困惑させられる転入生その1。
自称魔法使いを名乗る保健医の葛葉はひたすら笑っている。
雪煉はおされ気味で苦笑する。
「よし、某が名乗ったから!今度はキミの名前を教えてくれるかな~」
「えっと…僕は園求です。園求雪煉で、クラスはわかんないです」
「ふむふむ、雪煉ちゃんね~」
「ちゃ、ちゃん?!」
まさかのちゃん付けをされ雪煉は目を見開いて、驚いた。
葛葉にしたら普段通りのようで驚いている雪煉が不思議に見えるみたいだ。
「あんれ~?某、なんか変なこと言ったかな~」
「い、いえ…何でもないです…《先生は初っ端から変です!!》」
またもや、雪煉は誤魔化すように苦笑した。
そんな相反する表情の2人。
葛葉は特に気に留めずに笑えば、思い出したように手を叩いた。
「あ、そうだった~雪煉ちゃん」
「はい?なんですか、薬木先生」
「キミ、3日は寝たきりだったんだよね」
「えっ…」
「だから~3日間。怪我してから眠ってたんだよ~」
ゆるい口調で葛葉が自分の背中をさして、斬るジェスチャーをしながら爆弾発言をサラッと言いのけた。
雪煉は驚いた表情で固まった。
葛葉は指折りしながら寝込んでいる間の雪煉の状態を挙げて言った。
「激痛によるうなされ、嘔吐、発熱…他にもあったけど今は元気そうで何よりだね~」
「み、3日も……経っているんですか……?」
「うん。学長くんが蒼白しながら雪煉ちゃんを抱きかかえながら~ココに駆け込んできたのは3日前のこんな時間だったかな~」
葛葉は雪煉の質問に答えているんだろう。
だが、雪煉は返される言葉から受ける衝撃が凄まじいようで困惑している。
葛葉が壁時計を指さす。
時刻は14時半過ぎ、だ。
《なんてことだ…!この学園の規律とかは全くわかんないけど!》
《転入早々に3日間も無断欠席って!僕、やばいじゃん!!》
「お~い、雪煉ちゃーん?もっしもーし?…ダメだこりゃ」
自分の世界で考え込んでいる雪煉が話を聞いてないので、葛葉は呆れたように笑う。
無言で頭を掻きむしって顔を焦らす雪煉。
「百面相してるな~雪煉ちゃんって…面白い子だな…(ボソッ」
含み笑いしながら秘かに楽しむ葛葉だった。