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EATER―異能者達の宴―  作者: ケロっち
とある女子高生の日常
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衣恵part1. 隠し事と親友と大体赤石屋


段々と遠ざかる親友の背中を、私は笑顔で見送る。

しかし、内心は口には出来ない程の不快感で満ちていた。

勿論、カモと過ごした時間が不快であった訳じゃない。

むしろ、私にとっては癒しの時間であった。

が、だからこそ、その時間にまるで水を挿すように感じる気配が許せなかった。

私は目をつぶり、不快感の原因に向けて話しかける。


「オイ、いい加減出てきた方が身のためだぞ。 朝からこそこそと…何か私に用か?」

「……」


気配は感じるものの、返事は無い。

時間さえあればもう少し待っていてもいいが、生憎、機嫌が悪い。

軽くその場でステップを踏み、勢い良く虚空へ向けて、回し蹴りを繰り出す。

本来なら何の感触も無いはずだが、かすかに何かを掠めたかのような感覚があった。


「チッ、上手く避けやがったか。 まあいい、次は、本気で当てるぞ」


ステップを踏み、先ほどと同じ様に蹴りを繰り出そうとした瞬間、先ほど蹴った虚空に不意に弱気そうな男性の顔が姿を現す。

そして、次に右手、左手、上半身…といった順番で段々と現れ、最後にはちょっと身長高めの男が現れた。

よくよく見れば、そこそこ見慣れた顔だった。

確か、明石屋とかいう男だ。

赤石屋は現れるなり、両手を前に突き出し、慌てて捲し立てた。


「いやいやいや、そんな怖い顔なさらないで下さい! 覚えてますか? 覚えてますよね! 皆大好き、電報の赤石屋です! 私、決してつけていた訳ではないんですよ! ただ、ちょっと用件が二つ程ありまして、それの関係で偶然つけるような形になってしまっただけでして…あ、本当ですよ!? 嘘だと思うなら問い合わせていただいてもかまわないです! 私、何も調べられて困るようなことは…していないといえば誤りになりますが、しているというと、全然ちがいますので!」


いつも思うが、この男、もう少し要点を絞って話せないものか。

だが、どうやら纏めるとこういう話らしい。


1、 つけていた訳ではなく伝えたいことがあった。

2、 それは全部で二件である。

3、 その内容は、どうやら朝から今まで隠れてついてくる程のものらしい

以上


たった三行(しかも箇条書き)で済んでしまうような内容にどれだけ時間がかかっているのだろうか。

私は、頭が多少痛くなるのを感じながら、仕方なく足を納める。


「で、なんの用なの?」

「あ、はい、実をいいますと…」


ハンカチをポケットから出し、顔を拭きながら赤石屋は説明を始めた。

至極長い話なので、省略すると


1、イーターが最近このあたりに現れているらしい。

2、そいつは、体中が紐で縫い付けられた姿をしており、人間の生気を吸うらしい。

3、とても厄介なので、退治して欲しい

以上


普通の人なら、気が狂っているのでは?と疑いたくなるような内容だが、別段私は驚いたりはしない。

というのも、私はイーターという存在を知っているし、むしろ良く見知っている方なのだ。

元々、私は学生とはいえ普通ではない。

イーターと呼ばれる異形の存在と闘い、排除する者なのだ。

場所や人により呼び方は代わるものの、世界の裏側ではエクソシストとか呼ばれる。

まあ、要するに魔物を倒す戦闘専門シスターといった感じ。

語弊はあるけど、一般的にはそんなイメージでいいと思う。

だから、赤石屋が現れるときも驚かなかったりしたのだけれど、ともかく、これで一つ目の赤石屋の用件が分かった。

残るは、あと一つ。


「で、もう一つの用件は?」

「ああ、それなんですが、どうもそのイーターが、さっき貴方といた少女を狙っているみたいでして。 その護衛です」

「へぇ、あんたが護衛ねぇ。 立派じゃない。 普段戦闘しないのに」

「あはは。 私だって、少しは心得ありますよ」

「ん? でも待って。 じゃあ、今あんたここにいるとまずいんじゃない?」


一気に、背筋が寒くなる。

カモは、なんの変哲もない民間人だ。

でも、だからこそ、影からとはいえ、護衛がないと危ない。

勿論、普段は私と帰っているから安心だけど、今は…?

しかし、私の不安をよそに赤石屋は笑いつつ答えた。


「ああ、大丈夫ですよ。 今、代わりの人頼みましたから」

「代わりがいるなら安心ね」

「ええ、安心です」

「……ねぇ、今頼んだんならすぐには来ないんじゃないの?」

「……」

「……」

「…きっと大丈夫です!」

「てめぇ! 次会ったらぜってぇコロすからなぁ!」


悪態を吐きながら、私は走り出していた。

何で気づかなかったのだろうと、自責の念が絶えない。

だが、今はそれどころじゃない!

親友の命が危ないのだ。

間に合う間に合わないじゃない。間に合わせるんだ!

そう、自分に言い聞かせて、私は走る速度を上げた。

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