目を覚ました不運な転入生その1。
「28…27…」
低い声で減っていく数字。
カウントダウンで隣人のカップルが叫び声を上げる。
《あれ、数えてる数字のタイミング…わざとなのか??》
雪煉は気づいた。低い声のカウントダウンは時計の秒針より遅いタイミングで数えられている。
だが、人間は緊張すると冷静な判断がとれなくなるのだ。
この学園には人間以外の種族がいるが、冷静さの欠如が起こるかは分からない。
「残り15…14…」
「「し、失礼しましたぁぁぁ!!」」
バタバタ…慌ただしい音とアイサツが聞こえるとカウントダウンが止んで、低い声が再び漏らされる。
「まったく。自由な学園だからって我が城でおっぱじめるとは…呆れたもんだな」
隣からバサッ!と聞こえる。
低い声の人は使用されて汚れたシーツの取り換えを始めたようだ。
《よ、よかった…終わったみたいです…》
雪煉はハゥ…とため息をついて、詰めていた呼吸を解き放った。しかし、立てない状況は変わっていない。
雪煉は今度こそ、助けを求めることにした。
「あ、あの…」
「まったく、こういうの(後片付け)は得意じゃないんだよな~…」
「あのっ、すみませ…」
「あーあー!教員にも愛方制度を設けてくれりゃいいのにさ~!学長くんも変な奴だよな~」
助けを求める雪煉の声は隣の彼の独り言でかき消されてしまう。
雪煉は息を吸い込む。
「スゥ…)片付けとかお手伝いするので!立ち上がるのを手伝ってください!!」
「マジで?!」
「なっ…!聞こえてたんじゃないですか!!」
「いや、聞こえてなかった。てか、キミ。起きてたんだな」
「起きてます。それと、わかりやすい嘘をつくのやめてくださいよ…」
雪煉の提案の声にあっさり開かれたカーテン。
姿を見せたのは人懐こい笑顔で応える顔以外に包帯を巻き付けた男だった。
「なははっ~悪気はない。けしてな!」
「悪意が満ちあふれて聞こえるので、殴らせてください」
「いや~ソレは困るな!あ、そうそう。立てないんだったな、ほい」
明るく笑い飛ばされる雪煉の怒りを隣のベッドから身を乗り出す包帯ぐるぐるの彼が雪煉に手を差し伸べる。