第一章・ようこそ、朧夜学園へ~転入生その1の場合~
東洋の薄桃色の花をつける幹。和名・桜が風とともに街を舞い踊る。
そんな街の石畳の通りをたどり着くのは……
朧夜学園。
一度は荒廃した広大な土地を初代の学園長たる者が金と名声で集めた人材力で復活させ。
人間と人外が共存と繁栄を目的に建設された学園がある。
そんな混沌の上に存在する学園にも春がやって来た。大きめのキャリーバックを支えながら紺色の学ランを着た男…にしては美麗に分類される者が1人。
高い石壁に囲まれた鉄門(正門)の前で驚いた表情で立ち止まっている。
第1話・ようこそ、朧夜学園へ。――転入生その1の場合――
その男子は圧倒されるようにつぶやいた。
「ここが、朧夜学園…?」
門の中から見える校舎らしき一つの城のような建物に困惑する。
一気に不安になった男子は場所が間違っていないか、手持ちの案内状と学園名の記されている看板を見比べた。正しいことを確認して、大きく相づちをつく。
「やったっ…!着いた!」
両手を挙げて、歓喜の声を上げた。すると、突然、固く閉じられていた正門が自ら開いたのだ。
「えっ…なに!何なんですか?!」
ビビりな質なのか男子は逃げ腰になった。そして、インターホンらしき機器から自動音声が流れた。
『声紋認証完了。編入生、園求雪煉5年ト識別。入校ヲ許可シマス』
「あ、ありがとうございます!」
機械音相手に礼を言う男子。この男子が本作の主人公で名を園求雪煉だ。
雪煉は開いた門へと入り。
ついに学園の敷地へと足を踏み入れたのだった。
彼が転入してきたことによって、イロイロなことが巻き起こるとは…
知る由もない。