19才 ①
公園のお兄さんの13年後の話。主人公の私はいろいろとすれてしまいました。
3月が終わろうとする日。私にとって新たな戦いの準備が本格的に始まる前日。その前から戦いの準備を始めているものはいる。そういえばさあ、と間延びした声。
「荒井さんの初恋はいつだった?」
と、隣の席の彼女がきいてきた。
「初恋かー、あったかなー」
「あるー?」
「うーん、ないかも」
「ないかー」
「ないわー」
かりかりと、問題をときながら、てきとうにこたえる。できるだけ背筋を伸ばし、左手でシャーペンを持ち、問題分を読む。目線は問題で話す態度ではないのに彼女は気にすることなく、同じように目線を問題に戻していった。
初恋は小学校一年生のとき。公園のベンチに座っていたニートで、鳥がものすごく好きな鳥オタク。前髪を斜めにながし、片目を隠して、マントなんて羽織って中二病かっての。
話しかけても、「ああ」「そうか」だし。基本は無口で無表情だし、鳥の前だと顔をにやけさせてばかりの変な奴だった。おまけに嘘つき。
どうして、こんなやつを好きになってしまったんだろうって、頭を抱えたら、顔はものすっごくイケメンで腹が立つことを思い出した。今となっては覚えてないけど。
ふぁっく。私にとっての黒歴史だ。
それから13年。あのころの私はどこへ行ったのか……。高校を卒業後、大学受験を失敗した私は、浪人することにした。受験勉強に集中するために、実家を出てアパートに一人暮らし。毎日は家と予備校の往復。まだ慣れていないこの生活は大変だ。