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第7話 突然の

 調合室の扉の前に到着した。

 扉には鍵がかかっている。


「言ったでしょ? 鍵がかかっているから、入れませんわよ」

「魔法で開ければいい」

「魔法で開けられる事の対策くらいしてるに決まっているんですの。学院生に開けることなどでき……」

「《錠よ開け》」


 俺は魔法を使った。

 ガチャリ。

 扉が開錠された。


「ええ!? 開きましたの!?」


 ベリルフォーランが驚愕する。


「せ、先生方達が、学院生に絶対開けられぬよう、魔法対策は厳重にしているはずなのに、開けられるなんて。あなた何者なんですの?」

「秘密。入るよ」

「あ、ちょっと! 開いたからって、中に入っていいわけではございませんわよ」


 口では止めているのだが、ベリルフォーランも入ってくる。


「さて、作るかー」

「私は止めましたからね。勝手に中に入るなんて不良生徒のやる事ですわよ」

「どうしても、作りたいものがあるんだよ」

「何ですのそれは」

「作ってからのお楽しみ。鍋はどこにあるかなー」


 俺は鍋を探して部屋を歩き回る。

 フラスコだとか、小瓶だとか色々置いてある。


 お、鍋発見。

 少し大きめの鍋を発見した。棚に置いてあったので取った。


 調合室には、調合台と呼ばれている台がある。

 その台の上に鍋を載せ、持ってきた材料を全て台に載せた。

 材料を見てベリルフォーランが、


「……何が出来るか、全く想像出来ませんわ」


 と言った。

 それはそうだろうな。


 魔力増加ポーションの作り方を確認する。

 と言っても複雑な手順はない。


 まず、水とエーテルを混ぜ、エーテル水を作り、その中に青濁石せいだくせきをいれる。

 そうすると青濁石からじわじわと青い液体が出てきて、エーテル水を青く染め上げる。

 エーテル水が真っ青になったら、細かく切りきざんだ《火の木》の葉を液体に投入してかき混ぜる。

 これで、完成だ。


 さて、まずは水とエーテルを鍋に入れてかき混ぜる。


 ちなみにエーテルは少し緑っぽい透明な液体だ。

 水と混ぜると緑っぽいのがほとんど消えて、透明な液体になる。


 俺は鍋にエーテルと水を入れ、台に元々置いてあったかき混ぜ棒で、かき混ぜた。


 エーテル水完成。

 次に青濁石をエーテル水の中に投入する。


「その石が1番、よく分からないですわね」


 横から見ていたベリルフォーランがそう言った。

 俺は気にせず青濁石を3つエーテル水の中に投入した。


 入れた瞬間は何も起こらないが、しばらく見ていると、エーテル水が青っぽく変色していく。


 ベリルフォーランは青っぽくなっていく液体を不思議そうな目で見ている。


 しばらく、見ていたら液体が真っ青になる。

 待っている間、手で切りきざんでいた火の木の葉を液体の中に投入。

 再びかき混ぜ棒で、かき混ぜる。


 色が紫色に変色していき、これで完成だ。


「出来た!」

「な、何ですのこれ……ひどい匂いがしますわよ」


 確かにちょっと臭い。

 正直まずそうだが、飲まなくてはいけない。


「これを飲んだら、最大魔力が増加するんだよ」

「へ〜、最大魔力が増加するんですか……最大魔力が増加!?」


 ベリルフォーランは、ぱっと、目を見開きながら、俺の方を向いてきた。


「そ、それは、本当ですの!?」

「本当だよ。ベリルフォーランさんを来るよう誘ったのは、魔力が少ないだろうから、飲んで欲しかったんだよ」

「そ、そうだったのですか……あれ? そう言えば何で私の魔力量が少ない事を知っているんですの? 誰か喋りでもしたんですの?」

「見てれば分かるよ」

「……なんかムカつきますわね」


 俺は近くにあったコップを持ってきて、それに出来立ての最大魔力増加ポーションを注いだ。


「はい、飲んでみて」


 俺はコップをベリルフォーランに渡した。

 彼女は一応コップを受け取った。

 その後、匂いを少し嗅いで顔をしかめ、


「あの……はっきり言って、飲みたくありませんわ。例えようのないひどい匂いがしますわ」

「俺もすげー匂いだと思うけど、最大魔力が増加するのはマジだから。飲んで見てくれ」

