロルドは振り向いた。


「俺と決闘してください」

「は?」

「俺が決闘して勝ったら、アリスの縁談を無かった事にして、学院を退学させるのもやめさせてください!」

「……君は何を言っているのかね」

「ル、ルド。何を言ってますの」


 前に持ちかけられた決闘を受けないのは、貴族の男にとっては恥だと、アリスが言っていた。

 条件付で決闘を持ちかけたが、どうなるだろうか。

 相手がよっぽど弱い相手なら、断られるかもしれないが、ハロルドは俺を思いっきり馬鹿にしてきた。

 黒髪を馬鹿にするのは、ある程度魔法を使える者が多い。

 ハロルドもそうである可能性が高いと俺は考えた。


「私は公爵家を継いでいなければ、賢者になっていただろうと、言われているほどの実力者だが、それは知っているのかね」


 思ったより実力者だったみたいだ。


「ハロルド兄様の言う事は真実ですわ。ルド。今すぐ決闘を取り下げなさい」

「いや、取り下げない。承知で決闘を申し込みます」


 俺の態度に、アリスは絶句しており、ハロルドは呆れているような目で見ていた。


「ふむ。君は縁談を無かった事にするという条件を私に突きつけてきたが、君からは何か差し出せるものがあるのかね」


 ……決闘に乗らないのは恥だとの話だが、条件付きの場合は話が違うのか?

 俺に差し出せるものなんて、あるのだろうか。

 前世の知識か? しかし、どうやって条件として出す? 最大魔力を増加させるポーションの作り方を知っているんです、と言っても一笑されるだけだろう。

 まずい思いつかない。


「逃げる気ですか?」


 口から出たのは安い挑発だった。

 乗ってくれるだろうか?


「ふん、安い挑発だな。君はよっぽど縁談を阻止したいみたいだな。アリスに好意を持っているのかどうか知らんが、身の程を知った方がいいと思うぞ?」

「受けるのか受けないのか。はっきりしてください」

「……ふむ。君は想像以上に愉快な愚か者のようだ。決闘を受けてもいいが、条件はそうだな……」


 決闘を受ける気みたいだ。

 うまく行ったか!?


「学院をやめ、私の家で召使いとして働きたまえ」

「召使い?」


 何故そのような条件を……?


「私はアリスの事を信用していなくてね。アリスの魔法への執念は異常だ。今回はだいぶ念を押したが、それでも、もしかしたら土壇場で逃げ出したり、縁談を台無しにするような事をするかもしれない。君はアリスの友達らしいから、手元に置いておけば、アリスも従わざるえなくなる」


 つまり俺は人質か。


「君から仕掛けて来た決闘に勝ち、君を学院からやめさせ召使いとしたのなら、私の名誉にも傷は付くまい。悪くない話ではあるな」


 ハロルドは1人で頷いていた。


 俺に負ける可能性など、100%あり得ないと思っているようだな。

 だから、決闘を受ける気になったんだろうがな。


「ちょっと待ってくださいまし! ルド! 決闘なんてやめなさい! 勝てるわけありませんわ! ハロルド兄様も、お忙しいのにこんな決闘をお受けにならなくても……」

「他者の決闘に口出しをするな愚か者。それと私は忙しくない。ちょうど1週間ほど暇だ。さて、黒髪平民君。私は君の決闘を受けよう。退学の手続きは済ませてしまったから一時的に取り消すとしよう。

 決闘は何処で行うか。この学院の実技練習場辺りでいいか。学院が終わり、誰も使わなくなった時間辺りに決闘を行うとしよう。それまで準備をしておきたまえ」


 ハロルドはそう言った後、学院長室に引き返して行った。






「どういうつもりですの!」


 アリスは俺に向かって大声で怒鳴ってきた。


「何であんな事を……いいって言いましたのに……負ければ、ルドもこの学院をやめなければならないのですのよ?」

「負けないさ」

「あなたはハロルド兄様の強さを分かっておりません! 無謀すぎますわ!」


 アリスは俺を睨みつけながらそう言った。


「私、こうなる事は元から覚悟していましたの。この学院に入れてもらったのも、我儘みたいなものだったのですわ。私もベリルフォーラン家として、役目を果たさなければいけません。今ならまだ決闘をやめることができますわ。あなたまで退学になる必要はありませんわ」

