目覚める不運な転入生その1。
《ここは…どこ?消毒液のにおい…保健室?》
「なんで、保健室なんかにっ!いあ゛っ…ッ~~~…」
疑問と驚きで身体を勢いで起こす。
だが、背中に痛みと皮膚のひきつれる感覚で悶絶しかけた。
諦めて、吸い込まれるようにベッドへと逆戻りする。
身体の向きを窓の方に向ける。
裏庭の木々と透き通るようなひたすら青い空が視界に入る。
「青いです、な…」
一言呟く。
それからはボー…と何も考えずに横向きに寝転がる。
―――――目を覚ましてから時間だけが過ぎ行く。
何やら室外が騒がしので、好奇心で起きることにした。
「何か、あったんでしょうか?」
さきほどの背中の痛みを学習したので、ゆっくり身体を起こして、ベッドから這い出る。
しかし。
自分の体にも関わらずカクン…と膝がおれて、視界が下がる。
何故か脚にうまく力が入らなくて、タイル張りの床に座り込む姿から立てない。
雪煉は自由の利かない脚に困惑した。
立てずにいると雪煉の居るベッドとは反対側のしきりカーテンが開く音がした。
雪煉は保健医の先生だと思って、助けを求めようとしゃべり出そうとする。
「あの、すみませ…」
「あん、そんなところは触っちゃダ~メ」
「じゃあ、どこならいいの?」
「ふふっ、こ・こ」
「オマエ、エロいなー」
だが、隣のベッド側からは男女の声が聞こえたのだ。
雪煉は自主的に口元を手で押さえて、声を抑える。しかし、それが逆効果で隣の情事の方に意識が駆り立てられた。
始まる隣人のイヤラシイ性事情の一幕。
雪煉は《どうしよ、どうすれば…》とグルグル困惑するしかない。
すると、扉が開く音がした。低い声が室内に響く。
「どこの~だーれーだぁ~?我が城(保健室)をホテル代わりにしているアホは!」
「お、おいっ!早く着ろ!」
「や、やんっ乱暴しないでよぉ~」
雪煉は自分ではないのに益々声を抑えて、身を縮ませる。
慌ただしくなる隣のカップル。そのカップルを急かさせるようなことを言う。
「あと30秒以内に出て行かない奴は学年と名前を掲示板に公開する。」
「はい、30…29…」