「……嘘だったら承知しませんよ」


 ベリルフォーランは恐る恐る飲んだ。

 ちょっと飲んだ所で、コップを勢いよく台の上に置き、口元を押さえた。

 吐き出しそうになるが、何とか堪え飲み込んだようだ。


「はぁはぁ……あなたなんて物を飲ませるんですの。危うく吐き出してしまう所でしたわ」

「だ、大丈夫?」

「大丈夫じゃ……あら?」

「どうした?」

「ま、魔力がほんの僅かですが増えていますわ! 本当だったのですか!」

「え? 分かるの?」


 自分が持つ魔力が増えたか増えていないかなんて、そんなに簡単に分かるもんじゃない。

 普通、魔力の量は魔法を使って調べる。

 だが、魔力に対する感受性が特別高い者は、自分の魔力の量を正確に把握できるという。

 感受性が高い者は、魔力の操り方がうまい為、魔法をうまく使える。

 ベリルフォーランは最大魔力量という問題さえ何とかすれば、本当に賢者になれるだけの才能があるかもしれない。


「非常にまずいですが、魔力が上がるのなら飲みますわ」


 と、言いベリルフォーランはコップを再び持ち、ゴクゴクと勢い良く飲んでいった。

 そして、飲み干してコップを台の上に置いた。


「うぅー……まず過ぎますわ。でも、一杯飲んで3割ほど、魔力が増加しましたわ……」


 ベリルフォーランの魔力の3割ってどのくらいか分からないけど、そこまで多くは無いだろうな。

 俺が作った魔力増加ポーションは正直粗悪なもので、これの改良版である魔力増加ポーションZという物があるらしい。


 魔力増加ポーションZは魔力増加量が上がり、味もうまくて飲みやすい。

 ただ、作り方は秘匿されており、前世のクラウドも、粗悪な物の作り方しか知らなかったみたいだ。


「何だか一杯飲んだら、微妙に気分が悪くなりましたわ。魔力が増えるけど、副作用とかありませんですわよね?」


 ベリルフォーランは、気分が悪そうな様子で、近くにあったイスに座った。


「副作用は無いと思うよ。増えた事で魔力酔いをしてるんだと思う。1日1杯が限度かな」

「そうですか。ところでこれはどこで知ったのです? 魔力を増やす方法は、父上が探して探して探し回っても、見つからなかったものですわ」

「……秘密。このポーションを飲ませた後で言うのもなんだけど、俺はこのポーションの存在をなるべく他の人には知られたくないんだ。だから秘密にしておいてくれないかな?」

「何故ですの? このポーションの作り方を発表すれば、大金が手に入るかもしれませんし、もしかしたら、貴族になれるかもしれませんわよ?」

「理由は言えない。ごめん。でも、秘密にして欲しいんだ」


 ベリルフォーランは、少し考えた後、一息ついて、


「……分かりましたわ。秘密にしておいて欲しい事を言いふらすほど、私は下劣な人間ではございませんわ」


 そう約束してくれた。


「しかし、なぜ秘密にしたいものを、私に作ってくれたのですか?」


 

 俺は少し迷ったが、昨日の姿を見ていたからと正直に理由を話した。


「それは私に同情したと言う事ですの? 魔力の少ない私に」


 ベリルフォーランは俺を睨みつけながら、そう言ってきた。

 少し誤解を招く説明をしてしまったようだ。


「そうじゃなくて、君の昨日の姿が……その何と言うか……魅力的に見えたものだからさ」

「み、魅力的!?」


 ベリルフォーランが顔を赤くする。

 今のでは、愛の告白みたいになってしまってないか?


「な、何をいっているのです。魅力的だなどと……」

「そ、そうじゃなくてね。えーと、凄く頑張ってて、何か偉いなーって。いや、うまく伝えられなくて、ごめんなんだけど」

「紛らわしい言い方をしないでくださいまし!」


 俺は焦りながら訂正し、彼女は顔を赤くして怒りながらそう言った。


「私のように魔力が少ないという弱点を持って賢者になっている人は1人もいませんの。だから人よりも2倍でも3倍4倍、努力しないと賢者になるなんて無理なんですわ。だから特別な偉い事ではございません。当たり前の事をやっているだけです」

「そんな事ないよ。とにかく俺は凄いと思った、偉いと思った、だから俺は君の助けになりたいと思ってこのポーションを君に飲ませてあげたいと思ったんだ。だからしばらく、休みの日は、ポーションを作るから、君に飲んで欲しいんだ。どうかな?」

