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老勇者ウォーデン・ラース  作者: ぷにぷにぺぽりん
3/9

飯事情

そういや書いてないな、と思い立ってつらつらと書いて投稿。久しぶりなので若干のリハビリも兼ねて短い(言い訳)。飯の描写を頑張りたい。



「………ぅ、ぐ、ぅむう……お?」


身体中が痛む。空が赤い。喉が渇いた。腹が減った。


「ぬ、ふぐぅ、ぃよいせ…。此処は……。」


……そうか。魔王を倒したんだったのぅ…。

遂に、遂に。長年の目標、人類の夢。成し遂げる事が出来たか…。五体満足で生きているのが不思議なくらいじゃ…。


一体どれほどの時間寝ておったのだろうか。空を見上げても、雲一つ無くなった空を染めるのが夕焼けなのか朝焼けなのかも判断がつかぬ。


辺りを見回しても魔王の姿は見えない。死体も残さず消えてしまったのだろうか。魔王を倒す前と今とで、何か変わった様には見えず、相も変わらず瓦礫の山だが、空は晴れて鬱屈とした重苦しい墓場の如き空気は解消された様だった。


魔王亡き今、魔王の支配圏にも生物が進出してくる様になれば良いが、まぁ自然の有り様は吾輩の与り知らぬ所。元は豊かな土地だと聞き及んでおるから、時間をかければ緑映える場所となろうなぁと予測を立てる事しか出来ぬ。


とりあえずこの萎びた身体を労わるべく、数日はこのまま滞在する他あるまい。しかし、魔王戦の前に最後の晩餐もかくや、と言わんばかりに食料を贅沢に食い散らかしたのが痛い。


どれ、と重い身体を引き摺り起こし、そこらに投げ捨てた鞄の元へよろめきながら歩く。

ふむ。残っておるのは乾飯と水、僅かばかりの干し肉に木の実が数種、後は実用一辺倒で味が度外視されたポーション数本にその材料の薬草各種、か。

魔王を討滅せしめた英雄の飯がこれとはなんとも情けない限りであるが、まぁ仕方あるまい。ここ数十年は道すがらに立ち寄れる人里等無かったし、割りかし自暴自棄にすらなっていた魔王戦前の自分がこれだけの食料を残していた事さえ幸運に等しい。

まぁ食べきれなかっただけではあるがな。

最近は歳を経ったせいか食は細くなり、塩も脂も中々受け付けなくなってきおった。何もせずとも節々は痛むし、昔の事も朧げだ。


火を熾す気力も無く、瓦礫に身を寄りかからせながらもそもそと干し肉を()む。塩気が強いので、一緒に乾飯も口に放り込むと、出立する前に故郷ジャルハンの王都で食うた甘味を思い出した。

真冬の雪の様に軽く、冷たく、舌に乗せるとふわりと溶ける。貴族向けのだだ甘い菓子と違って、甘さは控えめだが、後味に残る香草の匂いが印象深かった。

そして何よりも、吾輩の目の前でその甘味を嬉しそうに頬張っていた食いしん坊の女を思い出していた。


ガリガリと口内にて乾飯を噛み砕き、干し肉の塩気と共に水で押し流す。薬草を生のままにもしゃもしゃと頬張ると、それもまた水で押し流す。水ではどうにもならぬ薬草の苦味と青臭さを解消すべく、木の実を数個放り込み口直し。


「……はぁ…不味いのぅ…。乾飯は硬いし味気ない。干し肉は塩気が強くて口の中がパサパサじゃ。薬草は言うまでもないし、木の実も酸っぱい。はぁ….美味い飯が恋しいわい…。」



王都の甘味を思い起こし、なんと落差のある飯だろうとうんざりしながらこれから帰る故郷を偲んでいた。天寿を全うしたであろう妻を偲んでいた。


「一息はつけたが…やはり足りぬなぁ。数日はここで、と思っておったが、身体を推してどうにか魔王の支配圏の外まで、魔の森まで行かねば飢えて死んでしまいそうじゃ…。」


老いてもその身は勇者。普通の人とよりも隔絶した強さを持つ者。力も、頑強さも、速さも、武芸も全てが一級品。例え帰る途中に悪鬼羅刹蠢く魔の森が横たわっていようとも、さしたる問題はない。


もはや待つ人も居ないだろうが、それでもまぁとりあえずとばかりに老いた勇者は歩き出すだろう。

故郷に帰るのもそう遠くない未来の事である。

続く!


……かなぁ。

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