「1度申し込んだ決闘を自分からやめるなんて、できないし、それにさっきも言った通り、俺は負ける気は無い」


 相手は賢者並みに強いらしいが、俺には進んだ魔法の知識がある。

 勝てるはずだ。


「確かにあなたが、学院生のレベルを大きく超えた、優れた魔法使いなのは確かですわ。でもハロルド兄様には勝てませんわ」

「絶対に勝つ」

「無理ですわ! 聞き分けが悪いですわね! 本当にやめなさい! 私の事はもう放っておいてください!」

「アリス。本心を言ってくれ。こんな所で学院を辞めていいなんて思ってないんだろ?」

「それは……」

「君の夢が、こんな所で終わっていいはずないじゃないか」

「……」


 アリスは俯く。

 ポタポタと涙が床に落ちた。


「辞めたくないに決まっていますの。でも仕方ないですわ。ルドに迷惑はかけられませんから……」

「何度でも言うが、俺は負けない。前にも言ったが俺はアリスに惹かれて、手助けすることに決めたんだ。こんな所で君が賢者になる夢を諦めて欲しくない。だから、俺は絶対に決闘するし、絶対に勝ってみせる」


 俺は、アリスの両肩を掴みながらそう言った。

 俯いていたアリスは顔を上げ、俺の目を見つめてくる。


「……信じていいんですの?」

「ああ」

「……」


 その後、アリスは何も言わなかった。涙を拭い、肩に添えられた俺の手を握りしめた。




 ○




 俺は、アリスと一旦別れ、決闘の準備を始めていた。


 相手の実力は分からないが、前世の進んだ魔法の知識と使い方を知っている俺は、そうそう負けないはずだ。


 ただ実戦の前に、一応魔法の使い方や戦い方を確認しておいたほうがいいので、座学は今日はサボって、学院の裏にある、実技練習場みたいな場所で、確認をしていた。


 だいぶ魔法を使う感覚に慣れてきた。

 今の魔力で使える魔法は、きちんと使えこなせそうだ。

 ただ、やはり強力な魔法は現時点では、最大魔力不足で使えない。


 まあ、強力な魔法と言っても前世の時代の基準で強力な魔法は使えないだけで、現代の基準で強力と呼ばれている魔法は、普通に使えるがな。


 準備はこれくらいでいいか。

 後は勝つだけだ。


 そろそろ昼だし、昼飯を食いに行くか。

 食堂に向かい飯を食べた。


 食べている途中、クルツや他のクラスメイト達に事情を聞かれたが、ごまかしておいた。


 そして、学院が終わり、その時がやってきた。


 1つ予想外な事があった。

 どこかで、俺が決闘を挑んだ事がもれたのか、生徒達が実技練習場に集まってきているのである。

 100人くらいはいそうだ。


 何故、決闘する事がばれたのか。

 ハロルドが漏らしたか、もしくは偶然聞いていた者でもいたのか。

 とにかく俺は誰にも言っていない。


 少なくとも昼の時点では、知っているものはいなかったから、ハロルドが漏らした可能性が高いな。


 観客がいるのでは、全力を出すのは、まずいかもしれない。

 ……だがこの勝負は絶対に負けられない。本気を出さなければ勝てないのなら、俺も覚悟を決めて本気を出す事になるかもしれないがな。


 観客の中に混じってアリスがいた。

 アリスは不安そうな目で俺を見ている。

 俺は口を、絶対勝つ、と動かした。

 伝わったのかアリスは小さく頷いた。


 その直後、観衆のざわめきが、僅かに大きくなる。

 観客の視線が1点に集まっていた。


「逃げずに来たみたいだな」


 ハロルドがそういいながら、ゆっくりと歩いてきていた。


「ふん。観客がいるのか。別に構わんが、君は生徒達の前で無様をさらす事になるが、大丈夫か?」

「その言葉、そっくりそのまま返しますよ」

「……君は本当に私に勝てると思っているのかな? まあいい。現実と言うものを教えてやろう」

「……」


 明らかに俺を格下と侮っているような態度だ。

 侮ってくれたほうが、好都合ではある。


「さて、決闘を始める前に、改めて私に決闘を申し込みたまえ。申し込む際に賭けた物を一緒に言いたまえ」

「……俺、ルド・アーネストは、ハロルド・ル・ベリルフォーランに決闘を申し込みます。俺が勝った場合は、アリスの縁談を中止し、ここアルバレス魔法学院からの退学を取り消す事。俺が負けたら、アルバレス魔法学院を退学し、あなたの召使になります。受けますか?」


 俺が決闘の申し込みをした時、観客が一斉にざわめき始めた。


「まじで決闘を申し込みやがった」「馬鹿なのかあいつは」「縁談を中止にしたいんだ……」「負けたら退学になるのかよ。終わったなあいつ」「でもアーネスト君は結構強いぞ」「ベリルフォーラン公爵には、どう足掻いても勝てまい」


 などと、周りから声が聞こえる。


「受けよう」


 ハロルドが、決闘を受ける宣言をした。


 観客のざわめきがいっそう大きくなる中、決闘が始まった。






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