目を覚ました不運な転入生その1。弐
明るい笑顔で受け流される雪煉の怒り、隣から身を乗り出す包帯ぐるぐるの彼が雪煉に手を差し伸べているので、何ら意識せずに手を握る。
指先にさへも綺麗に包帯が巻き付けてあるのが見て取れた。
「あ、ありがとうござ、うわっ!?」
ぐいっと強い力ともに引き上げられて、視界がたかくなった。
「おー軽いなぁ~キミ、ちゃんと食べてる?」
「ちょ、ちょっと…!降ろしてくださいっ!」
突然、抱き上げられて包帯男に抵抗の意を見せる雪煉。
ジタジタと相手の腕の中で身動きをとる。だが、平然と言うより無意識なのか包帯男は雪煉が落ちないように腕の力を強めた。
「えー高いところキライか?某は大好きだよ~!」
「き、嫌いではないですけど!そんな軽々しく持ち上げないでくださいよっ!《力、強いっ…》」
「だって~軽いのは軽いんだもん~」
「大の男性が もん とか言わないでくださいっ!」
「キミは厳しいなァ~。わかったよ、降ろすよ」
雪煉はベッドに降ろされる。突然のことで高鳴った心臓を深呼吸で落ち着かせようとする。
抱き上げられたのだ。仮にも172cmで体重だって60kgはある雪煉を軽々と抱き上げてみせた…一人称も【某】などと変わったのを使う包帯男。
雪煉は疑心するように訊ねる。
「あ、あの。質問してもいいですか?」
「なんだ?応えられることなら答えよう」
また明るい笑顔を返される。
「貴方はココの関係者ですよね。僕はなぜ、保健室にいるんでしょう…あと、貴方の名前を教えて下さると覚えることができますし、お願いします」
「うむうむ。質問はそれだけかい? 」
「ひとまずはそれだけです…」
他にも訪ねたいことはあるが今のところは2つだけ。なるべくシンプルな質問を選んだ。
包帯男は頷く。
「イイよ。答えてあげるよ」
「お願いします…」
包帯男はベッドの端に腰かけた。
「まず、某は葛葉。薬木葛葉でーす。自称魔法使いの第4保健室の担当医~」
「ま、魔法使い?? 」
「あー信じてないでしょー!居るんだよねぇ。『非科学的だ! 』とか言う堅い奴。だから、自称魔法使いって名乗ってんのよ~まあ、本当に使えるけど使わなーい」
《ヤバイ…この先生、変な人だ!!》
ヘラァ…とユルい雰囲気で自己紹介が始まり。妙な爆弾発言をする包帯男こと葛葉に雪煉は翻弄され、理解不能に陥ったのだ。しかも、雪煉の中で変な人ランキングに堂々ランクイン。
恐るべし…自称魔法使い…