学生証
いつも通りの1人の登校、春休み明けだってのに大雨で湿気が酷い、なんて学校に行きたくない天気なんだ、こんな日ぐらい学校なんてなくてもいいじゃないか。警報が自分の地域に出ていないことをニュースで確認し僕は学校に足を進めた。
「一人ひとりに確かにある、だが、他人からでないと見えない。そいつを見るために長年苦労したが気付いたら、俺は、他人になっていた。」
角を曲がったらすぐ校門、というところで僕はまさに昨日隣町の図書館で調べた新品の厨二病ワードを口にする、あぁ、また無意識に口から出ちゃった。。あくまでキャラとしての厨二病だが、自分自身にまで浸透してきているな。そう頭の中で後悔していたときだった。
「中世悪魔教典!。。」
後ろから、思わず口から出たかのような声が聞こえた。
口から心臓が飛び出るかと思った。え、俺だよな。俺の今の一言に対して言ったんだよな、
同世代の人と話さない期間があまりにも長すぎたせいで話の返し方がわからない。とりあえず無視は悪いと思い、振り返ると、そこには少し僕より背の低い女子が立ち、恥ずかしそうに下を見つめていた、下を見つめる理由は恐らく僕を振り返らせたあの一言のことだ。僕に話しかけたこともそうだが、恐らく新入生だろう。
「あ、あ、」
とっさに言葉が出てこず、うめき声のような声を吐いてしまった。
「あのー、大丈夫、ですか?」
うめく僕の事を不思議がるように彼女は問いかけた。
「あ、はいぃぃい!」
最悪だ、声が裏返った。
クスッと女子は下を向いたまま笑い、右手に持っている学生証を僕に差し出して言った。
「学生証落としましたよ?上村先輩。」
「あ、あ、りが、とう。」
コミュ障丸出しの返事で僕は答えた。そして女子は僕に学生証を渡して足早に角を曲がり校門へと走った。
「学生証、、」
落としてたのか、しかし悪い事したな。お礼の1つでも言えばよかった。そして、学生証を覗いた。
その学生証にはさっきの女子の顔写真とともに
「1ーB 小野奏」
と書かれていた。