巻き込まれる不運な転入生その1。参
声にならず絶句する雪煉。
彼を他所に3人は戦闘を始めている。
鳩頭たちの相手が女子にも関わらずに容赦ない蹴りや暴行を加えている。
まさしく始まる前の発言の通りだ。
A「オラオラおらぁ!!」
B「右からも失礼すんよ!」
そもそも何故に戦闘を始めたのかが理解不能だ。
「きゃはっ!攻撃が、温いんですのよ!!」
執行生の女子もやられるばかりではなくサバイバルナイフで抗戦しているのだが、明らかに愉しんでいるようだ。何せ、瞳孔が開ききっているのが観戦側からでもわかる。
雪煉はこの隙に逃げるなりすればいいのに何もしていない。
いや、出来ないと言うのが本音だろう。
何せ、雪煉の瞳にはあり得ないモノがミエテイタ。
視線の先は執行生の女子。
彼女は興奮状態で瞳孔が開いているのはわかる。が、問題はソコではない。
雪煉が視線で捕らえているのは彼女の前頭のところだ。
《あ、れは……角…?鬼の角??》
そう、彼女の頭部から禍々しいまでの黒いオーラを纏った鋭い角が生えている【ように】ミエタ。
雪煉は錯覚だと思い目をこすった。
しかし、ソレは霞むことなく視界に写り続けた。
雪煉は後ずさりしてしまう。
《嘘だ、信じられません…!》
いくら人外含んだ種族お構いナシの学園でも。
古典や古事記で日本の代表的な悪役であり土地神とされる種族の【鬼】が目と鼻の先にいるのだ。
動けなくても逃げたくなるのは性と言えるだろう。
そんなこんな逃げれぬまま、鳩頭たちが植木へとサバイバルナイフで斬られ、打ち捨てられる。
彼女の白いブレザーに付着したシミは血だろう。
だが、酸素に触れたからか。酸化して赤黒い色に変色している。
「アハハハハハハ!!あーっさり、終わっちゃうんだからぁ♪」
執行生の女子は頬についた血を手の甲で拭って、舐めあげた。
雪煉は身震いをした。ココまで殺意を満させた高笑いとネコナデ声は聞いたことがなかった。
くるりと執行生の女子が雪煉の方を向いた。
そして、向けられる微笑み。
「HEY、編入生くんはどんな表情を魅せてくれのですカ?」
走り出した。