序
『――親愛なるお姉さまへ
こうして手紙を書くのは久しぶりです。
少しは読める字になっているでしょうか?
随分と間が開いてしまったので、お姉さまに無用な心配を掛けてしまったかもしれませんが、わたしはとっても元気いっぱいで、健康に日々を過ごしています。
終戦から間もないみんなが多忙な時期に、旅に出たいという我がままを口にしたわたしを快く送り出してくれた事には感謝の言葉しかありません。
早速ですが、わたしのこれまでの足取りをお知らせしておきたいと思います。
お姉さまがすっっっっっっっごく心配していたように、世間知らずなわたしの一人旅は最初の一歩目から躓いてしまいました。それはもう盛大に。始まる前に終わってしまいそうな勢いで。
入念な準備をしていたつもりだったのですが、あっさりと六日目くらいで行き倒れてしまったのです。
一人旅を甘く見ていました。ごめんなさいと言わせてください。ごめんなさい。
書物を読んだ程度でわかったつもりになるのは危険なのだと痛感しました。
幸いなことに、たまたま近くを通りがかったサドちゃんとアッくんの二人が助けてくれたので、九死に一生を得ました。
お二人はあまりにも危うい様子のわたしを心配し、何かと世話を焼いてくれました。必要最低限の知識も教えてくれて、いざという時の護身術まで伝授してくれるほどに親身になってくれました。そのおかげで最近は野宿もへっちゃらです。立ったまま眠れるという特技も覚えました。えっへん♪
半年ほど一緒に旅をしてくれたのですが、ある日を境に一時のお別れをして久しいです。
また逢えるといいなと思っています。
さて、最近の話で真っ先にお伝えしておきたいのは――
わたしは『渡り鳥』としてデビューをしました♪
新たに出逢った三人の同業者とお友達になり、行動を共にしています。
他にもたくさんお友達になった人たちがいて、賑やかな日々を過ごしています。
お姉さまもお元気でいてくれる事を祈りつつ、今回はここで筆を置きます。
――レイチェルより重たいくらいの愛を込めて』
「………それで、あなたは今何処にいるのよ?」
いろいろと説明不足の多い丸っこい文字で書かれた手紙を読んだ後の『お姉さま』の第一声はそれだったらしい。
気軽に読めるドタバタストーリーを目指してみました。
よろしければ、ご一読ください。
ご意見・ご感想を頂けると嬉しいです。