「……」


 ベリルフォーランは、少し驚いた様な表情で俺を見てきた。


「……あなたが私の境遇に同情して、作ったわけではないと言うのは分かりましたわ。魔力が増えると言うのは私にとっても願っても無い話ですの。断る理由は無いですわ。むしろこちらから、お願いしなくてはならないくらいですわ」

「良かった。よろしくベリルフォーランさん」


 俺はそう言って、握手を求めた。

 だが、ベリルフォーランは手を取らずに、


「アリスでいいですわよ」


 そう言ってきた。


「じゃあ僕もルドでいいよ。よろしくなアリス」

「よろしくお願いしますわ。ルド」


 アリスは少し微笑みながらそう言い、握手に応じた。

 彼女の笑顔を初めてみた俺は、その可愛さにしばらく見惚れてしまった。


 少し長く握手をして、手を離した。


「今日はもう帰りますの?」

「あ、いや。俺も飲みたいから」

「ルドも魔力は少ないのですか?」

「少ないほうではないけど、魔力は多くあるに越した事はないから」


 俺はコップに掬って、魔力増加ポーションを飲む。

 ちなみにどのくらいまずいか、俺は知らない。

 味の記憶はどうやらないようだ。まずいと言う事は知っているのだが、どのくらいまずいかは、知らない。

 少し口に含んで。


 ブッー! と思いっきり吹き出した。


「あー! 何してますの! 汚いですわ!」

「まずい、まずい。アリスは良くこれ飲めたね」

「あなたが飲めと言ったのではないですか!」


 ごしごしと、近くにあった雑巾で拭く。ちょっとでも残すとまずいので念入りに拭く。

 この雑巾は証拠隠滅として燃やして、新しいの買ってこないとな……


「……飲みたくないんだけど」

「飲みなさい」


 アリスはコップを俺の口に押し付けてくる。


「分かった、飲むから。自分のペースで飲むから。うー……うえぇ……」


 少しずつ、少しずつ飲んでいく。


「ルド。あなたひどい顔してますわよ」

「仕方ないじゃん。まずー」


 何とか飲み干した。

 飲み干したら、体の奥が少し熱い感じがする。魔力が増えたからだろうか。

 すると、何か急激にだるくなって来た。

 あーきつい。


「気分悪くなってきた。ちょっとここで休憩してから、帰ろうか」

「そうしますか」


 俺とアリスは、少し休憩した後、後片付けをして、調合室を去った。






 それから、しばらく休みの日はポーション作りをした。

 平日はアリスに魔法を教えたりしていた。


「……ルドの魔法の知識と実力は何なんですの? 明らかに学院生のレベルを超えていますわ。最初あなたに張り合っていたのが、何だか馬鹿みたいですわ。あなたが何者か聞きたいですが、秘密なのでしょう?」

