助けられる不運な転入生その1。
「大丈夫かい?編入生。いや、園求5年」
変わった呼び方で声を掛けられ、微笑みを投げられる。
その声音は人の心を落ち着かせることの出来る性質でもあるのか、激しかった心臓の動きが落ち着いていく。
そんな性質は故郷に置いて来た一族の者以外は初めてで…
雪煉は唖然としてしまう。
「おーい、もしもしー?園求5年~?」
その人は雪煉の目の辺りを手を振ることで意識を確認する。
「あ、はいっ!大丈夫です、大丈夫です!」
「そうか。ソレは良かった」
落ち着いた口調で、太陽ような明るい笑みが返ってきた。
緊張が解けて、雪煉の頬も緩んでしまう。
「大丈夫ですが…どうして、僕の名前をしっているんですか?」
雪煉の質問に彼は微笑んでくる。
何気なく、視線を上げたときに雪煉は見てしまう。会話している自分たちの後ろでサバイバルナイフを持ったままの執行生の女子が起き上がるのを……
「そんなの私が生徒か…」
「あ、危ないッ!!」
言葉遮り、助けてくれた彼を押し退ける。咄嗟の判断だった。
執行生の女子が振り上げた無言の斬撃。
「いッ、あ゛ぁぁぁぁぁッ!!!!」
今回こそ。背中の肉が裂ける感覚が這う。そして、心臓が大きく跳ねれば絶叫を吐き出す。
雪煉はアスファルトの地面へと倒れ込んで、ピクリとも動かない。
「園求5年!な、何てことしたんだ!」
雪煉は初対面の人を庇った。
庇われたマントの優男は目を疑う。
雪煉を案じる言葉を叫ぶが、優男は暴走の止まらない執行生の女子の抗戦することになった。
荒くなる呼吸。
痛みなんてもは徐々に薄まり、背中と膝から血が溢れていく感覚にのまれながらも…
雪煉の視界は闇へと落ちてしまう。