表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

閉じ込め症候群

作者: 秋草







ここは…?



「……。」


病室か?


俺は・・・そうだ。

外出中に急に頭痛がして、意識を失ったんだ。


「……!・………!」


「…。…………。」


ベッドの足元で、医者と看護師が何か話している。

恐らく倒れた後、病院に搬送されたんだろう。

そう思い、辺りを見回そうとして異変に気付く。


あれ?何かおかしいぞ?


ああ!全然体動かねぇ!

いったいどうなってんだ!?


手足どころか、首や口すらも動かない。


「ねえ、返事して!!」


………!!


枕元で泣いているのは、愛する妻。

彼女のすすり泣きの声が頭に響く。

しかし異常を伝えたくとも、声すら出せない。

完全に金縛りの状態だった。


マジやばいぞこれ。


恐怖と共に意識は急速に覚醒していき、他の声が聞こえるようになってきた。


「先生…本当に、本当に駄目なんですか?」


「残念ながら、回復の見込みはありません。」


え?

俺、ずっとこのままなの?


「でも!」

「動かなくても!ちゃんと目を開けてるじゃない!」

「もしかしたら意識が戻るんじゃ…!」


「奥さん。」

「彼は脳死による深昏睡です。目は開けていても意識はありませんよ。」

「こちらの呼びかけに応じないし、痛み刺激への反応もありませんでした。」

「眼球運動も見られません。いわゆる植物状態に陥っています。」


待て。待て待て待て待て!!俺、今意識あるって!!

お前らのこと見えてるし、声も聞こえてるよ!

何だよ脳死って。意識あるじゃん!!


心の中で叫ぶが、相変わらず指一本動かない。

全くこちらのことが伝わらないことに、怒りを覚えてくる。


「辛うじて自発呼吸を維持していますが、かなり弱っています。いずれ心肺機能が低下して…」

「もう意識が戻ることはありません。彼の脳は、既に死んでいます。」


彼女達には、俺の中身が全く見えていないようだ。


おい!!アンタ医者だろ!きちんと調べろ!!

勝手に脳死って決めつけてんじゃねえよ!

検査したのかよ!!


「そん…な……うぅっ」


違う!俺は生きてる!!意識もある!!気付いてくれ!


「……。」

「このままでは長く持ちません。」


・・・え?俺死ぬの?


「もしもの時のために、生命維持装置を付けるか?」


そうだ。付けてくれ!


「………。」


時間があれば、いずれ気付いてくれるだろう。

意識があることが分かれば、治療法はある筈だ。


「………。」

「……いいえ。」


!!!


「延命は要りません。治らないなら、早く楽にしてあげて下さい。」


「分かりました。ご家族の意思を尊重し、最期まで対症療法のみにしましょう。」


何で気付かねえんだよ!患者の意識の判断もできねえのかこの藪医者が!!


「さようなら、あなた。」


おおい!気付いてくれ!俺は死にたくない!!

誰かあああああああああ!!!


息苦しさと共に、次第に意識が遠のいていく。


待ってくれ!俺はまだお前に伝えたいことが…!


その声が届くことは無かった。

俺が最期に見たのは、顔を伏せて泣き叫ぶ妻と…

無表情でモニターを見つめる医療スタッフたちであった。

「閉じ込め症候群」は、意識が清明でありながら体を全く動かせなくなる病気。

脳幹という部分で血管の詰まり、神経の通り道が壊れることで起こる脳梗塞の一種です。


運動神経全般が駄目になり、手足や指、首、口などが一切動かなくなります。

しかし脳と感覚は正常で、意識や視聴覚、痛覚などは正常通りのことが多いです。

睡眠サイクルも通常通り行われます。



意識があるものの、それを伝えることが困難なことから、かつては植物状態と誤診されることも多くありました。

脳波は大体正常だから、それで診断が可能です。

また、瞼を動かせるから瞬きによる意思疎通が可能です。

重症度にもよりますが、適切な治療を行えば日常生活が送れるほどに回復する可能性があることも分かっています。

また患者は鬱を発症しやすいから、精神的ケアも重要になります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] お久しぶりナス! 意識があるにも関わらず四肢が動かせない状況を想像するだけでも恐ろしいですよね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