「うん。アリスにはいつか話すかもな」

「気長に待っていますわ」


 話したら信じて貰えるか分からないというか、頭大丈夫か疑われるかもしれないので、正直話すのには勇気がいるが、そのうちアリスには話そうと思った。


 1ヶ月ほど過ぎた。

 休日は週に2日。休日には毎回、魔力増加ポーションをアリスと2人で飲んだ。

 現時点でアリスの魔力は平均値に少し届かないくらいだが、最初よりはだいぶ増えた。


 そして、実技の授業。

 中級の攻撃魔法を練習する時間。


 アリスは授業で中級魔法を成功させた事は無かった。

 以前教えた《ハイスペル》をアリスは授業中使わなかった。

 魔力を増やせる方法があるのなら、そのうち普通に発動させられるようになるだろう。

 それなら《ハイスペル》を使わずに、普通に使う練習をした方がいいからだ。


 教えた意味なかったかもしれんな。

《ハイスペル》はあの時すぐ中級魔法を使えるようになってほしいと思って、教えたからいいんだけどね。


 それで、今日の中級魔法の授業。

 アリスが中級魔法を使う番になった。

 俺としてはそろそろ発動できるくらいにまで、魔力が増加したと見ている。


 今日使う中級魔法は、火属性の中級攻撃魔法、《フレイムショット》だ。

 大きな火の玉を作り出し、それを撃つ魔法。

 当たったら、火が弾け飛んで広範囲に攻撃できる。

 この魔法は危険なので、1人1人順番で使って行く事になっていた。

 その為、今日の授業は合同ではなく、1年2組だけだった。


 現在中級魔法を成功させているのは、俺1人。

 他の生徒の中にも、惜しいところまではいった生徒はいたが、成功させた生徒はいなかった。


「《火よ、燃やし尽くせ》!」


 アリスが呪文を唱えた瞬間。

 大きな火の玉が、的に向かって一直線で飛んでいき、的に直撃。その後、爆発し周囲に火が弾け飛んだ。


 成功だ。


 生徒達から歓声が上がる。


「……せ、成功しましたわ……」


 アリスは、しばらく信じられないといった表情をする。

 そして、


「成功しましたわー! ルドのおかげです!」


 嬉しそうにそう言いながら、俺の元に走ってきて、俺に抱きついてきた。


「ちょ、ア、アリス!」


 抱きつかれて俺は、思いっきりうろたえた。


 こ、こんな女の子と密着して……

 いい匂いと、それから胸の感触が伝わってきて……アリスって小柄だけど、意外に胸あるんだなぁ……


 一瞬、我を忘れそうな気分になったが、何とか持ちこたえる。

 周りを見てみると、生徒達が、抱きつく俺達を好奇の目で見ていた。


 アリスは生徒達の視線に気付き、慌てて俺から離れた。


「あの2人……」「まさか付き合って」「……平民と公爵家だぞ……」「いやでも、アーネスト君は将来、貴族に取り立てられるかも……」


 ひそひそと周りの生徒達が話し始める。


 めっちゃ恥ずかしい。

 アリスも顔を赤らめて下を向いていた。


 俺は恥ずかしかったが、言わなきゃいけないことを言っていないので、アリスに近づいて、


「おめでとう」


 と言った。

 アリスは顔を少し上げ、上目遣いで俺を見て、小さく頷いた。








 夜、男子寮。

 俺はクルツと共に夕飯を食べていた。


「ルドってベリルフォーランさんと、付き合ってるんだ」

「な……! ごほっごほっ!」


 いきなりクルツにそう言われて、俺は少しむせた。


「つ、付き合ってない」

「えー、今日抱き合ってたし。最近一緒にいる所とくに見かけるし、さらに名前で呼び合ってるでしょ」

「いや、うん、その。仲良くはなったと思うけど、付き合ってはいないよ」

「ほんとに~? 照れてるだけじゃないの?」

「ほんとだって」

「ふーん、そうなんだ。ルドはベリルフォーランさんと付き合いたいと思ってるの?」


 クルツに聞かれて、俺は返答に困る。

 付き合うか……どうだろうか。


「分からないけど。でも、俺とアリスとじゃ、身分が違いすぎるだろ」

「身分は関係ないよー。大事なのは気持ちでしょ気持ち! それにルドなら、身分差なんて自分の力でなんとかできるよ!」

「いや、でもなぁ……」


 俺はアリスの事をどう思ってるんだろうか?


 飯を食い終わり、自室に戻った後、部屋で悶々としながら考えていた。


 確かに俺は、アリスに惹かれているかもしれない。

 ただこれが恋愛感情かどうか。

 ミナの時、抱いていた気持ちとはまた違う気がする。


 俺はミナと別れたとき、忘れようと決意したが、1ヶ月程度ではまだ忘れられてない。

 そんな状態で、アリスに恋愛感情を抱くのは何だか不誠実のような気もする。


 うーん、恋愛経験皆無だからな俺。分からないな。

 もういいや、寝よう。

 俺はベットの中に入って眠りに付こうとするが、アリスに抱きつかれた感触を思い出して、中々眠りにつけなかった。


 後日、寝不足気味で学院に行った。


 教室の前の扉に立つと少し緊張してきた。

 何だかどんな顔してアリスに会えばいいか、分からなくなって。

 普通にしてればいいな、うん、普通に。


 俺は扉を開け教室に入った。


「あれ?」


 思わず呟いた。

 アリスが教室にいない。

 俺はだいたい時間ギリギリに教室に入るので、アリスは毎日のように、俺より先に教室にいるのだが、今日はいなかった。


 俺は病欠か? と思いながら自分の席に着く。ちょうどそのタイミングでミローネが教室に入ってきた。

 聞いてみよう。


「みなさん。おはようございます」


 ミローネの挨拶に応え、クラスメイト達がミローネに挨拶をする。俺も一緒に挨拶をした後、


「あの、アリスはどうしたんですか?」

「あ、アリスちゃんは……先ほどアリスちゃんのお兄さんが、学院にいらして」


 ミローネの表情が急に暗くなる。

 何かあったのか?


「ええ、それで急遽、学院を辞める事が決まったらしく、今は学院長室にいます……」



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